【セルジオ越後が斬る】すべての大会で結果を残しているガンバには、サンフレッチェやレッズを上回るチーム力がある SOCCER DIGEST Web 11月26日(木)16時30分配信

4ゴールを奪った61分からの5分間は圧巻だった。

 2シーズン制が復活した今季のJ1は、サンフレッチェがセカンドステージを制すとともに、年間優勝も達成した。これでサンフレッチェは過去4シーズン中3シーズンで最も勝点を稼いだチームになったね。

この背景には、森保監督のチームマネジメントはもちろん、フロントの力も大きいと僕は思う。

サンフレッチェはここ数年、主力選手が次々と移籍したり、引き抜きに遭っている。ざっと名前を挙げると、李、森脇、西川、石原、高萩……。それ以前にも絶対的なレギュラーだった柏木や槙野が移籍したのに、的確な補強でその穴をカバーしている。

12年には塩谷を獲得し、14年には柏、林、柴崎を獲得。その柴崎と、今季獲得したドウグラスは、石原と高萩にまさるとも劣らない活躍を見せた。

森保監督が必要な選手をリクエストし、フロントがそれにしっかりと応えているのか、それともフロントがチームのスタイルを鑑みて、フィットする選手をピ ンポイントで獲得しているのか。実際のところは分からないけど、どちらにせよ、こうした的確な補強ができているのは、サンフレッチェとアントラーズの2 チームだけだと言っていい。

なかでもドウグラスは大ヒットだったね。まだチャンピオンシップが残っているけど、サンフレッチェが優勝したら、僕はドウグラスを今季のMVPに推したい。

サンフレッチェと同じぐらい、いや、ある意味でそれ以上に評価したいのはガンバだ。

ガンバは今季、ACLで準決勝まで勝ち上がり、ナビスコカップでも決勝に進出した。天皇杯でもまだ勝ち残っているし、ハリルホジッチ監督によって多くの 選手が日本代表に選出され、カップ戦をベストメンバーで戦えなかったり、疲弊したりしたなかで、J1でも逆転で3位の座を勝ち取り、チャンピオンシップに コマを進めた。

すべての大会で結果を残している点を見れば、サンフレッチェや2位のレッズを上回るチーム力がガンバにあると言える。

勝利が義務付けられた最終節、モンテディオ相手にたたみかけて、4ゴールを奪った61分からの5分間は圧巻だった。一度はJ2に降格したけれど、昨季の三冠獲得で“強いガンバ”を完全に取り戻したようだ。

FC東京のフロントはなにをしたいのか分からないね。

 そのガンバに逆転されて4位に転落したFC東京は、シーズンを通して手堅いサッカーに終始し、失点も少なかったけれど、得点も少なかった。それに、大事な試合で勝てないという点では、これまでと変わらなかったね。

FC東京で気になるのは、武藤の放出だ。なにがなんでも優勝したいなら、エースをシーズン中にヨーロッパに出すべきじゃない。シーズン終了まで待つべき だし、それでも夏に移籍させるなら、サンフレッチェのように、前もってその穴を埋められる選手に目をつけ、補強すべきだろう。

オーストラリア人とスペイン人のアタッカーを獲得したけど、Jリーグでのプレー経験のない選手をシーズン途中で獲得したところで、フィットするのは簡単じゃない。結局、彼らはベンチやベンチ外となり、シーズン終盤は日本人選手だけで戦うことになった。

振り返ってみれば、城福監督やポポヴィッチ監督時代にポゼッションを掲げたかと思えば、今度はフィッカデンティ監督を迎え、真逆の守備的なサッカーに取 り組んだ。それでも年間4位の成績は、クラブ史上最高タイ記録なのに、監督を交代させようとしているという話が伝わってくる。フロントがいったい、なにを したいのかよく分からないね。

盛り上げるには、分かりやすい構図にするのが鉄則だ。

 いずれにしても、これからポストシーズンが始まるわけだけど、僕の周りからはレギュレーションが分かりにくいという声が聞こえてくる。

チャンピオンシップでは、準決勝は年間順位の上位チームのホームゲーム1試合だけなのに、決勝はホーム&アウェーとなり、準決勝でも決勝でもタイスコアに終わった場合は延長戦へと突入する。

一方、J1昇格プレーオフでは、準決勝は年間順位の上位チームのホームゲーム1試合だけ、決勝は中立地での1試合だけ。タイスコアで終わっても延長戦はなく、年間順位の上位チームの勝利となる。

盛り上げるためには、分かりやすい構図にするのが鉄則なのに、これはちょっと複雑すぎる。サッカーの世界にどっぷり浸かった僕でも分かりにくいんだから、一般の人に分かるのかな?

しかも、チャンピオンシップが開催されることで、これまで盛り上がっていたJ1昇格プレーオフが霞んでしまったら、残念だ。

肝いりで始まるチャンピオンシップがどれだけ盛り上がるか、確認したいね。

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