識者5人が選んだJリーグ30年のベストイレブン。「最強助っ人」「史上最高のGK」「歴代随一の打開力」など豪華な顔ぶれ
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識者が選んだJリーグ30年のベストイレブン 後編
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今年のJリーグ30周年にあたって、この30年のベストイレブンを識者5人に選んでもらった。「最強助っ人」「史上最高のGK」「歴代随一の打開力」と評される豪華な顔ぶれが並んだ。なお、外国籍選手の選出は11人中3名までとした。
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【やはりキングを外すことはできない】
浅田真樹(フリーライター)
FW/三浦知良、マルキーニョス MF/ストイコビッチ MF/遠藤保仁、中村憲剛 MF/福西崇史 DF/相馬直樹、中澤佑二、田中マルクス闘莉王、ジョルジーニョ GK/楢﨑正剛
そもそも30年もの歴史のなかから、11人だけを選べというのは土台無理な相談。自分なりに何かしらの”足かせ”をつけないと選手を絞り込むことができない。
そこで、日本人選手に関しては海外移籍をすることなく、生涯Jリーグでプレーし続けた選手だけで限って選ぶことにした。本来なら、中村俊輔、藤田俊哉、高原直泰なども選びたい選手ではあるのだが、あえての選外である。
GKは、圧倒的な出場試合数を誇る楢﨑正剛。両サイドバック(SB)は、鹿島アントラーズの黄金時代に活躍した相馬直樹とジョルジーニョを選んだ。特にジョルジーニョは、Jリーグにやってくること自体驚きだったし、これが世界トップレベルのSBと衝撃を受けた選手だ。
センターバック(CB)は、世界に通用する高さと強さを兼ね備え、日本代表でもコンビを組んでいた田中マルクス闘莉王と中澤佑二。共に所属クラブをJ1優勝に導いていることも、歴代ベスト11の称号にふさわしい。
中盤の底には福西崇史。図抜けた運動能力とサッカーセンスのよさが印象的だったこともあるが、黄金期のジュビロ磐田を代表しての選出という意味も込めている。
左右MFには、ともに40代まで現役でプレーし続けた(し続けている)中村憲剛と遠藤保仁。どちらも、所属クラブがJ1初優勝を成し遂げた時の中心選手という意味でも印象深い”バンディエラ”だ。
トップ下には、技術といい、アイディアといい、何から何まで衝撃的だったピクシーを迷わず選んだ。ジョルジーニョ同様、Jリーグにやってくると知った時は、本当にワクワクしたものだ。
2トップは、J史上唯一の3連覇を鹿島にもたらし、歴代外国人選手のなかで通算最多ゴールを記録しているマルキーニョスと、もうひとりは三浦知良。カズは日本人で初めてセリエAでプレーした選手であり、本当なら選外とすべきところだが、Jリーグの30年史を振り返った時、やはりキングを外すことはできなかった。
【遠藤保仁はJリーグ史上最高のプレーメーカー】
小宮良之(スポーツライター)
FW/三浦知良、大久保嘉人 MF/中村俊輔、イニエスタ MF/小笠原満男、中村憲剛、遠藤保仁 DF/田中マルクス闘莉王、中澤佑二、松田直樹 GK/楢﨑正剛 Jリーグを発展させたか?
