北川信行の蹴球ノート 国外でプレーする選手、世界的に増加…日本も高い伸び率示す
今夏も多くのJリーガーが新天地を求めて海を渡っている。サッカーの本場、欧州でチャレンジするハードルはひと昔前と比べ、明らかに低くなっている。とくに、20代前半の選手が国内リーグで確固とした成績を残す前に海外移籍するケースが目立つように思う。これは、日本特有の現象なのだろうか。困ったときは、国際サッカー連盟(FIFA)が中心となって設立したサッカーの国際研究機関「CIES Football Observatory」のデータを調べてみることにしている。今回も興味深い調査結果が出てきた。
■日本はアジアトップの169人
今年5月に公表されたデータで、輸出選手(つまり母国以外のクラブでプレーする選手)の数が多い国や地域トップ100を調べたものだ(数字はすべて2023年5月1日現在)。最大の「輸出大国」は予想通りブラジルで、1289人が国外でプレー。次いで、②フランス1033人③アルゼンチン905人④イングランド535人⑤スペイン458人⑥コロンビア448人⑦ドイツ446人⑧クロアチア407人⑨ナイジェリア385人⑩セルビア380人-でトップ10を形成していた。かつては欧州屈指の輸出大国だったオランダは11位の346人、ポルトガルは12位の339人となっている。
日本は169人で全体の22位ながら、アジアサッカー連盟(AFC)傘下では最も多かった。ちなみに、オーストラリアが2番目に多く116人、韓国は3番目で74人。こういった点からも、日本人が積極的に海外に出ていくようになっていることがうかがえる。
北中米カリブ海連盟(CONCACAF)では米国の162人が最多となっている。
■23歳未満の若手は若干少なめ
この調査のユニークなところは、国外でプレーする選手を「23歳未満」「23歳以上26歳以下」「27歳以上30歳以下」「31歳以上」と年齢別に分け、その傾向も調べている点だ。たとえば、23歳未満だと、202人が国外でプレーするフランスが174人のブラジルを抑えて最多。ナイジェリア(153人)ガーナ(115人)コートジボワール(90人)なども上位に入っており、それらの国々の選手が若いうちから国外でプレーする道を選んでいる現状が浮き彫りになった。
また、31歳以上は317人のアルゼンチンがトップ。スペイン(136人)やウルグアイ(107人)が多かった半面、アフリカや北欧、米国などは極端に少なくなっていた。
日本は年齢別に分けると、23歳未満が28人、23歳以上26歳以下が70人、27歳以上30歳以下が41人、31歳以上が30人。23歳未満が他の国・地域と比べると少なめで、全体としても「ボリュームゾーン」である23歳以上26歳以下が突出して多かった。23歳未満は全体の31位、23歳以上26歳以下は19位。
■極めて高い増加率示した日本
また、この調査を世界の135リーグ、2200クラブを対象に深掘りした報告書によると、国外のクラブでプレーする選手の数は年々増加。2200クラブに所属する6万2610人のうち、1万4405人が外国籍の選手だった。1クラブ平均6・5人が外国籍選手になる計算で、2017年の5・4人から約20%も増えているという。ポジション、年齢別にみると、27歳以上30歳以下のFWの40%超が外国籍。また、国外でプレーする選手のポジションはMFが33・9%と最も多く、DFが29・9%、FWが29・1%、GKが7・1%だった。
国・地域別の輸出選手数の増加率では、2017年との比較でフランスが34・5%(265人)増加。コロンビアは48・8%(147人)増えていた。日本も極めて59・4%(63人)増と高い増加率を示した。ノルウェーやベネズエラなどの増加率も50%を超えている。多くの国・地域で国外でプレーする選手が増えていたが、セルビア(59人減)やルーマニア(39人減)、カメルーン(30人減)などは減少していた。
■国外でプレーする選手の増加傾向は続く
行き先の調査では、最大の輸出大国であるブラジルはポルトガルで213人がプレーし、2番目が日本の79人。アラブ首長国連邦が49人、韓国が44人で続いている。欧州5大リーグよりもアジアでプレーする選手が多くなっている。 一方、若手を中心に海外でプレーする選手が急増しているフランスは、ルクセンブルク(124人)イタリア(88人)イングランド(76人)など欧州中心。アルゼンチンはチリ(138人)スペイン(70人)ペルー(58人)などスペイン語圏を中心に輸出している。日本の選手はドイツ、ベルギー、シンガポール、ポルトガルなどを中心に39カ国・地域でプレーしている。
「CIES Football Observatory」では「国外でプレーするサッカー選手の数の増加傾向は、欧州内外で今後も数年間続く可能性がある」とした上で、「米国のメジャーリーグサッカー(MLS)の経済発展や、中国に代わってサウジアラビアの多大な投資が(移籍市場の)成長を牽引(けんいん)している」などと結論付けている。