【番記者の視点】G大阪、保持率3割以下で勝利 ポヤトス監督が「支配できた」と語る意味
◆明治安田生命J1リーグ 第15節 新潟1―3G大阪(28日・デンカS)
【G大阪担当・金川誉】今季G大阪が苦しめられたことを、やり返したような試合だった。前線からの守備で相手のミスをついた前半2分の先制点に、鋭いカウンターで奪った前半終了間際の追加点。そして1点を返された直後、相手の勢いをそぐ3点目。終盤は5バックでスペースを埋めて逃げ切った。
ともにボールを握りたいというコンセプトを持つチーム同士の対戦で、ポゼッション率で上回ったのは新潟。しかし先制したことで、前線にジェバリを残した4―5―1のミドルブロックからのカウンターが有効に機能した。ポヤトス監督が「DF面において完璧な試合、ゲームの運びができた。3点目を奪ってゲームコントロールできた」と語ったように、ミドルシュートは許しても崩されたシーンはほぼなかった。
一見すれば、ボールを支配されながら耐えた内容にも映った。しかしここで重要なのは、ポヤトス監督が就任直後から繰り返している「試合を支配する」という言葉の意味だ。「支配という言葉=チャンス数だと思っている。ポゼッションで言えば新潟さんが持っていたと思うが、いつも言っているようにポゼッションはチャンスをつくる手段でしかない。(新潟は)あまりチャンスはつくれていなくて、逆に自分たちは守備からしっかりチャンスをつくれた。そういう意味では、自分たちが支配できたと思っています」。相手後方にあるスペースをカウンターでつくプレーは、就任から一貫して「どこにスペースがあるのか」と指揮官が繰り返してきた狙いでもあった。
この日は縦への意識、球際での攻防といった今季チームに欠けていた部分で新潟を上回った。2点目のカウンターは中盤で倉田がボールを奪いきり、MF石毛秀樹が素早く前線にボールを送ったことで生まれた。守備では福岡将太、佐藤瑶大の両センターバックを中心に中央を締め、体を張ったシュートブロック、タックルが成功すれば、味方が次々と駆け寄ってたたえた。チームが守備で“乗ってきた”サインが、ピッチ上で何度も見られた。
ボール保持率で今季最低の28パーセントとなったこの試合は、ポゼッションをチャンス構築の有効な手段を考えてきたチームにとって、狙い通りの試合とは言えない。ただ現時点ではボール保持の精度でG大阪を上回った新潟に対し、スペースをついて仕留めた戦い方は正解だったと言える。すべてを解決するひとつの戦術はなく、ボール保持もカウンターも、ゴール前の守備もハイプレスも必要。すべての根幹にある部分が、ハードワークであり、相手との駆け引きだ。いまだ最下位から抜け出せていないことで、指揮官も選手達も、心から安堵しているような様子はなかった。しかしこの勝利が、チームが落ち着きと自信を取り戻すための第一歩となったことは確かだ。