その視点でベストイレブンを選出した。所属クラブを主力選手として栄光に導く、あるいは新たな時代を切り開くパフォーマンスがあったか。Jリーグの歴史を動かした選手たちだ。
まず、GKは楢﨑正剛で決まりだろう。2010年に名古屋グランパスに優勝をもたらし、GKとして初めてJリーグ最優秀選手に選出された。ベストイレブン選出も6回。総合的ゴールキーピングの高さは、今も多くのGKが手本にするところだ。
DFでは、松田直樹は外せない。横浜FMの連覇に貢献し、型破りでダイナミックなディフェンスで一時代を作った。キャラクターが強い選手で、言動が荒々しいのに愛嬌があり、多くのファンに愛されている。
中澤佑二も松田とともに横浜FMを優勝に導き、2004年にはJリーグ最優秀選手賞を受賞。その後も力強く実直な守備と豪快なヘディングで、一つのモデルを作った。また、田中マルクス闘莉王は浦和レッズでJリーグ、天皇杯、ゼロックス、ACLなどタイトルを総なめ、名古屋でもJ1優勝を果たし、超攻撃的ディフェンダーとして一世を風靡した。
中村憲剛は川崎フロンターレ一筋で、スペクタクルなサッカーで頂点に立ち、語り継がれるべき伝説と言えるだろう。鹿島アントラーズの小笠原満男も、イタリア挑戦はあったが、それに近い。いわゆる勝たせるボランチで、常勝軍団の中心にあった。
遠藤保仁は主にガンバ大阪での栄光が際立ち、プレーメーカーとしてはJリーグ史上最高の日本人選手と言えるだろう。中村俊輔もセルティックなど欧州挑戦時代を挟み、マリノスで2度のJリーグ最優秀選手に輝いている。アンドレス・イニエスタはJリーグ歴代最高の外国人で、改めてサッカー伝道師となった。
大久保嘉人はJリーグ歴代最多得点や3年連続得点王など数字も驚くべきだが、記憶に残るストライカーだった。破天荒なイメージは強い一方、プレーインテリジェンスに優れたFWで、他の追随を許さない。カズは黎明期のJリーグで果たした役割は計り知れない。30年の歴史を作った”生ける伝説”だ。
当然、ほかにもすばらしい選手は大勢いる。個人的にはGK南雄太、DF小林祐三、鈴木大輔、MF橋本拳人、大谷秀和、齋藤学、水沼宏太、山田大記、FW福田健二、豊田陽平、工藤壮人などがJリーグで追い続けて飛躍した選手で、「もう一つのベストイレブン」である。
30周年、その人なりのJリーグベストイレブンもあるはずだ。
【闘莉王はこの30年を語るうえで欠かせない】
中山 淳(サッカージャーナリスト)
FW/マルキーニョス、中山雅史、大久保嘉人 MF/三浦知良、中村俊輔 MF/遠藤保仁、小笠原満男 DF/中澤佑二、阿部勇樹、田中マルクス闘莉王 GK/楢﨑正剛
中田英寿や小野伸二など日本を代表する選手を選出したい気持ちもあったが、今回はあくまでもJリーグにおける過去の実績や印象度をベースに選んでみた。
まずFW陣は、中山雅史、大久保嘉人、マルキーニョスの3人をチョイス。中山は、ギネスブックにも登録された4試合連続ハットトリックを含め、計157得点を記録したリーグ初期を代表するストライカーで、大久保は計191得点を記録して通算最多得点記録保持者。この2人については問答無用だろう。
マルキーニョスは、東京ヴェルディ、横浜F・マリノス、ジェフユナイテッド市原、清水エスパルス、鹿島アントラーズ、ベガルタ仙台、ヴィッセル神戸と、足掛け15年にわたって7チームで活躍し、J1通算333試合、152得点(外国籍選手最多)。特に鹿島では3連覇に大きく貢献するなど、歴代最強助っ人として選出しておきたい。
カズは本来FWだが、もはやポジションに関係なくベスト11に選出すべき絶対的存在で、Jリーグの歴史の一部であり、最大の功労者でもある。8シーズンにわたってヨーロッパでプレーした中村俊輔は、帰国後も含めたマリノス時代のインパクトが強いうえ、代名詞の直接FKの得点数もリーグ最多。ベスト11に選ばない理由が見当たらない。
ボランチでは、今も現役を続けるJ1最多出場記録(672試合)を持つ遠藤保仁は文句なし。相棒には、鹿島のレジェンド小笠原満男を選出。メッシーナ(イタリア)でプレーした1シーズンを除き、数々のタイトル獲得に貢献した鹿島一筋20年の名MFを選出した。
DFは、中澤佑二、阿部勇樹、田中マルクス闘莉王。中澤はフィールドプレーヤーとしてトップの178試合連続フル出場を記録した名DFで、J1通算出場試合数は593。同じく通算590試合に出場した阿部も、中澤に負けず劣らずの実績を残し、浦和レッズでは闘莉王とともにタイトル獲得にも貢献。
