【G大阪】広島戦は「どうしたガンバ?」を象徴。主力選手から漏れる「これが今のガンバの力」「チグハグしている」の嘆き節 SOCCER DIGEST Web 11月8日(日)8時0分配信

昨季の三冠王者に、今なにが起きているのか――。

 10月31日のナビスコカップ決勝・鹿島戦(0-3)に続き、第2ステージ16節の広島戦も0-2と敗れた。これでG大阪は今季初の公式戦2戦連続ノーゴール。思うようにチーム状態が上がらず、年間順位もFC東京に追い抜かれて3位から4位へ転落した。

攻撃はどこか迫力を欠き、ようやくチャンスになったかと思えば精度を欠く。そして一方の守備も、昨季のような堅牢さは見る影もなく、中盤の網を簡単にすり抜けられ、最終ラインも撥ね返せずに失点。決め切れず、守り切れない――それが現在のG大阪だ。

昨季の三冠王者に、今なにが起きているのか――。

攻撃の機能不全について、今野泰幸は「いつか得点できるという感覚が、今は薄れてきている」と語る。昨季であれば、先制されても「いつか得点できる」という自信がチームに満ち溢れていた。ところが今はその根幹が揺らぎ、“偶然性”に頼る形が増えているという。

その最大の原因は、宇佐美貴史とパトリックを抑え込まれた時のバリエーション不足だ。「それは正直、やっている選手も感じている。いつか得点できるとい う感覚が、今は薄れてきている。なんとかごちゃごちゃという感じになって、そこからボールがこぼれてチャンスになる、という感じしかない。ビルドアップや バリエーションが少ない」(今野)。

前半は左MFに入った宇佐美を中心に、何度かエリア内に侵入する形を作り出した。GK林卓人のビッグセーブもあり得点にこそ至らなかったが、チャンスは確かにあったのだ。ただ、それは良く言えばG大阪の形だが、裏を返せば、それ以外で迫力ある攻撃を繰り出せなかったということ。つまり“お決まり”に陥っ ているのだ。

攻撃は“お決まり”の形――極端に言えば、宇佐美がどう動くかで決まる。

“お決まり”の形も明確だ。極端に言えば、左サイドの宇佐美がどう動くかで決まる。

左サイドに張った宇佐美がボールを受け、中央に切れ込んでパトリックや倉田秋とのワンツーからシュート。あるいは、左サイドでボールを受けた宇佐美がタ メを作り、右足でパトリックらにクロスを供給する。G大阪にとっては鉄板の形であり、ストロングポイントである一方、相手からすれば当然読みやすい。

広島の千葉和彦も「宇佐美選手や倉田選手がパスを出した後に、ワンツーでボールを受ける。それは試合前から口酸っぱく言われていたので、その部分はみんなが意識して対応できた」と証言する。

もっともこの日のG大阪は、遠藤保仁をトップ下に置く4-2-3-1でスタートし、攻撃のバリエーションを増やそうとする一手を講じていた。ところが、 これが結果的に裏目に出てしまう。肝心のボールが遠藤に入らず、逆に最終ラインと2ボランチの配給力不足を露呈する形となった。

「ヤットさんは視野も広いし、パスも出せるので、足もとにボールを入れられれば良かったけど……なかなかビルドアップの面でヤットさんにボールが入らなかったし、ヤットさんが前を向く場面も少なった。そのへんも影響してチャンスを作れなかった」(今野)

後方から攻撃を援護した岩下敬輔は「チームとしてマークを剥がせていない」と語る。

「ボールを持っている時間は長いけど、なんとなく上手くいっていない。個々のクオリティで相手のマークを剥がせているだけで、チームの狙いとして剥がせて いる場面はほとんどなかった。相手の追い方を見ながらパスを回して……という感じ。中央にパト(パトリック)しかいない場面も多くて、SBが狙いを持って クロスを上げられる形もなく、後手を踏むサッカーになった」

一発退場のパトリックは「チャンスをモノにできないストレスから、瞬間的に感情的になってしまった」。

 攻撃の空回りを象徴するのが、パトリックの退場だろう。最前線に入ったブラジル人FWは相手の激しいマークに苦しみ、イライラを募らせて77分に一枚目の警告を受けると、90+1分にも接触後に相手を蹴り飛ばして一発退場となった。

