30年前ともに「弱小」だったレッズとガンバの明暗 かたやアジア王者、一方はリーグ最下位…歴史は繰り返されるのか
1993年5月15日に華々しく幕を開けたJリーグ。ヴェルディ川崎と横浜マリノスのオープニングマッチが行なわれた国立競技場には5万9626人の大観衆が詰めかけ、歴史的な一戦をその目に焼きつけた。
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翌16日にはそのほかの4試合が開催され、そのうちのカードのひとつが万博記念競技場でのガンバ大阪vs浦和レッズだった。試合は29分に生まれた和田昌裕のゴールを守り抜いたG大阪が1-0で勝利を収め、記念すべきJリーグの初陣を白星で飾っている。
あれから30年が経ち、2023年5月14日に同じカードが組まれた。ホームとアウェーは逆ながら、埼玉スタジアムで行なわれた一戦に30年前の情景を思い浮かべたオールドファンも少なくないだろう。
今でこそ東西の雄として名を馳せる浦和とG大阪だが、開幕当初は”弱小”のレッテルが張られていた。浦和は初年度のJリーグで断トツの最下位に終わり、1999年にはJ2降格も経験。G大阪もエムボマがブレイクした1997年こそ上位進出を果たしたものの、そのほかのシーズンは下位争いの常連だった。
上昇気流に乗ったのは、2000年代に入ってから。2003年に浦和がナビスコカップを制して初タイトルを獲得すると、2005年にはG大阪が初のリーグ優勝。翌2006年には浦和もリーグ制覇を成し遂げ、2007年にはACLも勝ち取っている。あとを追うようにG大阪も2008年にアジアの頂点に立った。
先日、3度目のACLを制したばかりの浦和は国内3大タイトルとACLを合わせて、10個のタイトルを獲得し、G大阪は9つの栄冠を掴んでいる。かつての弱小チームは今や、名実ともにJリーグを代表するクラブとして君臨する。その道のりには紆余曲折があったとはいえ、30年の歴史の重みを感じずにはいられない。
もっとも、似たようなバイオリズムを描き、強豪クラブへの道を歩んできた両者だが、今季の状況はあまりに対照的だ。ともに昨季は結果を出せず、新監督を迎えてリスタートを切ったシーズンである。
【あまりにも不甲斐ない敗戦…】
浦和は開幕2連敗と出遅れながら、その後に4連勝を達成するなどすぐさま結果を出し、その勢いのままにアジアの頂点に立った。ポーランド出身のマチェイ・スコルジャ監督の確かなチーム作りが、早くも成果として表れている。
一方のG大阪は昨季まで徳島ヴォルティスを率いたスペイン出身のダニエル・ポヤトス監督を迎え入れ、4-3-3の布陣によるポゼッションスタイルに舵を切ったものの、理想形には程遠い状況にある。
開幕の柏レイソル戦では終了間際に追いつかれ引き分けに終わると、2節以降も結果を出せず。7節の川崎フロンターレ戦でようやく初勝利を挙げたものの、8節からは再び勝利から遠ざかり、3連敗の状況で迎えたのが、この浦和戦だった。
いい意味での割り切りが見られた前半は悪くなかった。ポゼッションにこだわらずシンプルに裏を狙うプレーで、相手のラインを押し下げる策が奏功。23分にはイッサム・ジェバリの鮮やかな個人技から先制点も奪っている。
もっとも前半終了間際にPKを献上し追いつかれると、後半は選手交代で戦局を動かしてきた浦和の攻勢に耐えきれず、ミスも相まって立て続けに2失点。その後の反撃も単発にすぎず、ビハインドを取り返せないまま1-3の完敗に終わった。
これでG大阪は4連敗。横浜FCにかわされ、ついに最下位に転落した。
あまりにも不甲斐ない敗戦だった。先制したことで受け身に回り、相手の変化にも対応しきれなかった。そこにミスも加われば、結果を手にすることは難しいだろう。遠路はるばる駆けつけたG大阪サポーターが怒りのブーイングを浴びせたのも、さもありなんの内容だった。
「姿勢に関しては悪くなかったと思います。全員が勝つためにすべてを出しきる姿勢は出ていた。ただ、自分たちが犯したミスや決定力のところは改善が必要だと思います」
ポヤトス監督はそう振り返ったが、結果が出ていない状況下では、その姿勢を保つのも困難になるだろう。
【最後のタイトルは2015年】
開幕の柏戦後は、まだポジティブだった。
「勝てそうなゲームを落としたとか、ボールを支配しているところで3点目が取れていればとか、試合が終わった時にそういった感情になることはここ数年、なかなかなかったこと。もちろん勝ちたかったし、勝ち点2を失ったのは間違いないですけど、ポジティブな悩みだと思っています」
そう語っていたのは、宇佐美貴史である。新たなスタイルに手応えを掴んだからこその前向きな発言だった。しかし、この日は違った。
「ボールは保持されていましたけど、点をうまく取れたし、全員で粘り強く守れていた。ただ、前半の終わりと後半の頭という失点するタイミングもそうですし、うまくいってない感じですね」と、肩を落とすだけだった。
「個人としても力不足を痛感した」という宇佐美は、「大変な状況ですけど、何とかしようとみんな頑張っている。なかなかこういう状況になると続けることも難しくなってくるけど、全員で力を振り絞ってやっていきたい」と必死に前を向いた。
まだ13試合を終えただけと言える一方で、すでに13試合も終えたとも言える。かつては優勝を争ったライバル相手に、組織力の差を見せつけられての完敗である。そのダメージは、決して小さくないだろう。
2015年の天皇杯優勝を最後にタイトルから遠ざかり、ここ2年は残留争いに巻き込まれている。そして今季もわずか1勝と苦しむG大阪は、再び低迷期に足を踏み入れつつある。
果たして歴史は、繰り返されるのだろうか。