【番記者の視点】2か月無敗のG大阪 食野亮太郎のゴラッソ生んだ“劇薬”と、ポヤトス監督抜てきの妙

明治安田生命J1リーグ 第21節 G大阪3―1柏(16日・パナスタ)

【G大阪担当・金川誉】試合の流れを、一気に引き寄せたゴラッソだった。1―1の後半1分。右サイドでボールを受けたG大阪FW食野(めしの)亮太郎は、ドリブルでボールを内側に運び、左足を思い切り振り抜いた。シュートは正確にゴール左上隅を射抜いた。感情を爆発させ、両膝で芝を滑って胸をたたくパフォーマンスで、スタジアム全体の熱量を上げた。

 まさに個の力でこじ開けたゴール。気持ちが強く、感情を表に出すプレーは、食野の魅力だ。一方、今季それが空回りしているように映る試合もあった。しかし途中出場して流れを変えた前節の京都戦、そしてこの試合では「俺がやってやる」という思いの強さが結果に結びついた。

 京都戦(7月8日)前、食野は観戦に訪れたユース時代からの同期・日本代表MF堂安律=フライブルク=に「丸くなったら終わりやからな。おまえのプレースタイル。あいつ最近、全然シュート打たへん、って聞いたぞ」とゲキを飛ばされていた。同期にかけられたこの言葉が、今季リーグ戦無得点だった食野にとって、強烈すぎるカンフル剤となったことは想像に難くない。

 食野にとって、堂安は常に追いかけてきた存在。かつては「僕の指標になっているのは律なんです」と語っていた。そんなライバルからのまっすぐな言葉をかみしめ、結果につなげた食野は「律に言われたことがすべてじゃないですか。自分のプレースタイルは足を振る(シュートを打つ)ことなんで。丸くなったら終わり。自分でも思い返していたし、それをもう一回、律が言ってくれたのでよかった」と感謝していた。

 しかしなぜ、ポヤトス監督は食野を先発起用したのか。前節勝利した京都戦では、同ポジションのFW福田湧矢が1ゴールと結果を出していたにも関わらず、だ。まさか堂安の“劇薬”が、食野に効いていたことを見抜いていたのか…。福田を先発から外し、食野を抜てきした理由を指揮官に問うと、柏の左サイドバックで、徳島時代に指導したDFジエゴの対策だったことを明かした。「どのようにしたらジエゴにダメージを与えられるか考えた。亮太郎は中に入ったほうが活躍する場面があるので、(柏の左MF)サヴィオとのいい関係性がなくなる、と思って指名しました」。攻撃力が武器のジエゴに、中央でのプレーが得意な食野をマークさせることで、サヴィオとの連係を分断することが狙いだった。

 一方で途中出場した福田も、得意のドリブル突破から決定機を演出。しかし後半ロスタイムに訪れたビッグチャンスを決めきれなかったこともあってか、試合後は悔しげな表情を浮かべていた。ポヤトス監督は、福田について「湧矢は外されたと思い、なかなか受け入れられないと思うのですが、そこは私が話をしました。G大阪が勝つために、亮太郎を選んだとしっかり伝えました。しかし湧矢には、後半(途中出場から)の活躍、しっかり試合に入ったことを感謝したい」とも話していた。

 チームは5月20日の横浜M戦で敗れて以降、7戦負けなし(6勝1分け)。一時は最下位に沈んだ低迷からは、完全に抜け出した。チーム戦術の浸透が進んだことに加え、食野と福田のように選手間のポジション争いが、好影響を生み出し始めている。今やJ1は固定のレギュラーだけで勝ち抜けるリーグではない。指揮官は調子や戦術、相手の特徴を見極め、戦えるチームをつくり上げようとしていることがうかがえる。残りのリーグ戦は13試合。13位からのさらなる浮上に向け、反攻態勢は整いつつある。

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