闘莉王は、通算75得点を記録した得点力の高いDF。名古屋グランパスでもリーグ初優勝に貢献するなど、この30年のJリーグを語るうえで欠かせないインパクトプレーヤーと言える。
そして守護神は、歴代2位の631試合に出場した楢﨑正剛。彼をおいて他にいない。
【大久保嘉人の3年連続得点王は随一の実績】
原山裕平(スポーツライター)
FW/三浦知良、中山雅史、大久保嘉人 MF/中村俊輔、ストイコビッチ MF/ドゥンガ、遠藤保仁 DF/中澤佑二、田中マルクス闘莉王、ペレイラ GK/楢﨑正剛
30年の歴史のなかでたった11人しか選べないのは至難の業だったが、チームに対する貢献度、印象度、稼働率などを踏まえて歴代ベストイレブンを選出した。
GKは、このポジションで唯一のMVP受賞者である楢﨑正剛で決まりだろう。若くしてポジションを掴み、42歳まで現役を続けた名古屋グランパスの守護神が、Jリーグ史上最高のGKであることは間違いない。
最終ラインの3人も、いずれもMVPを受賞している。中澤佑二は当時、堅守を誇った横浜F・マリノスの象徴で、田中マルクス闘莉王は規格外のプレーで浦和レッズの初優勝の立役者となった。ペレイラはスター軍団のヴェルディ川崎において、その質実剛健なプレーで安定を担保した。
2ボランチはJ1リーグ歴代最多出場記録保持者であり、日本サッカー史上最高のパサーである遠藤保仁は外せない。そのパートナー選びは難儀したが、ジュビロ磐田の黄金時代の礎を築いた当時現役セレソンの”闘将”の存在感は別格だった。
攻撃的MFには昨季限りで惜しまれつつ引退した中村俊輔と、日本に世界レベルを教示したドラガン・ストイコビッチを選出。前者は魔法のような左足を武器に2度のMVPに輝き、後者は超絶技巧で観る者を魅了。多くのファンに愛された”ピクシー”は、歴代最高の外国籍選手と言っても差し支えないだろう。
多士済々のFWは選択肢が多かったが、その活躍もさることながらインパクトを考慮。黎明期を彩ったカズはJリーグの存在を世に知らしめた張本人であり、中山雅史は4試合連続ハットトリックと超人的なパフォーマンスを披露。
J1歴代最多得点者である大久保嘉人は、前人未到の3年連続得点王に輝くなど随一の実績を誇るのはもちろん、その気性の荒さから何度も退場となるなど、”ヒール”としての印象も強い。良くも悪くも、話題を提供してくれるプレーヤーだった。
【三笘薫は歴代随一の打開力】
篠 幸彦(スポーツライター)
FW/大久保嘉人 MF/三笘薫、イニエスタ、家長昭博 MF/中村憲剛、遠藤保仁 DF/登里享平、田中マルクス闘莉王、中澤佑二、山根視来 GK/楢﨑正剛
前提としてジュビロ磐田や鹿島アントラーズ、横浜F・マリノスなど、偉大なチャンピオンチームが数あるなかで、直近6季で4度の王者となった川崎フロンターレを歴代もっとも完成度が高いチームと評価している。
GKはベストイレブン最多選出で、GKで唯一MVPを受賞した楢﨑正剛。高い技術とミスの少なさはもちろんのこと、最後の砦としての存在感は歴代のなかでも傑出していた。
右SBには内田篤人や駒野友一、酒井宏樹などと悩んだ末に山根視来を選出。高水準の能力に加え、ライン際だけでなく、インサイドやFWを追い越しての攻撃センスは際立っている。
左SBは相馬直樹、長友佑都という代表する2人がいるなかで登里享平を挙げる。Jでの実績は両者に引けを取らず、多彩な攻撃センスはより非凡である。
CBには中澤佑二と田中マルクス闘莉王を選出。日本代表の名コンビは各々のクラブでも高い能力と存在感を発揮し、ベストイレブンに幾多も選出されてきた。谷口彰悟、ジェジエウを2人に追随するコンビとして挙げたい。
候補選手が多く、悩んだボランチには遠藤保仁と中村憲剛を選出。ほぼ同列に小笠原満男を挙げる。チーム全体に与える影響力が絶大であり、王者の顔と言える存在だった。
右ウイングには家長昭博。突破力やクロスに優れた選手は数多いるなかで、彼ほどゲームの流れをコントロールし、変えられる選手はほかにいなかった。
左ウイングの三笘薫はJ在籍2年半だが、間違いなく歴代で随一の打開力だった。相手が止める術を見いだせぬまま海外へと渡り、世界最高峰の舞台でもJで見せたプレーをそのまま披露している。
トップ下は挙げればキリがないほど偉大な選手たちが名を連ねるなかで、アンドレス・イニエスタを選出。ボールテクニック、創造性、居るだけでピッチ全体に与える影響力など、あらゆる面で次元の違う存在だ。
FWは大久保嘉人。30年の歴史で唯一となる3季連続の得点王は、ストライカーとしてもっとも評価されるべき偉業である。



