【番記者の視点】G大阪「やりたいようにやられた」4失点大敗の札幌戦 山本悠樹が語る屈辱からの“学び”
◆明治安田生命J1リーグ 第26節 札幌4―0G大阪(2日・札幌D)
【G大阪担当・金川誉】ここから何か起こるはず…。そう思いながら見つめた試合は、何も起こらぬまま90分とアディショナルタイム5分を終えた。4失点大敗。放ったシュートはわずか6本(札幌は19本)。司令塔のMF山本悠樹が「札幌さんのやりたいようにやられてしまった」と表現したように、今夏の好調時に見せてきたようなパフォーマンスの片りんは一切見せられなかった
この試合では札幌のマンツーマン守備をいかにはがすか、という点がポイントだった。しかし前半13分に失点。山本は「失点して流れが悪くなるにつれて、ボール保持者と何とかして(パスを)受けようとする姿勢だけになってしまった」と悔やんだように、相手と2対2、または1対1の状況が多くなり、デュエルの局面で後手を踏んだ。マンツーマンで食らいついてくる相手を、個人で「何とかしてやろう」という意識が強くなり、そこで上回ることができなかった印象があった。
「どこにスペースがあるのか」を常に意識するG大阪は、相手の守備によって狙い所を定めていく。たとえば相手ボランチが前に食いついてくれば中央にできるスペースを狙い、サイドバックが高い位置までプレスにくるならば、その裏を突くなど。しかしマンツーマンで守備をされると、そのずれがなかなか生まれない。ならば1対1で抜き去る、2対2の関係性で裏を取るなどの手もあるが、この日はそういった局面で札幌に軍配が挙がった。
ただ何もできずに敗れたこの試合から、学ぶことは数多くあるはず。山本は課題をはっきりととらえていた。「これだけマンツーマンでこられると(パスを)出すところがなくて苦しみました。でも普段から言っている通り、自分がボールを触れなくても、パスが(自身のラインを)越えた後に先に動き出してサポートに入るとか、そういうとこで先手を取れていくと、うまくいくのかなと。ダニ(ポヤトス監督)は3人目(の動き)とよく言いますけど、ポゼッションサッカーを志向していく上では、3人目ではがしていけないと、なかなか難しいので」。自身がパスを受けるだけではなく、ボールの動きを予測して3人目となる。さらにパスを出す1人目、受け手となる2人目の選手が、その先にある3人目の動きを意識してボールを動かす。それを集団として行えば試合を支配し、相手を押し込む展開に持ち込めたはず、と説いた。
試合後、10試合ぶりの勝利を挙げた札幌・ペトロビッチ監督は饒舌(じょうぜつ)だった。6年にわたって積み上げてきたスタイルのもとでつかんだ久々の勝利に「札幌は素晴らしい戦いができるチームであり、そうしたサッカーを見られるのは札幌サポーターの特権だろう。もちろん、サッカーの好みは人それぞれであるが、厳しい中で乗り越えたことはうれしく思う」とうなずいていた。
今季のG大阪はFWジェバリ、MFラビら能力の高い外国人選手が加入し、個人能力で局面を打開するシーンも増えた。しかしチームが目指すべき理想は、それだけではない。残留争いからは抜けだした今は、来季以降にもつながるスタイルの構築に注力できる時期でもある。どんなサッカーを目指していくのか。どんなサッカーで、G大阪サポーターたちに“特権”を与えていくのか。その再確認のきっかけとして、この大敗を生かしていくしかない。