[名良橋晃]移籍でどうなる? J後半戦で注目したい8名をピックアップ
1年で関東1部からJ1へ 新潟に加入した長倉は苦労人
いま、サッカー界では国内外で移籍が活発に行われています。Jリーグの移籍期限は8月18日で、この日まで動きがあると考えられます。今回はJリーグの移籍のなかから、私がオッと思った8名を紹介します。
柴山昌也は大宮から完全移籍でC大阪に加入しました。大宮のアカデミー育ちで、高校生のころからひとり次元が違ってハイクオリティなプレイを見せていました。高三でJ2に出場し、すでに通用していた記憶があります。
いずれはより高いレベルで! と思っていましたが、チームがJ2で苦戦しているタイミングでの移籍になりました。難しい判断で、相当な覚悟を持って大阪へ行ったと思います。持ち味であるドリブル、積極的な仕掛けでJ1をかき回してほしいです。
中野伸哉は鳥栖のアカデミー出身で、やはり高校生のころから活躍していました。期限付き移籍で獲得したG大阪は、いい補強をしました。最終ラインのすべてのポジションをこなし、両足で精度の高いキックができる。ポリバレントな中野伸哉をダニエル・ポヤトス監督がどう生かすかとても楽しみです。
今シーズンは鳥栖でそんなに試合に出られていませんでした。個人的な予想ですが、本人はパリ五輪を見据えていると思います。G大阪はシーズン当初は苦しみましたが、どんどん順位を上げています。ここでポジションを獲得し、存在感を示すことがパリ五輪につながる。中野伸哉もまた、相当な覚悟で移籍したと考えられます。
群馬から新潟に完全移籍した長倉幹樹は、去年夏まで関東サッカーリーグ1部の東京ユナイテッドでプレイしていた苦労人です。その後、浦和ユース時代につながりのある大槻毅監督が率いる群馬に引き抜かれ、すぐにフィットして活躍していました。ライン間でボールを受けて、前に運ぶことができます。狭い局面でも打開できるので、トップ下でもハマると思います。松橋力蔵監督がどのポジションで起用するかわかりませんが、伊藤涼太郎が抜けた穴を埋めることを期待されています。日本のトップリーグでどれだけ通用するか、本人も楽しみにしていると思います。
久保藤次郎は右のワイドなポジションでプレイし、自分で仕掛けてゴールもできる能力があります。藤枝から完全移籍で名古屋に移り、ビッグクラブでどれだけ本来のプレイができるか楽しみです。名古屋は左サイドに森下龍矢がいます。右サイドに久保藤次郎が入ることでチームにどんな化学反応が起こるか注目しています。
大宮に高校生の逸材 市原はすでに守備の中心
J2残留を果たすべく大宮が補強したヤクブ・シュヴィルツォクは、すでにフィットしています。初先発となった第28節金沢戦でさっそくゴールし、存在感を示しました。チームにとって間違いなく必要だった補強で、第29節秋田戦にも勝利した大宮は今シーズン初の連勝を飾りました。
シュヴィルツォクは前線で起点になれるし、名古屋時代もそうでしたがゴールに対するどん欲さがあります。金沢戦で見せたようにFKという武器も持っています。ゴールを求められているなか、実際にゴールできる。J2の下位は団子で、まだまだわかりません。シュヴィルツォクのゴール数とともに大宮の勝点も増えていくことになるでしょう。
移籍ではありませんが、同じく大宮の市原吏音も紹介させてください。6月にトップチームに登録されたアカデミーの選手で、高校生です。しかし、この選手に関しては高校生という概念を捨てていいと思います。走攻守に優れたDFで、すでに3バックの中心となっています。声を出して戦えるタイプで、熱い気持ちがこちら側に伝わってきます。
私は市原吏音が高一のときから見てきましたが、世代別代表にも選ばれてきました。しっかりと成長し、高三となったいま大宮で普通にプレイしています。いずれ、日本代表にもなれる逸材だと感じています。
深津康太は13年間プレイした町田から、J3の岩手へ完全移籍しました。いろいろな思いがあったと思います。難しい決断だったと思います。J2の首位をキープする町田は、J1昇格となるかもしれません。このタイミングでの完全移籍からは、強い意志を感じます。「このままでは終われない」という気持ちを持っているのだと思います。岩手はかつて町田で監督を務めた秋田豊さんが社長を務めており、そうしたつながりもあったのでしょう。からんだことはないですが深津康太は私と同じ千葉県出身なので、まだまだやれるというところを見せてほしいです!
かつて日本代表でも活躍した川又堅碁は千葉を退団したあと無所属となっていましたが、今夏にJ3の沼津へ加入しました。タフに頑張れるタイプで、強烈な左足を持っています。沼津はゴンさん(中山雅史)が監督を務めているので、コミュニケーションを取ることでストライカーとして復調するかもしれません。このチームではいぶし銀の伊東輝悦もプレイしています。川又堅碁にもまだまだできるというところを見せてほしいです。若い選手たちを背中で引っ張ってほしいですね。
構成/飯塚 健司
電子マガジンtheWORLD(ザ・ワールド)284号、8月15日配信の記事より転載