【番記者の視点】リンセンが“どフリー”ヘッド弾 「完璧だった」セットプレーが逆転V狙う浦和の武器

【浦和担当・星野 浩司】 J1リーグは15日、約2週間ぶりに再開する。5位の浦和はホームで京都と対戦。今季も残り8戦となり、2006年以来の優勝にむけて絶対に負けられない試合が続く。10日のルヴァン杯準々決勝・G大阪戦は3―0で勝利し、4強に進出。CKから鮮やかすぎる先制ゴールを奪っており、多彩なセットプレー攻撃が今後の武器になりそうだ。

記者席で見ていて、ビックリするくらい“どフリー”だった。開始8分。MF岩尾憲の右CKからFWブライアン・リンセンが豪快なヘディングシュートをゴール右上に突き刺し、先制点を決めた。オランダ人助っ人は「憲からパーフェクトなボールがきた。うれしい」とニヤリ。この日、両チームを通じて最初のセットプレーを一発で仕留めた。

G大阪の守備陣は誰一人、リンセンのマークにつけなかった。長身のDFホイブラーテン岩波拓也がゴール前に立ちはだかる相手の長身選手を体を当ててブロック。DF明本考浩がニアサイドでつぶれ、MF関根貴大はファーサイドで相手の注意を引く―。ペナルティーエリア内にいた7人が同じ“絵”を描いて相手をかく乱させ、後方から走り込んだリンセンの「フリー」を生んだ。

ホイブラーテン「僕と拓也が相手2人をブロックし、ターゲットのブライアンがタイミングよくゴールできた。狙い通りだよ」

安居「自分はこぼれ球の位置からファーサイドに行きながら相手の食野選手をつって、気にさせる動きをした。狙い通りのパフォーマンスができた」

明本「ペナルティースポット付近が空くと、スカウティングの分析であった。それを全員が共有して、僕がニアにつぶれたり、1人1人がブロックの役割をした。完璧なゴールだった」

バリエーションは多彩だ。同26分、ペナルティーエリア左角付近のFK。キッカーの左利きDF荻原拓也は中央へパスをつなぎ、岩尾の浮き球パスからゴール前左で岩波が折り返した。38分、左サイドのFKは再び岩尾が右足でGKとDFの間に低く鋭いボールを蹴り込んだ。

何種類ものセットプレー攻撃をデザインするのは、昨季から浦和に加わった前迫雅人コーチ。リカルド・ロドリゲス前監督と徳島、浦和で計5年間ともに指導にあたり、指揮官が変わってもセットプレーの組み立ての中心を担う。試合中にはCK、FK時にベンチからピッチ脇に飛び出し、大声で指示を送る姿が印象的だ。

スコルジャ監督は「サコほど細かいところまで一生懸命準備する人はいなかった」と称賛。その分析の特長について「まず相手の守備を細かく分析する。そして、セットプレーのあらゆる状況の中で相手がどういう反応をするのかを予測して準備している」と緻密な仕事ぶりをたたえた。

流れの中からいくら多くの決定機を迎えても、相手のブロックやGKのセーブにあえば得点は生まれない。だが、ボールが止まった状態からスタートするセットプレーは、繰り出す戦術次第で相手の守備の穴を突いての得点が期待できる。「セットプレーでの得点は試合の流れとは関係ないので、チームの武器として継続していけるといいと思う」と岩尾。リーグ、ルヴァン杯、ACLと異なる大会を過密日程でこなして疲労が蓄積する中、省エネで効率的に得点を得られるセットプレーは1つの大きな武器になる。

明本は言う。「チーム一体でできてる。いいアドバイス、相手の戦術を明確に伝えてくれるスタッフがいるから選手がプレーできてる」。今季はクラブW杯を含めて、最大で残り20試合。一撃必殺のセットプレー攻撃が、タイトル獲得のカギになりそうだ。

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