「CLやELに出ているドイツ有望株のフィジカルに負けず…」パリ世代日本代表を撮って感じた“肉体とハートの充実ぶり”
新生森保ジャパンの初陣として組まれた対ウルグアイ、コロンビア戦が1分1敗と終わった3月末の代表ウィーク。その間、2024年パリオリンピックの主軸となる大岩剛率いるU22日本代表は欧州遠征を行い、ドイツ、ベルギーと対戦した。
【写真】「日本がドイツの有望株、吹っ飛ばしてる…」2-2以上に価値があったパリ世代の“どアウェイでの奮闘”を一気に見る(70枚超)
初戦ドイツ戦を2-2で引き分けると、続くベルギー戦では2-3の敗戦、奇しくもフル代表と同じく1分1敗に終わった。この敵地ドイツで行われたU22ドイツ対日本戦の模様を写真とともに振り返る。
ゴール裏に漂うアウェーの雰囲気
3月24日に行われたこの試合は、フランクフルト市内にあるPSDバンクアリーナで行われた。ドイツ地下鉄Uバーンの最寄駅より徒歩最短3分と好立地のスタジアムは、キャパ1万2500人強のFSVフランクフルトのホームスタジアムとなる。
スタジアムの周りには、アンダー世代の試合とは思えないほどのファンの姿が見られ、また出店から漂うドイツソーセージの匂いが鼻腔をくすぐる。
この日バルセロナからのフライトは、2時間近い遅れがあり、食べる暇なく空港から駆けつけた身には堪えたが、フランクフルトでフランクフルトを食べる間も、写真に収める暇も無く、ただただ空腹感を強くして取材手続きに向かった。
ピッチ内撮影ポジションに着くと、スタジアムを包む雰囲気の良さを改めて感じさせられた。西陽に輝くドイツ国旗をはためかせるファンの姿、最前列で目を輝かせ選手を見つめる多くの子ども達の姿。
もちろん、この街をホームタウンとし、CLを舞台に戦うアイントラハト・フランクフルトの巨大なスタジアムとは比べられないが、北ゴール裏の一面が入場規制されていることもあり、6000人超のファンがぎっしり固まり、日本代表、日本ファンにとっては、紛れもないアウェーの雰囲気での試合になった。
ドイツA代表監督フリックの姿もあった
アイントラハト・フランクフルトで日本代表MF鎌田大地や長谷部誠の同僚となっているクナウフとファリデ・アリドゥには、とりわけ多くの地元ファンからの歓声が届いていた。
そして会場には、ドイツA代表ハンジ・フリック監督の姿もあり、多くのファン、トップチーム監督が見守る中、そして先のカタールW杯において日本への敗戦も影響はあっただろうか、日本戦に臨むU22ドイツ代表の表情にその高いモチベーションが漲っていた。
この日の先発メンバーでは、年初にストラスブールにレンタル移籍をした鈴木唯人、デュッセルドルフ所属の内野貴史が海外組となった。また京都サンガで先発を重ねる川崎颯太や山田楓喜、柏レイソル所属で22年Jリーグベストヤングプレーヤー賞を受賞の細谷真大などもいるが、キャプテンマークを巻くガンバ大阪ボランチ山本理仁をはじめ多くが所属クラブで定位置を獲得できていないのが懸念材料か。
なお海外組としては、この日はサブとなったが、GK小久保怜央ブライアンがSLベンフィカ、MF田中聡がKVコルトレイク、スパルタ・ロッテルダム斉藤光毅は怪我で不参加となった。
対するドイツのメンバーには、前述の2名に加え、ELを戦うフライブルクで堂安律と同僚となるケイテルがキャプテンマークを巻き、ゴールマウスを守るのはアトゥボー、シャルケ所属クラウスなどがいる。戦うリーグレベルの差とともに、プレー時間からの経験値の差は決して小さいものではなかったはずだ。
印象的だった前線からのプレッシャー
それでも――現地時間18時15分、ドイツのキックオフで始まった試合は、日本が前線から果敢にプレッシャーをかける姿が印象的だった。体格に勝る相手にボランチを組む川崎と山本がタッグをボールを奪い切り、左サイドに入る明治大学の佐藤恵允が激しいやり合いの中でファリデからボールを奪った。
また中盤で川崎がインターセプトからカウンターに入ろうかという場面では、ファールが取られ悔しがる姿が見られたが、相手を恐れず、ボールを奪い切ろうとするシーンが目立った。
しかし自力に勝るドイツは、序盤から日本のプレスを巧みに回避すると、日本ゴールに襲いかかった。前半8分には、早くも絶体絶命のピンチを迎えたが、ゴールを守る鈴木彩艶が2連続のセーブで切り抜けた。さらに相手セットプレーでは、ドイツの驚異的な高さで危機を迎えたが、鈴木に加えて両CB木村誠二、西尾隆矢が弾き返した。
攻撃面では、トップ下に入る鈴木が起点となり何度か好機を演出したが、固いドイツの守備を崩すことができないでいた。
相手のフィジカルに負けない場面が増えた
なんとかドイツの猛攻を凌いできた日本だったが、40分PKにより先制点を奪われる。万事休すかと思われたが、失点直後に得たCKから佐藤が同点ゴールを奪った。キッカー鈴木のボールをニアで西尾がフリックすると、ファーに詰めた佐藤が落ち着いて頭で流し込んだ。この形は、しっかりとデザインされたもので、ベルギー戦でもこの形からゴールを奪っている。
同点で迎えた後半、日本がキックオフからロングフィードを前線に送ると、相手サイドバックが処理に手間取り、GKにパスを戻したが、そのルーズになったパスを佐藤が奪うとそのままGKをかわしてクロス。そこに詰めた細谷が直接ゴールに打ち込み逆転に成功した。ロングフィード自体は相手に渡ることになったが、そこへのプレスが相手のミスを誘発しゴールへつながった場面だった。
ドイツ先制からの日本の連続ゴールと、カタールW杯でドイツを破った再現なるかと思われたが、直後49分、失点につながるミスをした右サイドバック、アスタのクロスをボックス外から走り込んだデニスが見事に蹴り込み、すぐさま同点に追いつきドイツが意地を見せた。
後半は両チーム共に次々と交代策を見せたこともあったためか、よりオープンな展開に。それぞれがシュートシーンを見せる展開となった。前半ドイツ守備網に抑え込まれた鈴木も、相手のフィジカルに負けずドリブル突破を見せるシーンも増えた。
また日本では、藤田譲瑠チマや松村優太、西川潤などが途中出場すると果敢に自身の良さを発揮しようとチャレンジをしかけた。2失点こそしたものの、鈴木彩艶の身体能力を活かしたセービングは安定しており、木村、西尾、両CBとドイツ攻撃陣を跳ね返し続けると、試合は2-2のまま終わりを迎えた。
大岩監督が語った今後への課題とは
両チームにとって、勝ち切ることができた試合だったというような、悔しさを滲ませ健闘を讃えあった。試合後、大岩監督は「所属クラブで定位置を確保し出場している選手としていない選手で、コンディションに違いがある」とチーム作り以前に、各々が解決しなければならない課題を述べている。
ただ同世代で、すでにCLやELなどで出場を重ねている選手と肌を合わせたことで得た感覚、アウェイの雰囲気で、チームとして戦い切ったという経験は、パリ五輪に向け貴重な経験になったはず。
選手個々人、またチームとして、通用した点、通用しなかった点を所属クラブへ戻り、突き詰めていく日々がパリへ繋がっていく。