セレッソFWアダム・タガートが語る日本での日々。Jリーグに魅せられ、母国の選手には「機会があれば、すぐにでも来てほしい」
「充実した1年。より楽しんでプレーできた」
アダム・タガート。2021年に初来日し、セレッソ大阪に加入。1年目は怪我もあり、思うような活躍はできなかったが、2年目の22年シーズンは20試合に出場し、チーム2位タイの5ゴールをマークした。
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キャリアの円熟期を迎える29歳のオーストラリア人FWに、日本での生活、Jリーグやセレッソの魅力、来季に向けた意気込みなど、様々なテーマについて語ってもらった。
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――来日は2021年。すぐに日本には馴染めましたか?
「私は韓国で2年間、素晴らしい時間を過ごして、ここに来ました。セレッソに来れて、とても嬉しく思っています。みんなのおかげで、すぐに馴染めました。
移籍当初は、多くの困難がありました。特に入国に厳しい規制があり、ビザの関係でオーストラリアで足止めになるなど、苦労もありました。今年と比べると、全般的に大きな違いがあったのは確かです。
でも、クラブは常に協力的でした。適応するまで少し時間がかかりましたが、今年は本当に充実した1年でしたし、より楽しんでプレーできました」
――日本に来て、特に驚いたことや興味深かったことは?
「いつもたくさんの興味深いことがあります。ぱっと挙げるのは難しいですが、明らかに生活様式が違います。おかしな話ですが、モーニングコーヒーを手に入れるのがいかに難しいか(笑)。ほとんどのカフェはお昼まで開いておらず、閉店時間はとても遅い。オーストラリアでは、どこも早く開いて、早く閉まるので驚きました。
また言葉は、いつでも興味深いものです。僕には通訳がついてくれていますが、一人でいると、面白い状況に遭遇します。でも、時間が経つにつれて、言葉の壁は解消されていくものだと思うので、それほど問題ではありません」
――タガート選手は日本に来る前、韓国の水原三星で2シーズンプレーしていました。日本と韓国で生活習慣や文化の違いや、似ているところはありますか?
「多くの人がこの2か国を似ていると考えていると思いますが、私は多くの点でかなり異なっていると思います。どちらが良いとか悪いではありません。ただ、違うだけです。
特にサッカーにおいては、それぞれの国でとても違います。日本に来る前からJリーグはたくさん見ていましたし、日本には何度か訪れていましたが、Kリーグとは文化も違うし、やり方も違う。
韓国はピッチを広く使い、選手はとてもパワフルで体格が大きい。日本は非常にシャープで機敏で、美しいサッカーをしようとする。後ろからビルドアップして、完璧なゴールを目ざす。とても魅力的なリーグです。
でも、リスペクトの精神は一緒で、自立しなければいけないところは似ています。そしてどちらの国も人々は本当にフレンドリーです」
――水原では、選手やコーチングスタッフとコミュニケーションを取るために韓国語の勉強をしていたそうですが、日本語はどうですか?
「最初は日本語の先生をつけていたのですが、韓国語に比べて、日本語ははるかに難しいです。韓国語の読み書きは数週間で覚えました。物事が理解できるようになると、すべてがより自然に頭の中に入ってくるようになりました。
一方で、日本語は書くのも読むのもとても難しいです。学ぶのはとても大変だと思います。いつもは通訳がいるので僕を助けてくれています。自分でも、右や左、サッカーに必要な言葉は覚えました。またちょっとしたチームメイトとのジョークからも日本語を学び、できる限りコミュニケーションを取れるようにしています」
「お気に入りの場所に行くのが日課」
――大阪での生活は楽しめていますか?
「大阪は本当に楽しいですよ。サッカーも私生活も充実していて本当に楽しいです。カフェやレストランが並んでいて、私たちオーストラリア人が好むような素晴らしいエリアに住んでいます。
大阪周辺の都市も好きで、オフの日には京都を訪れたり、奈良にも何度か行きました。大阪は美しい街で、魅力がたくさんあります。僕は行きたい場所にはすべて行って、チェックしています。
でも、今は大阪のお気に入りの場所に行くのが日課になっています。おいしいコーヒーがある場所は全部行きましたよ」
――なかでもお気に入りの観光地は?