最終節のホーム山形戦で欠場となるパトリックは「チームに迷惑をかけてしまった」と反省しながらも、「攻撃にしても守備にしても良くない」と語り、自身の退場についても言及した。

「ボールをもらって、反転してからシュートを1本打ったけど、チャンスはそれしかなかった。そうなると、どうしてもストレスが溜まる。勝ちたい気持ちやチャンスをモノにできないストレスから、瞬間的に感情的になってしまった」

先制された時のG大阪に見られるのは焦りだ。ボールを回しながらじっくり急所を探るような余裕は鳴りを潜め、どこか攻め急ぐ姿ばかりが目に付く。「タカ シ(宇佐美)がボールを持った時はチャンスの感じがあったので、そこまで心配していなかったけど、結局、最後まで相手に脅威を与えられなかった」と今野。 かたや岩下は「これが今のガンバの力」と肩を落とした。

「去年であれば、『1点取られても大丈夫でしょ』という余裕を持ってプレーできていた。今は先制されると焦りにつながって、難しいゲームになっているのが 現状。そこは自分たちで打開するしかない。観ている人たちが『迫力あるな』『チャンスだな』と感じられる場面がほとんどない。これが今のガンバの力だと思 う」

先制点につながるFKを献上した岩下は「直接決められたので、自分の責任でもある」と反省。

 ナビスコカップ決勝の鹿島戦で3失点、広島戦で2失点と守備も安定しない。好調時は、中盤と最終ラインが絶妙な距離感を保ち、力強い寄せで自由を与え ず、こぼれ球を回収してカウンターにつなげていた。いまや耐久力が持続せず、組織の立て直しも間々ならない状態が続いている。

広島戦に関して言えば、最終ラインが押し込まれる場面も多かった。ひとつの原因は、今野と井手口陽介の2ボランチが翻弄され、中盤で効果的なプレスがか からなかったことだろう。CBの岩下は「今ちゃんと(井手口)陽介の組み合わせで、そこでボールを奪うシーンがあまりなかった」と指摘しながら、「最後の ところでは耐えていた」と振り返る。

「前半から相手にミドルシュートを打たれたり、少し中盤が空くシーンもあったけど、そこはヒガシ(東口順昭)との関係で、想定の範囲内でシュートを打たせているところもあったけど……」

また岩下はドウグラスを倒し、先制点につながるFKを献上。その場面については「直接決められたので、自分の責任でもある。(ボランチとどちらがドウグ ラスに寄せるか)はっきりしなかった。ヤットさんと確認して修正しないといけない。ただ仮にああいう場面になっても対応できていれば良かった」と反省を口 にする。

「点が取れていないところよりも、2点取られたところは守備陣の責任。それは自分の仕事でもあるので反省しないといけない。前の試合(ナビスコカップ決 勝)で鹿島に3点取られたし、失点が多すぎるところは修正する必要があるし、もっと自分のクオリティを上げないといけない」

自力でのCS出場はなく、勝利を掴んだうえで他会場からの“吉報”を待つのみ。

 次節はホーム最終戦の山形戦。広島戦で一発退場のパトリックに加え、岩下も累積警告で欠場となる。現在、年間3位のFC東京と年間4位のG大阪が、CS出場権を懸けて争っている。

■2nd・16節終了時点の年間順位
年間3位 FC東京/勝点62 19勝5分9敗 45得点・33失点(得失点差12)
年間4位 G大阪/勝点60 17勝9分7敗 52得点・37失点(得失点差15)

■2nd・17節のカード/11月22日(日)
FC東京×鳥栖 13:30@味スタ
G大阪×山形 13:30@万博

自力でのCS出場が不可能になったG大阪にとっては、最終戦の山形戦に勝利し、FC東京(対鳥栖@味スタ)が引き分けるか敗戦するのを待つしかない状況だ。G大阪が勝利し、FC東京が引き分けた場合は勝点63で並ぶものの、得失点差でG大阪が上回る。

「チグハグというか……強い時のガンバを失いつつある。良い時はすべてが上手く回るけど、逆に悪い時もある。今は耐え時だと思う」(今野)

山形戦で勝利を掴み、昨季最終節のように他会場からの“吉報”を待つのみだ。

Share Button