無人のゴール外した挫折も…「はい上がってきた」鎌田大地、背水のスペイン戦で本領発揮へ
【ドーハ=森安徹】サッカーのFIFAワールドカップ(W杯)カタール大会で、12月1日(日本時間2日)にスペイン代表と対戦する日本代表。グループリーグの自力突破には勝利が必要なだけに、攻撃陣の活躍が不可欠だ。その核を担うはずのMF鎌田大地選手(26)は、これまで先発した2試合で本領を発揮してはいない。恩師や友人らは「大地は何度も挫折を乗り越えてきた選手。輝きを取り戻してほしい」と願う。 【写真】コスタリカのGKに阻まれ、顔を覆う鎌田
骨折、敗戦
日本が惜敗した27日のコスタリカ戦。鎌田選手の母校である京都市の東山高で、部員約100人とともに試合を見守ったコーチの中原大亮(だいすけ)さん(37)は「多くの挫折を経験しながら上を目指した努力家。今日の悔しさを必ず次の糧にしてくれるはず」と話した。
鎌田選手は小学1年生でリフティングを1000回できるなど、周りより圧倒的にうまかった。だが、6年時に日本サッカー協会が設立した「JFAアカデミー福島」の選考で落選。通知が届くと、1人で泣いた。
中学生で愛媛県伊予市の親元を離れ、ガンバ大阪の下部組織のクラブへ。3年間で身長が25センチ前後も伸び、急激な成長で体のバランスを崩した。腕や腰などを毎年骨折し、主力から外れた。
「いつになったら俺の体は思い通りに動くんだ」。父幹雄さん(53)の運転する車で涙を流した。クラブでは「ハードワークができない」とみなされ、次のカテゴリーに昇格できなかった。
東山高1年で臨んだ冬の京都府大会決勝。1点を追う終盤、無人のゴールを前にシュートを外して試合に敗れた。「3年生を引退させてしまった」と落ち込み、自ら丸刈りに。幹雄さんは「小さな頃からうまくいかないことが多かった。やめるタイミングはたくさんあったが、それを乗り越える力があった」と振り返る。
欧州で結果
「僕は今まで雑草魂、下からはい上がってきた身。絶対に成功したい」。鎌田選手は2017年、サポーターにそう宣言し、サガン鳥栖からドイツ1部のフランクフルトへ移籍した。
当初は出場機会に恵まれず、期限付きでベルギーのクラブに出された。今大会のアジア最終予選では代表から外れたこともある。
それでも、幹雄さんには「クラブで結果を出す。絶対に代表に必要だと認めさせて、戻る」と言い切った。その言葉通り、フランクフルトで今年5月、欧州リーグ優勝の立役者となり、代表に返り咲いた。SNSには「自分を信じてやり続けてやっと報われた気がします」との言葉が残る。
「持ってる男」
広い視野から繰り出すスルーパスやロングパス。ゴール前に駆け上がってのシュート。刈り取るようにボールを奪う激しい守備――。大会前のテストマッチとなった9月のアメリカ戦や11月のカナダ戦などで見せた姿は圧巻だった。
だが、本番では自らのゴールやアシストはなく、得点の起点にもなっていない。コスタリカ戦ではMFの相馬勇紀選手(25)や三笘薫選手(25)が作った好機を生かせず、顔を覆う場面もあった。
東山高時代のチームメートの中村太郎さん(26)は大会前、鎌田選手から「スペイン戦は日本の価値を高めるチャンス。勝機はある」と何度も聞かされたという。
中村さんは「追い込まれても、いつも大事な試合で活躍してきた『持ってる男』。注目の一戦で必ずやってくれる」と断言。鳥栖元主将の高橋義希さん(37)も「大地は本当に努力して今のポジションにいった選手。一緒にプレーした仲間として誇らしいが、もっともっとできる。ゴール前で決定的な仕事をすることを期待している」と話した。



