「点を決めて勝つことしか考えていない」U-20W杯に臨む福田師王のみなぎる自信。連係面に課題も強気な姿勢は崩さず
動き出しの良さで周囲の信頼を勝ち取る
冨樫ジャパンのラストピースになれるか――。渡独して約4か月。高校No.1ストライカーと称された福田師王(ボルシアMG)が、U-20ワールドカップを前に自信をみなぎらせている。
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「自分の得点で勝つイメージ」
5月19日、U-20日本代表はアルゼンチンのブエノスアイレス市内でトレーニングを行ない、21日のセネガル戦を想定したメニューを消化した。この日は大粒の雨が叩きつける悪天候。時折、目を開けることすら困難な状況になったが、福田の目はギラついていた。
今大会、FW登録で招集された選手は3名。坂本一彩(G大阪)と熊田直紀(FC東京)は3月のU-20アジアカップにも参戦し、前者は2ゴールを奪い、後者は4ゴールで得点王に輝いている。一方で、福田は昨年3月以来、代表活動に参加しておらず、連係面で不安を抱えていた。
実際に大会前最後のトレーニングマッチとなった15日のアルゼンチン戦でも、思い描いたプレーは見せられていない。守備面やポストプレーでは一定の手応えを掴んだが、肝心の“ゴールを奪う”仕事ができなかった。
「自分の動き出しが悪く、まだ全然(ボールが)入ってこない。自分が改善すれば、入ってくると思うので、そこは頑張っていきたい」
だが、福田は現状を悲観しておらず、強気な姿勢を崩していない。ドイツに渡ってからの日々が充実していたからだ。
合流して間もない時期から、U-19のカテゴリーでゴールを量産。動き出しの良さで周囲の信頼を勝ち取り、ゴールゲッターとしての才能をいかんなく発揮してきた。
神村学園高時代に何度も強さを見せてきた空中戦でも徐々に競り合いの強さを示し、178センチのサイズを補ってあまりある跳躍力で大柄な選手を凌駕。今ではセットプレーのターゲット役を担うまでになっており、リーグ戦で7戦5得点の力は本物だ。
フィジカル面の強化に力を入れるなど、ドイツに渡ってからもさらなる進化を目ざしてきた。そうした地道な積み重ねに加え、自身が置かれている環境も成長スピードを加速させる要因になっている。特に大きかったのが、トップチームのトレーニングを自由に見学できる環境だ。
「手を上手く使えるようになった」
ボルシアMGのアンダーカテゴリーは、トップチームのホームスタジアムである“シュタディオン・イム・ボルシア・パルク”と同じ敷地内で活動している。トップチームのグラウンドも併設されており、目に触れる機会は多い。
しかも、アンダーカテゴリーの寮はこの施設内にあり、福田は頻繁にここからトレーニング風景を眺めている。そうした環境下で、ある選手のプレーが目に飛び込んできた。フランス代表のマルクス・テュラムだ。福田は言う。
「(相手を競り合う際に)手を上手く使えるようになった。(トップチームで練習している)テュラムの姿が寮から見えるんです。クロスに入る時も強い相手には手を1回入れると、フリーになれるし、バランスが崩れて勝つ勝率が上がることを知った」
往年の名DFリリアン・テュラムを父に持つ男のプレーを参考にするだけではなく、実際にトップチームでプレーする日本代表のDF板倉滉にも話を聞きに行った。 「板倉くんからも聞いて、非常に良い話をしてもらいました」
見て技を盗み、先輩に質問をぶつける。そうした環境で研鑽を積み、レベルアップに励んできた。だからこそ、自信はある。18日の練習後、「今大会のテーマを教えてほしい」と尋ねると、福田は迷わずにこう言った。 「点を決めて勝つことしか考えていない」
初戦まで残り2日。天性のストライカーは成長を示すべく、セネガル戦に全力を尽くす。