日本代表の招集望む声も! Jリーグ開幕から予想上回る活躍「5人のサプライズ選手」〈dot.〉
30周年を迎えた2023年のJリーグは、開幕から約3カ月が経過した。毎週、各地で白熱の戦いが繰り広げられている中で、戦前の予想を上回る働き、驚きのパフォーマンスを見せている選手が多くいる。新たな発見は大きな喜び。Jリーグ序盤戦の“サプライズ選手”をピックアップしたい。
今季、最も新鮮かつ大きなインパクトを残している選手が、新潟のMF伊藤涼太郎だ。1998年2月6日生まれ。U-15時代から世代別代表に選ばれるなど、足元の技術、創造性の高いプレーに対する評価は高かったが、作陽高から高卒ルーキーとして入団した浦和時代は体力不足の課題を露呈。育成型期限付き移籍でプレーした水戸、大分でも活躍の継続性を欠き、2022年に完全移籍した新潟で9得点11アシストの活躍を見せても「J2だから」というフィルターがかかっていた。
しかし、J1昇格を果たした今季、C大阪との開幕戦で2アシストを決めると、第3節の札幌戦、第4節の川崎戦と2試合連続でゴール。そして第8節の福岡戦では圧巻のハットトリックをマークするなど、研ぎ澄まされた技術と得点感覚でチームを牽引している。トップ下の位置から攻撃のタクトを振りながら、ここまでリーグ2位タイの7得点を決めている25歳に対して、日本代表への招集を求める声も日に日に高まっている。
札幌のMF浅野雄也もサプライズ的な活躍でここまで7ゴールを決めている。1997年2月17日生まれ。カタールW杯でのドイツ戦で逆転ゴールを決めた兄・拓磨譲りの爆発的なスピードが最大の武器。三重県の四日市四郷高から大阪体育大を経て入団したJ2・水戸で結果を残し、J1の広島でも2020年にリーグ戦32試合5得点、2021年は37試合6得点と働いたが、昨季は序列が低下して12試合無得点に終わった。
一度は曇ったキャリアだったが、札幌に完全移籍した今季は、ミシャサッカーの中で生き生きとプレー。高い献身性で前線からの守備に奔走した上で、2シャドーの位置から裏へ抜け出してチャンスを作り、強烈な左足シュートでゴールを量産。第10節の横浜FC戦で2得点を決めると、第12節のFC東京戦ではトップスピードの中での完璧なファーストタッチからゴール。直近のリーグ戦5試合で5得点の暴れっぷりだ。
アジア制覇を成し遂げた浦和のMF大久保智明もサプライズに値する。1998年7月23日生まれ。東京Vの下部組織育ちで中央大から2021年に浦和に加入した左利きのドリブラー。昨季後半戦から出番を増やしてリーグ戦23試合(先発13試合)に出場していたが、今季は開幕前の「控え要員」から「不動の主力」に立場を変え、リーグ戦11試合中10試合にスタメン出場している。
スタート位置は右サイドだが、試合の中で中央、左サイドと自在にポジションを変えながら、鋭いドリブル突破で次々とチャンスを作り出している。得点力が課題だったが、リーグ戦唯一の途中出場となった第13節のG大阪戦で待望の今季初ゴール。今後、アシストだけでなくゴールという結果も残せば、現在のサプライズ感はより大きなものとなる。
今季も上位争いを繰り広げている広島のMF越道草太も、今季のサプライズ選手として注目したい。2004年4月3日生まれ。広島県出身、広島ジュニアユースから生え抜きのサイドアタッカー。魅力はそのスケール感。身長180センチと大柄で、右利きながら左足も遜色なく操り、両サイドに対応可能だ。
ユースから今季トップ昇格を果たしたばかりだが、第2節の新潟戦でJデビューを果たすと、第7節の鳥栖戦から直近の第13節の神戸戦までの6試合中5試合に右ウイングバックとしてスタメン出場し、第8節の横浜FC戦では右サイドからのクロスで東俊希の先制ゴールをアシストして見せた。19歳ながら判断力も含めて攻守に安定感のあるプレーを見せており、空中戦の強さもアドバンテージ。U-20W杯のメンバーからは漏れたが、日本人には希少な大型サイドアタッカーとして今後の成長が楽しみな選手だ。
今季のJ2のサプライズといえば「町田の首位快走」だが、選手個人に目を向けると藤枝のFW渡邉りょうの名前が挙がる。1996年10月25日生まれ。東京都出身で、高輪高校、産業能率大を経て、2019年にJ3の沼津に加入。ほぼ無名の存在だったが、身長179センチの肉体に強さと速さを搭載し、ボックス内でのポジショニング、鋭い動き出しから正確かつ強烈なシュートを放つストライカーだ。
2シーズン目にリーグ戦7得点を奪う活躍を見せると、2022年7月に移籍した藤枝でも1トップの軸として働き、J2昇格に貢献している。そして迎えた今季、いわきとの開幕戦でいきなり2得点を奪うと、その後も自身初めてとなるJ2の舞台でもハイペースにゴールネットを揺らし続け、ここまでリーグ単独トップの10得点をマークしている。現在26歳。今後のさらなるステップアップも予感させている。
ここに挙げた選手以外にも、多くのチームで新たな戦力が頭角を現している。彼らが今後、どのような活躍を披露するのか。まだシーズンは半分以上も残っており、ここからさらに多くの“サプライズ”を提供してもらいたい。(文・三和直樹)



