さすがにまずい――心中穏やかでない坂本一彩に絶好機が再来。逃すわけにはいかなかった。待望の一発に復調の兆し【U-20代表】
セットプレー時、いつもと違う場所でスタンバイ
[U-20アジア杯]日本3-0キルギス/3月6日/JARスタジアム
誰よりも欲していたゴールだった。
【動画】どうしても欲しかったゴール…途中出場の坂本一彩、絶好機逸の直後に無我夢中で押し込んだチーム3点目
現地時間3月6日に行なわれたU-20アジアカップのグループステージ2節・キルギス戦。中国との初戦(2-1)で先発メンバーに名を連ねた坂本一彩(岡山)は控えに回り、悔しさを噛み締めながら、今や遅しと出番を待っていた。
ピッチに送り込まれたのは、2-0で迎えた79分。勝負の趨勢が決しつつあるタイミングでの起用だった。
「クマ(熊田直紀/FC東京)が先に点を取っていたので、自分的にはしんどいというか、悔しい気持ちがあった」という想いを抱きながら、ストライカーとして坂本は貪欲にゴールを目ざした。
しかし、簡単に事は進まない。気持ちが入り過ぎるがゆえにプレーからは力みが見られた。最たる例が84分の決定機だ。左サイドでSB髙橋仁胡(バルセロナ)が相手DFを一気に2人外し、最終ラインの背後にスルーパスを通す。ここしかないというコースに正確なボールが供給されると、反応した坂本がCBに競り勝ってGKとの1対1に持ち込んだ。
そして、右足のインサイドでシュートを放つ――。しかし、無常にもポストを叩き、絶好の得点機会を逃してしまった。
「自分の得意な形で、上手く抜け出せたんですけど、最後のところが甘かった」と悔やみ、「さすがにこれはまずい」と焦りの色を隠せない。同じFWの熊田が中国戦の2ゴールに続き、キルギス戦でも目の覚めるようなミドルシュートを決めていた点も踏まえても、心中が穏やかではなかっただろう。
そうした状況下でどうやって巻き返すのか。ストライカーである以上、ゴールという結果でミスを挽回するしかなかった。そのチャンスは思いの外、早く巡ってくる。直後の85分だ。
右CKを得ると、髙橋が質の高いボールを左足で入れる。ニアで松木玖生(FC東京)がすらすと、ファーサイドにいた坂本の前にボールがこぼれてくる。逃すわけにはいかなかった。無我夢中で反応し、右足で難なく流し込んだ。
「今日はセットプレーの時に入るポジションが普段とは違って、いつもはニアでCBの前に入って合わせる。でも本来、自分が得意としているのはファーのポジション。(コーチの船越)優蔵さんがたまたまそこの場所に入るように指示してくれた」
動き出しの良さで決めた今大会初ゴール。「ほっとした」。安堵の表情を浮かべた坂本の一撃が、チームの勝利を決定づける3点目となった。
結果を残した坂本。今季はG大阪から岡山への期限付き移籍を決断し、開幕戦ではスタメンで起用されてゴールをマークした。「カテゴリーは関係なく出場機会を重視していた。U-20のアジアカップとワールドカップがあるのも大きくて、チームで試合に出ていないと呼ばれない」。坂本の言葉からも、U-20代表の活動に懸ける想いが伝わってくる。
だからこそ、結果が必要だった。「FWとして点を積み重ねていくことと、チームとして絶対にワールドカップの出場権を獲得する」と話した坂本の表情に明るさが戻り、「今日みたいなことはないように、決めるようにします!」と言い切った。キルギス戦で復調の兆しを掴んだストライカーの存在は、チームにとって大きな力になるはずだ。