「あそこは俺のコース」強気発言も連発、堂安律24歳がそれでも「メンタル強くない」と語る理由「壁に当たった時、唯一の救いは…」
ワールドカップで勝ち上がっていくには、進撃のシンボルとなるようなヒーローが必要だ。
【衝撃画像】「得点を指で予告?」堂安は人差し指を立てながらスペイン戦同点ゴールを決めていた! 宣言通り得点を決めてみせた日本の背番号8、17歳秘蔵フォトとあわせて見る
2002年の日韓W杯では稲本潤一が2ゴールを挙げて活躍し、「ワンダーボーイ」と言われた。2010年の南アフリカW杯では本田圭佑がカメルーン戦で決勝ゴールを挙げ、ヒーローになった。2018年ロシアW杯では乾貴士や大迫勇也が躍動した。
そして、カタールW杯では、堂安律がその座に就きそうな勢いである。
「代表の中心になってW杯に行き、ビッグクラブでプレーする」
ガンバ大阪時代、語っていた未来図だ。
紆余曲折があったにせよ、堂安は今回、それを半分、実現した。
ただのごっつぁんだろって、うるせえなと思っていた
今の日本代表には比較的おとなしい選手が多いが、そのなかで堂安はプレーだけではなく、語られる言葉でも尖った言葉で際立っている。
ドイツ戦でのゴールは、「俺しかいない。俺が決めるんだ」と決めたという。勝って日本を盛り上げたことについては、「サッカー選手だけど、エンターテイナー」と涼しい表情で語る。
スペイン戦でのゴールは、「ドイツ戦で得点はしたけど、ただのごっつぁんだろっていう人もいたし、うるせえなと思っていた」と語り、ゴールについては「もうあそこは俺のコースなのであそこでもてば、絶対打ってやると決めていたので思い切って打ちました」と、振り返った。
ゴールに貪欲なマインドは、ちょっと日本人と異なるかもしれない。その思考は、外国人のFWに似て、「自分が決める」という意識で一切ブレていない。実際、スペイン戦のゴールは、ボールを受ける前からシュートのイメージを持っていたせいか、シュートまでの流れに迷いも躊躇も一切なかった。その思い切りと判断の良さがあったからこそ決まったともいえる。
先輩に好かれる「図太い」堂安
ギラギラした感じを出しているがゆえに、そういったタイプが苦手な選手から敬遠もされそうだが、「図太い性格」と自ら語るように、周囲の見方や評価にはこれっぽっちも響かない。プレーではグイグイと進み、失敗を恐れずに挑戦する。
そういうプレーと性格のせいか、先輩たちにはむしろ好かれている。W杯前、赤髪に染めた長友佑都と同じタイミングで堂安も金髪に染めたが、ふたりで話をしている際、「律、いつ決めるんだ」と言われていたようで、ドイツ戦で決めた際は、長友がすごく喜んでくれたという。
また、「食事会場では多くのことを吸収できる吉田(麻也)さん、長友さんと一緒にいます」と語るように、先輩たちと一緒にいることが多いが、そこからは何かを少しでも学びたいという意欲が見える。
ポジティブ思考を本人が解説
性格は極めて、ポジティブだ。
「壁に当たった時、唯一の救いは勘違いすること。ワールドカップで点を取ると思っていたし、絶不調で先が見えない中でも勝手にプレーをイメージしていた。そのおかげでトレーニングをつづけることができた。この性格に感謝です」
強気、貪欲、ポジティブの3拍子が揃った「怪物くん」的な堂安だが、「メンタルが強くない」というのは、ちょっとらしくない。だが、よくよく聞いてみると、どうもメンタルの捉え方が他人と違う。
「逆境が来た時、それを跳ね返せる人がメンタルが強いっていうならメンタルが強い人はたくさんいるし、自分もそうかなと思うけど、最初から何も恐れずに立ち向かえる人はいないと思う。そういう意味で自分はメンタルが強くないと思っています」
僕はメンタルは強くないですけど、自分のことを信じています
大舞台での試合を始め、何かに初めて挑戦する際、それまで何もせず、何も経験していない人が不安をまったく感じずに臨めることはほとんどないだろう。だが、何かしら自信のベースとなるものが得られていれば、自信を持ってピッチに立てる。堂安が自信を持ってピッチに立っているのは、メンタルというよりも自分の経験という裏付けによって実現できていることだ。
「僕は、メンタルは強くないですけど、自分のことを信じていますし、自分のやるべきことを最後までやり通すという強い気持ちがあります。そうして今までやってきたことがすべてピッチに出ると思うんで、ドイツ戦では何の迷いもなく、ピッチに立てました」
こんなにつらい経験を乗り越えたやつはいないだろう
その自信のベースとなるのは、「人よりもやった」という練習量や辛いことを乗り越えた経験だ。2019年にPSVに移籍し、同年アジアカップ決勝でカタールに負けた後、ビーレフェルトに移籍するまでの2年間、どんなサッカーをしていたのか分からなくなり、自信を失った。そういう時を越えてPSVに戻り、今年フライブルクでフォームを完全に取り戻した。
「ロシアW杯以降に代表に呼んでもらいましたけど、この4年間、この瞬間のためにトレーニングを積んできたし、人よりもつらい経験をして、3月には代表から落選したり、苦しい思いをしながらも乗り越えてきた。こんなにつらい経験を乗り越えたやつはいないだろうということが最後には、自信へと変わったんです」
優勝という目標をやっと皆さんが信じてくれるんじゃないかと思う
苦しんだ末に掴んだ代表の座。そして乗り込んだカタールの地で、堂安は3試合で2ゴールを決め、ベスト16進出に大きく貢献した。ドイツ戦、スペイン戦ともに同点弾を決め、日本に勢いをつけたという点では、ゴールプラスアルファで高く評価されてもいいだろう。あと3点とれば、W杯で通算最多得点の本田圭佑の記録を塗り替えるが、「そこは越えたい」と語る。
チームの目標はベスト8進出だが、堂安のターゲットは、そこよりもはるか上だ。
「このグループを突破すれば僕が大会前に言っていた優勝というのをみなさんが信じてくれると思っていた。僕は冗談抜きで優勝を目指している。やっとそれを皆さんが信じてくれるんじゃないかと思う」
W杯で優勝を目指し、活躍してビッグクラブでプレーするという野心は、プレーヤーなら誰もが持っているが、それを堂安は夢として強く持ち、公言し続けてきた。次の相手クロアチアを打ち破れば、堂安がガンバ時代から描いていた夢の残り半分を実現する可能性も一気に膨らんでいく。



