日本代表の「国内組」に未来はある? 下剋上を狙うJリーガーの決意「僕たち新しい選手がどうやってこじ開けていけるか」

日本が初めてワールドカップに出場した1998年のフランス大会では、22人のメンバーすべてがJリーグでプレーする国内組だった。続く2002年の日韓大会では23人中19人、2006年ドイツ大会は17人、2010年南アフリカ大会は19人と、国内組が主流を占めており、海外組はまだひと握りに過ぎなかった。

【写真・画像】細谷真大、藤田譲瑠チマ…森保ジャパンに呼ばれる次の若手は?パリ五輪を目指すサッカー日本代表選手たち

ところが2014年ブラジル大会では11人と減少し、海外組との比率がついに逆転。2018年ロシア大会はさらに減って8人となり、昨年のカタール大会では登録メンバーが26人に増えたにもかかわらず、国内組は7人に留まった。

しかも7人のなかで権田修一清水エスパルス)、酒井宏樹浦和レッズ)、長友佑都(FC東京)の3人は海外でのプレー経験があり、純粋な国内組と呼べるのは谷口彰悟(川崎フロンターレ/当時)、山根視来(川崎)、町野修斗(湘南ベルマーレ)、相馬勇紀(名古屋グランパス/当時)の4人だけだった。

海外移籍が活発となった2010年以降、国内組が少数派となるのは自然の流れではある。それでもロシア大会では昌子源(鹿島アントラーズ)が奮闘し、カタール大会では谷口のパフォーマンスが国内組に光を当てたことは間違いない。

そして今回、リスタートを切った森保ジャパンの26人のメンバーのうち、国内組はカタール大会と同じ7人。しかしこの2連戦では大迫敬介(サンフレッチェ広島)、谷晃生(ガンバ大阪)のふたりのGKのほか、半田陸(G大阪)と追加招集された藤井陽也(名古屋)には出番は訪れず、ピッチに立ったのは3人のみだった。

そのうちのひとりである西村拓真(横浜F・マリノス)も、ロシアやポルトガルでのプレー経験があるため純粋な国内組とは言えないが、評価を高めたのは昨年、横浜F・マリノスに加入してから。もともとはストライカーだったがトップ下に配置されると、驚異的な運動量と決定力の高さを示し、横浜FMの優勝に大きく貢献している。

【三笘薫をどう生かすか】

昨年7月のE-1選手権で代表経験はあるものの、海外組が揃ったチームに加わるのは今回が初。にもかかわらず、ウルグアイ戦では途中出場直後に同点ゴールを奪い、コロンビア戦ではトップ下として堂々と先発出場を果たした。同ポジションの久保建英(レアル・ソシエダ)の状態が万全ではなかったこともあるが、森保一監督が再び見てみたいと感じたからだろう。

その起用に応えるかのごとく西村は開始3分、自慢の走力を生かして町野のポストプレーに反応し、三笘薫(ブライトン)の先制点のきっかけを作っている。

Jリーグでもトップクラスの走行距離を記録する西村の機動力は攻撃だけではなく、前線からの守備でも効果を発揮する。その献身的なプレーが指揮官に好印象を残したことは間違いない。

カタール大会ではメンバーに選ばれながら出番のなかった町野にとって、スタメン出場を果たしたコロンビア戦は絶好のアピール機会だった。力強いプレーで先制点に絡み、そのほかの場面でも求められるポストプレーをこなすシーンもあった。西村と同様に、前線からのプレスも献身的だった。

だが、シュートは0本に終わり、ストライカーとしてのインパクトは放てなかった。前半のみで交代となり、消化不良に終わった感は否めない。それでも1トップは人材不足のポジションなだけに、Jリーグに戻ってからのパフォーマンス次第では再び招集される可能性は十分あるだろう。

半田や藤井など20代前半の若手が日本代表の空気を味わうだけに終わった一方、同年代のバングーナガンデ佳史扶(FC東京)には十分なチャンスが与えられた。左サイドバックの人材不足が改めて浮き彫りとなった一方で、身体能力に優れる21歳に対する期待感の表れでもあるだろう。

コロンビア戦では左サイドバックとしてスタメンに抜擢され、59分に負傷交代するまでピッチに立った。バングーナガンデに求められたのは、同サイドの三笘をどう生かすかだった。

「高い位置を取ってもらおうと指示を出していた。関係性はよかったと思う」と三笘が振り返ったように、距離感や連係は悪くはなかっただろう。プレースキックを任せられる場面もあるなど、左足のキック精度が高く評価されていることもうかがえた。

【Jリーグの価値を証明すべく】

ただし、豪快な攻め上がりや鋭いクロスなど、自身の持ち味である攻撃性は示せなかった。

「前半から前に押し込んだところで、なかなかチームとしても自分としても、魅力を発揮できなかったのは悔しい」

そう唇をかんだ21歳は「今、肌で感じた強度をチームに持ち帰り、もっと強くなって、次に呼ばれた時にはしっかり結果を出せるよう、今から準備をしていきたい」とリベンジを誓っている。

バングーナガンデだけではなく、西村にしても、町野にしても、今回の経験は代えがたいものとなったはずだ。世界との距離感、あるいは海外でプレーするチームメイトの距離感は、Jリーグではなかなか体感できないからだ。

ワールドカップのメンバーはみんな立場的に確立されている状況のなかで、僕たち新しい選手がどうやってそこをこじ開けていけるか。そういうところは意識しているけど、まだまだ弱いなと。もちろん負けるつもりはないですけど、学ぶところはあるので、そこは吸収していきたい」

ウルグアイ戦後に西村が話していたように、国内組が受けた刺激は計り知れない。

ほかにも、今季のJリーグでは伊藤涼太郎(アルビレックス新潟)をはじめ、活きのいいタレントが頭角を現している。細谷真大(柏レイソル)や藤田譲瑠チマ(横浜FM)などパリ五輪世代も着実に経験を積み、さらにその下の世代の松木玖生(FC東京)や熊田直紀(FC東京)も結果を出し始めている。

同時期にU-22代表やU-20代表の活動もあるため簡単ではないだろうが、彼らに刺激を与えるためにも、あるいはJリーグの価値を証明する意味でも、6月シリーズにはより多くの国内組が招集されることを期待したい。

https://sportiva.shueisha.co.jp/

Share Button