なぜDF半田陸はG大阪を選んだのか ローマ移籍もうわさのパリ五輪世代が見据える未来図

今季G大阪に加入したU―21日本代表DF半田陸(21)は、なぜJ1で低迷するG大阪での新たな挑戦を選んだのか。J2山形の下部組織からトップチームに昇格し、パリ五輪世代でも右サイドバック(SB)として主力を担う逸材には、イタリア1部・ローマからの興味などさまざまなうわさが飛び交った。沖縄キャンプ中に行ったインタビューを通じ、次世代の日本代表候補にも挙げられる若きサイドバックの思いに迫った。(取材・構成=金川誉)

沖縄キャンプ中の1月20日、半田は夕食後に宿舎でのインタビューに応じた。「よろしくお願いします。半田陸です」という丁寧な自己紹介から取材はスタート。始動から約2週間が経過した中で「少しずつ慣れてきました」という21歳は、G大阪加入の理由を一つずつ、自身の言葉で明かした。

「やっぱり(獲得への意志を)熱心に伝えてくださって、ポヤトス監督とも話してG大阪に行ったら成長できるんじゃないか、と強く感じました。G大阪の選手は個人のレベルが高いので、そういうところに飛び込まないといけないな、ということで移籍を決断しました。山形でずっと育ってきて、J1昇格は目標でした。そこは、今回もすごく悩んだところです。でも昇格だけが僕が(山形に)できる恩返しというわけじゃない。G大阪で、さらにその先でも活躍することでも恩返しできるのかな、と思いました」

山形では高校2年でトップチームに昇格し、すでにJ2では4シーズンで計92試合に出場。昨季は日本プロサッカー選手会(JPFA)が選出する「JPFAアワード2022」で、選手投票によりJ2のベストイレブンにも選ばれた。当然、その力を評価したG大阪からオファーを受けたわけだが、加入前にポヤトス監督と行った面談では弱点も指摘されたという。

「いいところだけじゃなくて、もっと良くしていかなきゃいけないところも伝えて下さいました。ビルドアップで遠くや中(中央)を見るところはもっともっと伸ばさないといけない、と言われました。(山形時代は)アタッキングサードでのプレーを言われることが多かったんですけど、ダニ(ポヤトス監督)は後ろでの作りも大事にしているので、中を見ろっていうことは(練習でも)より多く言われています」

体の強さを生かしたダイナミックなプレーや、深いタックルなどの対人能力が売りだが、今季ポヤトス監督が目指す「試合を支配する」スタイルの中では、SBにもビルドアップでの貢献が求められる。より繊細な部分の向上が、次なる成長へとつながると感じ取っていた。山形では3バックの一角やウイングバックでのプレー経験もあるプレースタイルは、小学校1年生でサッカーを始めたころから、複数ポジションをこなす中で培われたという。

「中学3年生までは、いろんなポジションをやっていました。メーンのポジション? そうですね…センターバック(CB)が多かった、のかな。サイドバック、ボランチ、FWとかもやっていましたし。中1の時にはけが人やトレセンでGKがいなかった時に、試合で1回だけやりました。中3になって、CBをすることがやっと多くなっていった、という感じです」

山形ジュニアユースの時代からユースの練習に参加し、ユースではCB、SBがメーンに。トップチームでは21年シーズンの冒頭に「SBで勝負したい」という思いをクラブにも伝えた。現在は日本代表DF酒井宏樹(32)=浦和=のスタイルを理想に挙げ、SBとしてさらなる成長を見据える。

「やっぱり自分の特徴を生かせるのがSBだと思いました。身長は176(センチ)ぐらいしかないので、(CBで)上を目指すにはやっぱり限界があるんじゃないかと。将来、海外でやりたいというのはずっと思っているので。酒井選手は日本代表の試合を見ていても、すごく安心感がある。あそこは大丈夫だろう、という感じなので。まずは守備を安定させて、というスタイルが理想です」

半田と言えば、オフにはモウリーニョ監督が率いるローマが興味を示したという海外報道もあった。しかし、本人の耳に具体的な話は届いておらず「なんで騒いでいるんだろう」と首をひねっていたというが、海外クラブからも注目を集める存在であることは確かだ。一方で昨夏、今冬とオファーが届いたG大阪は、昨季は残留争いに巻き込まれた。クラブが低迷している現実を受け、移籍を迷うことはなかったのか聞くと、濁すような言葉はなく、はっきりとした答えが返ってきた。

「一切なかったです。G大阪にはもともと能力のある選手がたくさんいるという印象で。個人技があるので、立ち位置とかを気にしなくても(相手を)はがせちゃう選手が多いと思うんですけど、スペイン人の監督がきて、それが整備できたらもっと能力を発揮できる、と思いました。(パリ五輪世代のMF山本)理仁にもどんな雰囲気なのかは聞きました。優しい選手が多い、施設もすごくいい、と聞いて、ネガティブな感情はなかったです。ここでまずは出番をつかんで、チームの勝利に貢献する。その上でパリ五輪に出場して、さらにその先も目指したいと思っています」

自身の性格については「人見知り。あとはマイペース。一人でいることが多いですかね」と笑ったが、確かな芯の強さも感じさせた21歳。新天地での活躍がパリ五輪、さらにその先の世界での飛躍につながると信じ、新たなユニフォームでJ1の舞台に立つ。

半田 陸(はんだ・りく)2002年1月1日、山形県出身。小学校1年からサッカーをはじめ、同郷の元山形MF秋葉勝にあこがれてプロを志す。山形ジュニアユース、ユースを経て19年3月に高校2年でプロ契約。U―15日本代表から各年代の世代別代表にも選出。176センチ、63キロ。右利き。

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