因縁あるロナウドが韓国の大金星を“背中”でアシストも監督批判を疑われた交代時の激怒が新たな“遺恨”呼ぶ?!
FIFAワールドカップ・カタール大会のグループH最終戦が2日行われ、韓国代表がポルトガル代表を2-1で倒す“番狂わせ“で決勝トーナメント進出を決めた。ウルグアイ代表もガーナ代表に2-0で勝ち、韓国、ウルグアイの両チームは勝ち点4、得失点差で並んだが韓国が総得点で上回った。韓国は開始早々に先制されたが、前半27分にCKからゴール前に入ったボールがクリスティアーノ・ロナウド(37)の背中に当たり、そのこぼれ球をキム・ヨングォン(32、蔚山)が同点ゴール。後半アディショナルタイムにエースのソン・フンミン(30、トッテナム)の絶妙の股抜きパスに反応した途中出場のファン・ヒチャン(26、ウォルバーハンプトン)が勝ち越しゴールを決めて勝利が絶対条件の崖っぷちの状況で3大会ぶり3度目の16強進出を決めた。
3年前にロナウドがユベントスの一員として参加したソウルでの親善試合のピッチに立たずファンが激怒するという因縁の残っていた韓国にとっては、溜飲を下げる結果となったが、試合後、新たな“遺恨”に発展する“事件”が起きていたことが判明した。
同点ゴールはロナウドに背中に当たったこぼれ球から生まれた
東亜日報やスポーツ朝鮮など韓国の主要メディアに「ドーハの奇跡」という活字が躍った。それもそうだろう。1-1で迎えた後半のアディショナルタイム1分に、エースのソン・フンミンがドリブルでペナルティエリアの前までボールを運び、3人のディフェンダーに囲まれながらも、神技の股抜きのラストパスをゴール前に送り、ハムストリングスの怪我で、ここまで出場のなかった途中出場のファン・ヒチャンが、まさに奇跡の逆転ゴールを決めたのだ。引き分けでもグループステージ敗退。しかも2-0でガーナに勝っていたウルグアイが、あと1点でも加えれば負けるという崖っぷちの状況で、総得点でウルグアイを上回り決勝トーナメント進出を決めたのである。
韓国にとって、もう一人感謝せねばならない因縁の相手がいた。出場回避も噂されながら先発出場したスーパースターのC・ロナウドである。
1点ビハインドで迎えた前半27分。コーナーキックを得た韓国は、ゴール前へハイボールを送った。チョ・ギュソンがジャンプ一番、ヘッドを合わせようとしたがスルー。そのボールがなんと後ろを向いていたロナウドの背中に当たり、そのバウンドしたボールをFC東京、大宮、ガンバ大阪でプレーしたことがあるキム・ヨングォンがスライディングシュートで押し込み、同点ゴールを決めたのだ。まさかのロナウドの”背中アシスト”である。
韓国のスポーツ朝鮮や東亜日報などのメディアは、「“ノーショー”を忘れていない韓国ファン…ロナウドがボールを持つたびに“メッシ”と叫ぶ」、「ロナウドの背中にヒットしてキム・ヨングォンが同点に追いつく。海外メディアは“ロナウドがアシスト“と語った」などの見出しを取ってロナウドとの因縁を記事にして伝えた。
「ノーショー」とは、2019年の夏に、当時ロナウドが所属していたユベントスが韓国に遠征。ソウルでチームKリーグと親善試合を行ったが、ロナウドは、怪我をしていたわけでもないのに1秒もピッチに立たず、韓国ファンの怒りを買った事件を示す。ファンイベントへの参加、45分間の出場などの契約があったにもかかわらずロナウドは”顔見せ出場”さえしなかった。
その因縁があるため、この日、スタジアムを埋めた韓国のファンはロナウドがボールを持つ度にブーイングを浴びせ「あなたよりメッシの方が凄い」という意味で、ロナウドのライバルであるアルゼンチン代表のスーパースター、メッシの名前を叫んだという。
またスポーツ朝鮮は、韓国の放送局SBSでコメンテーターを務める元韓国代表パク・チソンの「ロナウドがアシストしてくれた」という言葉を紹介している。韓国ファンにとって、そのロナウド率いるポルトガルを倒して、奇跡の決勝トーナメントを決めたことに、さらに喜びが重なったようだが、実は、もうひとつ新たな遺恨を呼ぶ可能性のある“事件”が起きていた。
すでにポルトガルは、韓国戦の結果にかかわらず、決勝トーナメント進出を決めていたため、後半20分にロナウドをアンドレ・シウバと交代でベンチに下げたが、その交代時に「そんなに急いでオレを(ピッチから)出したいのか!」と、怒りの表情でベンチの方向に向かって絶叫していたのだ。
キャプテンマークを預けたペペがロナウドを落ち着かせようと話しかけるシーンまであった。
試合後、このロナウドの激怒が、交代を指示したフェルナンド・サントス監督の采配への不満だったのか、それとも他に理由があったのかが問題視された。ポルトガルのスポーツ紙「ア・ボラ」、「レコード」など複数のメディアの報道によると、試合後にミックスゾーンで取材に応じたロナウドは、激怒の理由をこう説明したという。
「何が起きたかというと、私が交代する前に韓国の選手が“早く出て行け”と言ってきたので、“黙れ!”と言ったんだ。彼には、そう言う権限はない。それを言えるのは審判だ。ただ、この問題について論争する必要はない。これは、ゲームの熱気の中で起きたこと。物事は常にピッチの上で起きる」
そう言われれば、ロナウドは口に人指し指をあて「黙れ」のジェスチャーをしていた。韓国メディアによると、同点の展開で時間を潰されることを嫌ったチョ・ギュソンが、ゆっくりと歩いていたロナウドに「すぐに交代してくれ」と言葉をかけたようで、その言動がスーパースターの怒りを買ったようだ。
サントス監督も、記者団の質問に答え、「ロナウドは彼を侮辱して早くピッチから去るように言った韓国の選手に怒っていた。攻撃的に英語で話したと聞いた。彼が(黙れ!)と答えたのは普通の行動だろう。私はなんの疑いも持たない」と、ロナウドの采配批判説を否定して行動を支持した。
もしかすると、韓国とロナウドの間に新たな遺恨が生まれてしまったのかもしれない。だが、試合後のロナウドは、韓国に敗れたことを深く受け止め、決勝トーナメントに向けて気持ちを切り替えた。
「本当は勝ちたかったが、韓国にはメリットがあった。私たちは、この試合を教訓にして学ばねばならない。良いプレーをしないと負ける。最も重要なことは、私たちが団結しなければならないということ。私たちは次の段階にいる。選手だけでなくポルトガル人も自信を持たねばならない」
ポルトガル、韓国の2チームが、決勝トーナメントの初戦で対戦するグループGは、ブラジルがカメルーンに0-1で負け、スイスがセルビアを3-2で下したことで、ブラジル、スイスの2チームが勝ち点6で並んだが、得失点差で、ブラジルが1位、スイスが2位となった。ベスト8進出をかけて韓国は5日にブラジル、ポルトガルは6日にスイスと対戦する。



