J1各チームの今季戦力はアップorダウン? データから導き出す“最新戦力値”
【識者コラム】「守備力と攻撃力」、加入選手と退団選手の昨季成績から戦力を分析
今年の各Jクラブの補強ははたして成功しているのか。「今年獲得した選手はどれくらい期待できるのか」「今年はたくさん放出したけれど大丈夫だろうか」という、なんとなくモヤモヤした気持ちを定量的に解決すべく、2022年の実績で表してみた。
【毎日更新】Jリーグ「退団・戦力外選手&新加入選手」2023シーズン データとして使うのは、「(1)2022年のチームの守備力、攻撃力はそれぞれ何位だったのか」「(2)今季移籍してきた選手は2022年にどういう成績を残していたか」「(3)昨季いっぱいで移籍して出ていった選手は2022年にどういう成績を残していたのか」という点だ。
守備力(失点数)が低くかった(多かった)場合、GK+DFの補強(獲得した選手と移籍していった選手の差)はどうなっているか、攻撃力(得点数)が高かった(多かった)場合はMF+FWの補強はどうなっているかを調べている。
もちろん、守備が安定することで攻撃力が増す場合もあるし、攻撃力が上がれば守備の時間を減らすことができる。去年の成績を踏まえてクラブはチームのどこを伸ばし、問題を解決しようとしているかも、この数値で測ることができるだろう。
もちろん数値は指標の1つであり、未来を保障するものではない。1つの角度から現状を捉えて見るのにはいいのではないだろうか。
なお、新卒とJリーグ以外からの新加入の選手は去年のデータがないので未知数となる。(2)と(3)の数字は去年の実績から見た戦力補強の内容で、それに、この未知数の選手たちがどれくらいプラスしてくれるか、あるいはマイナス分を補ってくれるのかが今年の成績に直結しそうだ。
使用したデータは1月30日付けのJリーグ公式サイトのデータ。今回は新潟から鳥栖までをお送りする。
ユンカー補強の名古屋はさらなる補強が必要か
【新潟】
2022年度守備:J2 1位
加入GK+DF:0試合・0分・0点(+J2:38試合・3053分・2点)
移籍GK+DF:0試合・0分・0点
2022年度攻撃:J2 1位
加入MF+FW:0試合・0分・0点(+J2:40試合・3119分・11点)
移籍MF+FW:0試合・0分・0点(+J2:36試合・1171分・5点)
新外国籍選手を除いて攻守に大幅な戦力の増減はなさそうだ。J2を圧倒的な成績で制した新潟のサッカーはJ1でも十分に通用するという読みもあるだろうが、獲得人数が少なめなのは今後の補強に余力を残しているようにも見える。
【名古屋】
2022年度守備:1位
加入GK+DF:25試合・1704分・1点
移籍GK+DF:50試合・2210分・0点
2022年度攻撃:16位
加入MF+FW:78試合・4422分・8点(+J2:52試合・3747分・1点)
移籍MF+FW:150試合・8536分・6点
去年の名古屋は攻守において特徴がハッキリしていた。守備に関しては目処がついて今年は攻撃のテコ入れか、と思われたとおり、キャスパー・ユンカーという大きな柱を一本獲得している。たださらなる攻撃力は必要なはずで、シーズン中も目が離せそうにない。
【京都】
2022年度守備:3位
加入GK+DF:0試合・0分・0点(+J2:80試合・6981分・2点)
移籍GK+DF:77試合・5160分・2点
2022年度攻撃:16位
加入MF+FW:0試合・0分・0点(+J2:140試合・9563分・29点)
移籍MF+FW:70試合・4114分・14点
J2のリサーチ力に自信があるようで、J2からの補強で不足した戦力を補うという方針がハッキリしている。リーグの違いを考えずに数値的に見れば、去年の守備力はそのままに攻撃力のテコ入れを図ったということになりそうだ。
【G大阪】
2022年度守備:15位
加入GK+DF:31試合・2790分・0点(+J2:86試合・7203分・1点)
移籍GK+DF:26試合・2194分・0点
2022年度攻撃:13位
加入MF+FW:0試合・0分・0点(+J2:42試合・3365分・9点)
移籍MF+FW:133試合・7427分・16点
