いまだ勝てないガンバ大阪に何が欠けているのか スペイン人指揮官が志向するサッカーと「恐怖の問題」

4月1日、平塚。J1リーグ、ガンバ大阪は敵地で湘南ベルマーレと対戦し、4-1と大差で敗れている。これで開幕以来、3分け3敗と16位に沈み、一度も勝てていない。

【画像】G大阪、湘南ほか J1全18チーム序盤戦フォーメーション

「Problema de miedo」  試合後、G大阪ガンバのダニエル・ポヤトス監督はスペイン語で「恐怖の問題」と不調の理由のひとつを説明していた。相手への恐怖ではない。失敗に対する怖さだろう。

ポヤトスはロジカルな指導者で、何も間違っていない。

しかし、なぜ恐怖が生まれるのか。それは選手がチームの仕組みに対し、確信がないからだろう。その点、チームとして未成熟であることを露呈している。問題は、新たに率いたチームで時間が必要なのか、もしくは仕組みそのものに破綻があるのか。

G大阪は立ち直れるのか? 「今年のガンバは、戦い方が整理された」

対戦した関係者からの評判は悪くない。スペイン人監督ポヤトスが持ち込んだプレーの仕組みは、一定の成果を上げている。つなげることに固執せず、長いボールを蹴るだけでもなく、惰弱になっていた局面での強さもそれなりに見せるようになった。好転しているのは間違いない。

湘南戦の序盤、相手との応酬のなか、ボランチ山本悠樹は何度か好プレーを見せていた。13分、自陣で味方が相手のパスをカットしたあと、山本はすかさずライン間に入った食野亮太郎にパス。食野が相手を押し下げ、石毛秀樹にパスし、その落としたボールをゴール正面に入った山本が右足で狙い、ポストに当てた。連続性とゴールに攻めかかるパワーは抜群だった。

ただ、チームとして試合のなかで波がある。特に守備面では局面で緩慢になるところがあり、相手に対応されると、途端に後手に回った。戦術的な台本に頼っていて、アドリブがきかないと言えばいいだろうか。

ふたりのセンターバックは、湘南のツートップに対し、同数での対処に手を焼くようになる。圧力を受けると前に出られなくなり、ビルドアップどころではなくなった。そこでG大阪のボランチは、バランスを取る戦い方もあったが、前のめりの姿勢を変えていない。結果的に、バックラインと中盤の間のスペースが空くようになった。

【町野修斗も語っていた「脆さ」】

「代表で対戦したコロンビアのディフェンダーは、球際のところで、全力でボールを狩りに来るんですよ。仲間を戻すために、プレーを遅らせるとかは一切ない。そのディフェンスを受けていたので、そこはJリーグでは余裕を感じてできました」(湘南・町野修斗)

G大阪の仕組みは脆かった。

湘南は町野を中心に勢力を盛り返し、優位に立つ。21分、相手のクロスを跳ね返したあと、町野がポストに入ってロングキックを味方に落とす。それで裏に走るだけの、可能性は乏しいカウンター攻撃だったが、出てきたGK谷晃生が一瞬ボールの処理に迷い、クリアミス。これを町野がかっさらい、先制に成功した。

勝てないチームの悪循環で、失点によって想像以上の不安に駆られる。以降は、すべてのプレーが後手に回った。数的な問題もポジション的不利も、修正を施すことができないまま、たて続けに失点を浴びた。

2失点目も、何気ないロングキックから局面の対応でクロスを上げられるまで、3度も敗れている。最後はクリアが味方に当たった不運とも言えるが、当てたほうも当てられたほうも、このレベルではミスと言っていいだろう。五分五分のボールに対し、弱さを見せた結末だ。

3失点目は、すでにミスで動揺していた谷に集約されていた。FKのボールに飛び出しながら、ボールを弾き出せていない。マイナスを取り返したいという逸る気持ちが露骨で、とにかく焦っていた。

ポヤトス監督は、「ふたりのレベルの高いGK(谷と東口順昭)がいることで、お互いがナーバスになっているのでは」という趣旨の質問に対して、「FWが決定機を外すよりも、GKのミスは目が向けられる」と擁護していた。その姿勢は正しいが、ミスのたびにGKを入れ替えていては安定しないだろう。GKはFWと違ってナーバスなポジションで、このままではお互いがプレーを劣化させる悪循環だろう。

4失点目を食らったあとのハーフタイム直前、ようやくポヤトスは鈴木武蔵を下げてイッサム・ジェバリを投入。後半の頭から福岡将太を入れ、3バックに変更し、ネタ・ラヴィをアンカーに入れ、バックラインのスペースを守った。前に対する圧力が増し、後ろの不安が消え、ほぼワンサイドゲームになった。だが、時すでに遅し……。

ポヤトスが志向するサッカーをするには、いくつか致命的なポジションがある。センターバックは、つなぎのところで人材的に苦しい。中盤も攻撃的な性格の選手が多く、後ろでゲームをコントロールできるタイプが見当たらない。前の人材はいるが、いわゆるウイングが不在で、スペイン人指揮官は「代用の食材」で料理をしている格好だ。

「ガンバの流れを変えなければならない」

ポヤトスはそう言うが、彼自身も手探りだろう。指導者キャリアのほとんどをユース年代の監督で過ごし、プロの監督歴は日本に来る直前、ギリシャのクラブを3試合で更迭されただけ。徳島ヴォルティスではチームをJ2へ降格させ、翌シーズンはJ1昇格プレーオフにも持ち込めなかった。

4月9日、ガンバは本拠地で一昨シーズンの覇者である川崎フロンターレと対決する。

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