北川信行の蹴球ノート Jリーグが45都道府県でサッカー応援番組…地上波放送で人気向上目指す
サッカーの普及促進につなげるため、Jリーグが今年4月から、全国30地域の民放地上波放送局と連携し、45都道府県でサッカー応援番組の放映を始める。番組のタイトルも「日本サッカーの未来に向けたキックオフ」との意味を込めて「KICK OFF! ●●」(●●は原則として地域名)で統一。各テレビ局の系列の枠組みを超えて同タイトル同コンセプトでオリジナル番組を制作する初めての取り組みとして注目される。
それぞれの地域で輝くために
1993年にリーグ戦が始まったJリーグは今年、30周年の節目を迎える。右肩上がりで増えてきたクラブ数もJ1からJ3まであわせて計60クラブに到達。昨年に6代目チェアマンに就任した野々村芳和氏の下で構造改革に取り組むとともに、昨年11月に「60クラブが、それぞれの地域で輝く」「トップ層が、ナショナル(グローバル)コンテンツとして輝く」の2項目を柱とした新たな成長戦略を発表した。
民放地上波放送局でのサッカー応援番組の放映も「60クラブが、それぞれの地域で輝く」との成長戦略実現に向けた第一歩の位置づけ。30地域のうち、昨年10月から福島、富山、愛媛、熊本、鹿児島の5地域で試験的に始め、一定の手応えを得たことから全国展開することになった。
選手の人となりや地域のサッカー情報も
5地域で先行放映している応援番組の放送時間は一回あたり10~15分で、いずれも毎週土曜日か日曜日の午前中に放映。Jリーグ全体の試合の振り返りやゴール集といった構成ではなく、地域のJリーグチームに所属する選手の人となりや草の根的な活動の紹介のほか、少年少女年代や高齢者のサッカーの情報なども幅広く取り上げている。
各地域でサッカーをしている子供たちや、これからもっとサッカーに興味を持ってもらいたい人がターゲット。いわゆるライト層に地域のJリーグチームやサッカーをより身近に感じてもらうことが狙いだ。
ただ、Jリーグの担当者によると、番組は全地域画一的ではなく、それぞれの地域、放送局の独自性を尊重しており、取り上げる内容も地域によって異なっているという。
「関東」と「関西」の番組づくりは工夫が必要
4月から新たに放送が始まる25地域の番組も同様で、各地域のニーズに応じた内容になる予定。放送時間は15~30分を見込んでいる。
あえて課題を挙げるとすれば、問題となりそうなのは、1つの地域に複数のJリーグチームがあるケースだ。特に「関東」と「関西」の2地域は放送エリアがいくつかの都道府県にまたがる広域となる半面、抱えるチーム数も多く、番組づくりに工夫が求められる。
日曜深夜放送のスポーツ番組『S☆1』内に新コーナーを設立するTBSの『KICK OFF! J』では、①鹿島アントラーズ②水戸ホーリーホック③栃木SC④ザスパクサツ群馬⑤浦和レッズ⑥大宮アルディージャ⑦ジェフユナイテッド千葉⑧柏レイソル⑨FC東京⑩東京ヴェルディ⑪FC町田ゼルビア⑫川崎フロンターレ⑬横浜F・マリノス⑭横浜FC⑮Y.S.C.C.横浜⑯湘南ベルマーレ⑰SC相模原-の17チームの情報を扱う。
毎日放送の『KICK OFF! KANSAI』は①京都サンガ②ガンバ大阪③セレッソ大阪④FC大阪⑤ヴィッセル神戸⑥奈良クラブ-の6チームが対象となっている。このほか、静岡第一テレビの『KICK OFF! SHIZUOKA』は静岡県のみの放映エリアながら、①清水エスパルス②ジュビロ磐田③藤枝MYFC④アスルクラロ沼津-の4チームを受け持っている。
各番組の詳細は未定だが、仮に同じ30分番組として、1県の放送エリアで1チームを扱うのと、広域の放送エリアで多くのチームを取り上げなければならないのとでは、1チームあたりに割ける時間も変わってくる。その場合、J1、J2、J3といったカテゴリーに関係なく全チームを同列に扱うのか、それとも差別化を図るのか…。担当する放送局がどんな番組づくりをするか注目される。