去年は攻守ともに苦戦を強いられた。守備に関してはJ2からの即戦力の補強で強化することはできたかもしれない。問題は攻撃の戦力が補えたのかどうか。守備を強化することで攻撃を支えようとしているのかとも推測できるが……。
【C大阪】
2022年度守備:7位
加入GK+DF:0試合・0分・0点
移籍GK+DF:5試合・384分・0点
2022年度攻撃:6位
加入MF+FW:62試合・3272分・15点(+J2:30試合・1905分・10点)
移籍MF+FW:90試合・3733分・17点
去年は攻守のバランスが取れていた。そのぶんさらに上位を狙うためにはどこを補強するのかクラブの方針が注目されたが、全体の戦力を手堅くまとめたと言えるだろう。あとは戦術の熟成だけか。
神戸は上積みが少ないように見えるが、保有している戦力は十分
【神戸】
2022年度守備:8位
加入GK+DF:15試合・620分・0点
移籍GK+DF:62試合・4557分・1点
2022年度攻撃:12位
加入MF+FW:54試合・2724分・7点(+J2:7試合・400分・0点)
移籍MF+FW:72試合・2700分・3点
かつての大型補強のイメージから戦力を整える方向に変わっている。移籍して足りなくなった分の戦力を補強したと言えるだろう。上積みはないように見えるが、それでも元々保有する戦力が充実しているので問題はないということだろう。
【広島】
2022年度守備:8位
加入GK+DF:33試合・2782分・0点(+J2:33試合・2891分・0点)
移籍GK+DF:30試合・1826分・1点
2022年度攻撃:3位
加入MF+FW:0試合・0分・0点(+J2:64試合・4890分・12点)
移籍MF+FW:47試合・2987分・1点
長年にわたってビジョンがハッキリしていないとできない補強で、攻守ともに出入りの人数も少なく大きなマイナスもない。広島の手堅い戦力調整は今年も健在。それでしっかり上位に食い込んでいくところが凄さと言えるだろう。
【福岡】
2022年度守備:3位
加入GK+DF:0試合・0分・0点(+J2:35試合・2536分・2点、+J3:20試合・1800分・0点)
移籍GK+DF:40試合・3066分・0点
2022年度攻撃:18位
加入MF+FW:30試合・1119分・2点(+J2:40試合・2440分・13点)
移籍MF+FW:82試合・4040分・9点
去年の福岡は守備力が際立っていた一方、攻撃面では苦労した。その攻守で抜かれた戦力をJ2、J3からの補強でまかなおうとしている。数字上では苦しくなると予想されるが、現在のところ獲得した人数が少ないので補強の余力はありそうだ。
【鳥栖】
2022年度守備:13位
加入GK+DF:0試合・0分・0点(+J2:1試合・57分・0点、+J3:34試合・3060分・0点)
移籍GK+DF:34試合・2732分・2点
2022年度攻撃:8位
加入MF+FW:7試合・61分・0点(+J2:85試合・6085分・12点、+J3:29試合・2133分・11点) 移籍MF+FW:98試合・5580分・15点
今年も大幅に選手が入れ代わった。攻撃面は数字上で見ると大きなマイナスになりそうだし、去年は守備面での不安もあった。だがこれまで何度も大量入れ替えを行い、それでもチームを整えてきた鳥栖の伝統は侮れそうにない。
ということでJ1を見渡すと、数字上はいい選手補強ができたと言えるのは、鹿島、柏、C大阪、広島ということになりそうだ。はたして今回の数値が2023年の成績とどこまで相関関係を持つのか、いずれはその分析も行ってみるが、今は開幕前のワクワク・ハラハラを楽しんでいただければと思う。
[著者プロフィール]
森雅史(もり・まさふみ)/佐賀県出身。週刊専門誌を皮切りにサッカーを専門分野として数多くの雑誌・書籍に携わる。ロングスパンの丁寧な取材とインタビューを得意とし、取材対象も選手やチームスタッフにとどまらず幅広くカバー。2009年に本格的に独立し、11年には朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)の平壌で開催された日本代表戦を取材した。「日本蹴球合同会社」の代表を務め、「みんなのごはん」「J論プレミアム」などで連載中。