「京都は僕のお気に入りの街です。京都にはいろいろなスポットがあります。嵐山には素敵なカフェがあり、川が流れていて、本当に美しい場所です。京都の中心部にも、小さな路地やレストランがたくさんあって、雰囲気も最高です。
オーストラリア人が日本に来たら、見たり、行ったりしたいと思うところです。大阪以外の場所では、おそらく一番好きな場所ですね。大阪からたった45分で行けるので、行ける時はいつも行っています」
――では、セレッソ大阪について聞かせてください。
このクラブでここまで2シーズンを過ごしました。
「僕にとっては、去年と今年では、全然違います。僕はいつも、プライベートで幸せを感じていると、自分のベストなプレーができるんです。今年は、大阪での生活をとても楽しめているので、ゴールを決めたり、良いプレーができているのだと思います。
クラブはいつも僕と一緒にいてくれて、サポートしてくれています。どうすれば僕の力を最大限に引き出し、チームに貢献できるかを見つけ出すのに時間がかかったと思いますが、今年は上手くいったと感じています。
それと、セレッソはローテーションが多いです。数試合プレーして、ベンチで数試合を過ごすこともあれば、1試合プレーした次の試合はベンチスタートといった具合です。いかなる状況で試合に出ても良いプレーができるように万全の準備する方法を学び、理解しなければなりません。
ここではたくさんの試合をこなし、難しい暑さもあります。特に大阪の夏場は灼熱です。そういった様々な状況に適応していかなければならないと思っています。
確かに難しいです。試合によって役割は違いますが、今年はたとえ10分でも、60分でも、試合に影響を与えられるように、より良い準備ができました。
物事には必ず時間がかかるものです。新しいクラブに行って、いきなり活躍する場も、昨年の私のように、足もとを固めるのに時間がかかる場合もある。
特に今年は、サポーターとも良い関係を築けています。スタジアムに足を運んでもらえるようになり、僕の気持ちも高まり、誰もいないトレーニングマッチのような雰囲気はなくなりました。
昨年は、それがとても難しいと感じていました。ホームのサポーターが、もっと良いプレーができるようにと背中を押してくれています。一緒に楽しい時間を過ごせていますよ」
「歌やチャントも聞けて、より一層盛り上がった」
――サポーターとの交流で、印象に残っている出来事は?
「日本はとても敬意を払う国です。試合以外では本当にプライベートが確保されています。韓国ではちょっと違っていました(笑)。彼ら(水原サポーター)はどこにでもいて、歩くのも大変でした。
セレッソのサポーターはとてもリスペクトしてくれています。私たちが上手くいっていない時でも、とても応援してくれます。それは、本当にありがたいです。
昨年、スタートが遅れた時、彼らは僕を支えてくれました。今年はいくつかの素晴らしい瞬間をともに過ごしました。カップ戦では多くの強豪を破り、決勝に進出しました。
私たちの成功をサポーターと分かち合い、特に今年は、歌やチャントも聞けたので、より一層盛り上がりました。エキサイティングな試合と大きな瞬間は僕が望んでいたもので、プロサッカー選手としてプレーする理由です」
――ガンバ大阪とのライバル関係をどのように捉えていますか?
「正直、大好きですよ(笑)。僕がセレッソに来てから、ほとんどのダービーに勝利しています。数年前までは、彼らに勝つのは本当に難しかったと聞きました。
ダービーは素晴らしい雰囲気ですね。大都市にある2つのクラブ。健全なライバル関係で、とても良い感じです。特に今年は、膝の手術後、初先発した試合でガンバと対戦しました。3-1で勝利でき、ゴールも決めました。本当に力強い瞬間でした。
昨年は、膝の手術もあり難しい年でしたが、あの試合でのカムバックはとても特別なものでした。そしてそれが、その後の良いパフォーマンスを生み出すのに役立ったと思います」
――チームで感銘を受けた選手、一緒にプレーしていて楽しい選手はいますか?
「ここに来る前から清武(弘嗣)は、一緒にプレーするのを楽しみにしていた選手です。彼はとてもクオリティが高い。そういう選手が周りにいると、自分を高めてくれるし、サッカーがより楽しくなる。彼の存在は大きいですね。
今季で言えば、左サイドバックの(山中)亮輔は、信じられないほど素晴らしいクロスを供給してくれた。僕たちの大きな武器になっています。
それからオク(奥埜博亮)はこの2年間、僕らにとって素晴らしい存在でした。若手では、(北野)颯太はとても、とても良い選手です。彼がこれから多くのことを成し遂げるのは明らかです。間違いなく大きな才能を持っています」
――北野颯太選手が欧州で活躍する可能性や、日本人選手の海外進出についてはどう思いますか?
「間違いなく、彼は高い能力と才能を持っています。若い年齢でキャリアの良いスタートを切っています。大きなことを成し遂げるでしょう。
Jリーグから海外に行った選手は、みんなすぐに結果を残し、レギュラーとして活躍しているのをよく目にします。彼らは、向こうのシステムに簡単に適応しているようですね。
彼(北野)はすでに日本で上手くいっているし、順調に成長すれば、向こうでも活躍するでしょうね」
「AリーグとJリーグの競争力の差は大きい」
――Aリーグ(オーストラリアリーグ)も選択肢の1つかと思いますが、両リーグに違いがあるとすれば?
