J1残留争い、降格は「1枠」も混沌とした状況に “危ない”と感じるチームはどこだ〈dot.〉

 元々、チームの半数以上(レンタル復帰も含む)が新加入組という中で、戦術の浸透とコンビネーションの確立に時間を要することは覚悟していたが、ここに来て“戦い方”が固まってきた感がある。守備では故障で出遅れていたGKブローダーセンの復帰が大きく、攻撃陣ではここまで6得点のFW小川航基に加えて、川崎戦で衝撃的なゴールを決めたスピードスターの山下諒也、テクニシャンの井上潮音と“違い”を生み出せる人材も見えてきた。上位進出は難しく、急浮上は期待できないかもしれないが、それでも粘り強く勝点を拾って行くことはできそうだ。

G大阪と横浜FCが浮上の気配を漂わせる一方で、現在17位の湘南は右肩下がりだ。開幕戦の鳥栖戦(○5-1)、第6節のG大阪戦(○4-1)の大勝が印象的だが、“ハマらない試合”の方が多く、ここまで勝点11(2勝5分け7敗、21得点25失点)の17位。消化試合が1試合少ないが、直近8試合白星なし、第10節から5連敗という心配な状況になっている。

痛手だったのが、大橋祐紀、小野瀬康介、タリクの相次ぐ負傷離脱だった。エースFW町野修斗は奮闘しているが、豊富な運動量と高い献身性でハイプレス戦術の中でキーマンになっていた彼らが不在だった影響は少なくなかった。小野瀬、タリクが復帰した6月から仕切り直して序盤戦の勢いを取り戻せるか。期待はしたいが、アグレッシブな「湘南スタイル」の敵は気温と湿度でもあるだけに、ここからの夏場の戦いに“嫌な予感”はしてしまう。

昨季7位だった柏も危ない。ここまで勝点12(2勝6分け7敗、9得点19失点)の15位。昨年の8月から10戦未勝利でシーズンを終えると、大型補強を敢行した今季も開幕6戦未勝利スタート。ようやく第7節の鹿島戦(○1-0)で今季初勝利を挙げて復調気配を見せたが、第13節で当時最下位だった横浜FC戦(●0-1)に敗れてネルシーニョ監督が退任。極度の得点力不足と不満を募らせたサポーターの声に応える形で大ナタを振るうことになった。

後任の監督として井原正巳ヘッドコーチを昇格させたが、第14節の神戸戦(△1-1)、第15節の川崎戦(●0-2)に敗れ、連敗スタートとなった。相手が悪かったとも言えるが“解任ブースト”は不発に終わっている。さらに川崎戦を欠場したマテウス・サヴィオの状態が心配。攻撃の中心であるブラジル人MFがチームにいるといないとでは大きく異なる。絶賛成長中の21歳、FW細谷真大の能力を生かせれば得点を奪えるはずだが、まだ“光”は見えていない。

昇格2年目の京都も、苦しい状況に陥っている。開幕連敗スタートの後、第3節のFC東京戦(○2-0)から湘南戦(○2-0)、横浜FC戦(○4-1)と3連勝を飾ったが、第8節のG大阪戦(○2-1)の勝利を最後に7試合白星なしで現在5連敗中だ。ここまで勝点13(4勝1分け10敗、16得点24失点)の14位まで順位を下げた。

課題はやはり得点力だ。5連敗中の5試合で奪ったのは計2得点のみ。3トップの中央として主戦となっているパトリックが今季5得点を挙げて奮闘してはいるが、すでに35歳となっている男だけに今後の長いシーズンを任せるのは心許ない。他のFW陣の奮起、もしくは夏の移籍市場での補強も考えるべきだろう。曺貴裁監督3年目でプレッシングサッカーはチームに浸透しており、アンカー役の21歳MF川崎颯太が日本代表に招集されるなど明るい話題もある。湘南同様、スタイル的に夏場でどれだけ“我慢”できるかが残留への鍵となりそうだ。

不穏な空気が漂ってきたのが、新潟だ。昇格1年目、6年ぶりのJ1舞台ながら開幕4試合を2勝2分けの好スタート。松橋力蔵監督のもとで磨き上げてきたパスサッカーを貫き、トップ下の伊藤涼太郎がハイパフォーマンスを披露した。しかし、第9節の鹿島戦(●0-2)以降の7試合で1勝1分け5敗と苦しみ、ここまで勝点16(4勝4分け7敗、16得点23失点)の13位となっている。

第13節で今季も優勝争いに加わっている横浜FM戦(○2-1)に勝利した一方で、第11節の横浜FC戦(●0-1)、第15節のG大阪戦(●1-3)と下位に沈んでいるチームに白星を献上した点は大いに気になる。簡単なミス、軽いプレーからの失点が目立ち、シーズン序盤の集中力、闘争心が徐々に低下してきていると言える。さらに心配なのは、今季7得点2アシストの伊藤に海外移籍の可能性が浮上していること。もし、今夏に“離脱”すればチームは大きな核を失い、残留争いに巻き込まれることになる。

まだ15節だが、もう15節でもある。気がつけば、18位のG大阪から14位の京都までの5チームが、わずか勝点3差の中にひしめき合っている。13位の新潟を入れても6差しかない。J1残留争いは、混沌とした状況で梅雨入りを迎え、正念場の夏を迎えることになりそうだ。(文・三和直樹)

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