最下位のガンバ大阪 奮起促す“応援ボイコット”も「美談にならない」「絆が強固に」サポータから賛否の声〈dot.〉
スタンドで応援するサポーターたちに久々の笑顔が見られた。J1の最下位に低迷するガンバ大阪が5月28日のアルビレックス新潟戦で3-1と快勝。順位は変わらないが、4月9日の川崎フロンターレ戦以来となる8試合ぶりの今季2勝目を挙げた。
「ポゼッション重視のポヤトス監督が思い描くサッカーではなかったかもしれないが、今後の戦いに光が見えたと思います。試合内容は新潟の自滅に助けられた部分もあったが、倉田秋や石毛秀樹ら攻撃的なポジションの選手がハードワークでハイプレスを仕掛けることで、ショートカウンターから得点をもぎ取った。理想のサッカーを追求するのは重要ですが、勝利よりも優先するものはない。鹿島アントラーズも序盤に低迷していたが、ポゼッションにこだわらず強固な守備からカウンターで得点を奪うサッカーに方針転換したことで、上位に浮上している。ガンバはプライドをかなぐり捨てて、結果にこだわるサッカーをできるか。ここから真価が問われます」(スポーツ紙デスク)
昨年は9勝15敗10分で15位と低迷。J2チームとのプレーオフは回避できたが、かつての強豪クラブの面影が消えている。今年はJ2・徳島ヴォルティスからダニエル・ポヤトス監督を招聘。元日本代表の主将・宇佐美貴史、点取り屋の鈴木武蔵を中心に攻撃的サッカーを掲げたが、開幕から6戦未勝利と苦しい戦いが続いた。ボールを保持しても効果的な攻撃を繰り出せずにゴールが遠く、ビルドアップのミスで失点を積み重ねる。今季はJ1の最下位クラブのみがJ2に自動降格するシステムだが、4月9日に川崎フロンターレに2-0で初勝利を挙げた後も上昇気流に乗れない。5月14日の浦和レッズ戦に敗れて4連敗で最下位に転落。すると、ガンバを応援する「ガンバ大阪サポーター連合」(通称・連合)がある決断を下す。
5月20日の横浜F・マリノス戦の試合前。公式ツイッターで、「ここ数年の低迷および今シーズンのこれまでの結果/姿勢に対してクラブへの抗議の意を示す為、本日の試合は試合前から90分を通して応援をしないことを決定致しました。応援を楽しみに来場される皆様には大変申し訳ありませんが、ご理解ご協力をお願い致します」と呼びかけた。同戦ではスタンド最前列に座る連合のメンバーたちが試合を静観して見守ったが、この動きに同調しなかったサポーター集団から応援のチャントが流れる異様な雰囲気に。0-2で敗れた試合後に選手たちと連合の幹部が10分間以上話し合い、今後は全面的に応援することを約束。責任を背負い込んだ宇佐見が涙を流す姿が見られた。
Jリーグ創設以来、ガンバを応援しているという48歳の男性サポーターは「連合が熱い気持ちでガンバを応援してきた姿は知っているし、応援をボイコットするという決断もチームを愛するがゆえだったと思う。選手やクラブと話し合って気持ちをぶつけたことで絆が強固になったと思う」と理解を示す一方で、違った見方もある。
30代後半の男性サポーターは、「ガンバを応援するかどうかはサポーターの自由だし、ボイコットは強要されるものではない。しかも連合は応援しないのにスタンドの最前列に陣取って黙って見ているだけ。試合後に選手たちを叱咤激励してハイタッチした後にこれから応援すると言われても、他のサポーターが置いてきぼりを食らった感じがする。美談になりませんよ」と冷ややかだ。
連合は選手たちと話し合った内容を、翌21日にツイッターで公開。「このボイコットは諦めたわけでも見捨てたわけでもない。距離を縮める為の苦肉の策。俺達は人生かけてやってる。これをネガティブに捉えずにここを底やと思って一緒に這い上がろう」と選手たちに訴えたことを箇条書きで記した文面を掲載した。
さらに、ガンバのサポーターに向けてもメッセージを配信。「次の試合からまた熱く激しくチームへのサポートを行うつもりです」「【今後について】今回の行動によって混乱を生みご迷惑をおかけしたことをお詫びします。決してネガティブな意図を持ち行動したことは無く選手や監督スタッフとより強固な信頼関係築き一丸となりこの苦境を乗り越え未来の栄光に繋げる為に起こした行動であるということをご理解ください」と呼びかけた。
Jリーグを取材するスポーツ紙記者は、ガンバの応援ボイコット騒動についてこう語る。
「サポーター集団が応援をボイコットするというのは他のクラブでも過去にもありましたが、応援するすべてのサポーターの理解を得られるかというとそうとは限らない。連合も覚悟はしていたでしょう。ただ、選手たちが受けたショックが大きいことは事実です。応援してくれるサポーターのために戦っているわけですから。宇佐美の流した涙が象徴的です。ああいう姿を見ると心が痛みます」
連合が応援を再開し、新潟戦で久々の白星をつかんだ。まだシーズンは半分も消化していない。辛く悔しかった日々を糧に、巻き返しを目指す。