「大きな違いは、Aリーグには昇格と降格がないところだと思います。昇格や降格がないと、競争力がなくなります。特に下位チームは、タイトルを争っている上位チームと比べるとなおさらですね。
Aリーグでは、毎年1月になると、下位に沈んだチームは次のシーズンの準備を始めます。一方、Jリーグでは、何かが懸かっていたり、何かを失う可能性があります。個人としてだけでなく、クラブ全体、ファンや大きな組織が背後にいます。
負け続けるとクラブは衰退してしまうし、やるかやられるかです。逆に2部のチームは勝ち続ければ、上に行ける。AリーグとJリーグの競争力の差は大きいですね。
特にリーグの中盤戦になると、(Aリーグの)上位と下位の競争力の差に気づかされます。そういった面でも大きな違いが出てくると思います。Aリーグには質の高い選手がいたり、良いサッカーをするチームもありますが、そういった面を改善すれば、もっと競争力のあるリーグになるはずです。
Jリーグでは終盤になると、下位チームとの対戦は、上位チームとの対戦よりも難しいと感じます。結果を出さなければ降格する可能性があるからです。そうすると、1年を通して高い水準で、本当の意味でのファイティング・スピリットを保つことができるのです」
――オーストラリアの選手がキャリアアップを目ざすうえで、Jリーグは適した場所だと思いますか?
「素晴らしい場所だと思います。もし誰かに聞かれたら、すぐ来るようにと答えるでしょう。Jリーグは契約のオファーを受けるのさえ難しいところです。世界中の選手が来たがっています。南米のトッププレーヤーも来るし、最近ではヨーロッパのトッププレーヤーも来ているので、プレーするのは難しい場所です。
オーストラリアの選手に、もし機会があれば、すぐにでも来てほしいと思います。ミッチ・ランゲラックのように、何年もここで活躍している選手もいます。報酬も得ていますし、楽しんでいるようで、彼の家族も幸せそうです。
もしオーストラリアの選手が、Jクラブからオファーを受けたら、考えるまでもなく、受けるべきです。そしてベストを尽くす。ここで活躍すれば、他のチャンスもたくさん開けてくるはずです」
――そのJリーグで、今季、印象に残っているゲームは?
「神戸との試合は楽しかったです。ビッグクラブですし、良い選手もたくさんいます。彼らはおそらく、みんなが期待しているほど上手くいかなかったでしょう。私たちは彼らとの対戦で良い結果を残しています。
距離的にも近いし、やはりビッグゲームなので、多くのファンが観戦に訪れますし、対戦して楽しめた相手です。他にはFC東京との試合は、タフなゲームで難しかったです」
「広島とはいつもタフな試合をしている」
――リーグでの順位が近く、またルヴァンカップの決勝で対戦した広島についても、お聞きしたいのですが……。
「コメントしませんよ! いや、冗談です(笑)」
――今季、セレッソは5位で、広島は3位。横浜や川崎に続いて、リーグタイトルを狙えるチームだと思います。
「私もそう思います。セレッソと広島は、スタイルがよく似ている。高い位置からプレスをかけ、ボールを動かして、チャンスを作ろうとする。
横浜と川崎も似たような戦い方をしていると思いますが、広島とはいつもタフな試合をしているのは、チームのスタイルが似ているからだと思います。たとえ僕たちが1-0でリードしていても、わずか数分で試合を振り出しに戻されてしまう。
ルヴァンカップの決勝や、天皇杯でも敗れ、リーグの順位も近くて、間違いなく今季の我々の厄介者でした。
セレッソは今季、広島との戦いのようなものだった。そういう意味では、とても悔しい思いをしました。この先、タイトルを目ざすにあたり、今季は両クラブにとって特別な時期の始まりになる可能性があると思います。
もう少し整理して、自分たちのストロングポイントにフォーカスすれば、間違いなくタイトル獲得への道筋になると思います。広島とのライバル関係は今季、私たちをやる気にさせてくれました」
――来季に向けて、ご自身やチームの目標を教えてください。
「正直なところ、来季についてはまだあまり考えていません。今年は浮き沈みも激しい1年でした。
昨年は膝の手術もあり、今年こそはと気合を入れて臨みました。あと一歩でしたが、なかなか思うようにはいかなかったので、来年は目標に到達できればと思います。自分自身を向上するために、コンディションの維持は、常に優先事項です。
コンディションが良ければ、常に良いシーズンを過ごせると分かっているからです。それが個人的な大きな目標です。
チームとしては、もう一段ステップアップしなければならないと思っています。ここ2年間はカップ戦の決勝に進出しました。リーグの順位も昨季に比べるとかなり上位に位置しています。
次のステップに進むために、また、厳しい結果になっても、自分たちのやり方を見失わないようにするために、チーム力を押し上げる必要があります。自分たちの良さを持って、進歩しなければなりません」



