「俺がヒーローになる」堂安律、自身を鼓舞、有言実行の同点ゴール

「俺が決める。俺しかいない」――。サッカーのワールドカップ(W杯)カタール大会1次リーグE組の日本は23日、強豪ドイツに2―1の劇的な逆転勝ちで白星発進を果たした。優勝候補からの歴史的な勝利への道を開いたのが堂安律選手(24)=フライブルク=だ。強い決意を胸に後半途中出場し、同点ゴールをもたらした。

絶好機を逃さなかった。0-1で迎えた後半30分。味方のシュート性の折り返しをGKノイアー選手がはじき、ボールが目の前に転がってくる。落ち着いて利き足の左足でDFとGKの間を抜き、ゴール中央へ決めた。

「『俺がヒーローになる』と思ってピッチに立った。そのイメージをこの4、5日ずっと持ってホテルで過ごしてきた。その通りになって良かった」  同点弾の4分前に送り出されたばかり。すぐに大仕事を果たして劣勢だった日本の流れを変えると、後半38分に同じく途中出場の浅野拓磨選手(28)=ボーフム=の決勝ゴールが生まれた。

兵庫県尼崎市出身の堂安選手は、2人の兄の背中を追い3歳でサッカーを始めた。地元チームで「2学年飛び級」するような怪童は、やがてプロサッカー選手が夢になると、両親へは「俺はサッカーしかしない。勉強なんていらん」と言い放った。

中学からJ1・ガンバ大阪の育成組織に入ると、クラブ最年少記録を更新する16歳でJ1デビューを果たした。切れ味鋭いドリブルと左足のキック力を武器に19歳で海外移籍、20歳で日本代表デビューと、記録的な速さでプロの世界を駆け上がっていった。

迫力あるプレーのほかに、言動で注目を集めることも多く、サッカーファンには「ビッグマウス」としても知られる。「W杯優勝を目指さないでどうする」「30歳で代表の主将を任されるような選手になりたい」。包み隠さずストレートな言葉で野心と感情を表現するタイプだ。

今年3月にはこんな出来事があった。W杯出場が懸かったアジア最終予選オーストラリア戦の日本代表メンバーから外れると、直後にツイッターに「逆境大好き人間頑張りまーす! あ、怪我(けが)してません‼」と書き込み、悔しさをあらわにした。小学生時代のコーチで今も親交のある早野陽さん(38)は「あえて書き込んで自分にプレッシャーをかける。それで頑張れる自分がいることを理解しての行動だったと思う」と言う。その後、移籍先で活躍し、代表に返り咲いた。自分を追い込み、有言実行。その先に、値千金のW杯初ゴールが待っていた。

「3月に落選した時に、仲間がW杯出場を決めてくれたという感謝の気持ちがあった。今回選ばれなかった人もいるので全てを懸けてやろうと思っていた」。そう振り返った堂安選手は言った。「スタメンで出る選手が45~60分間出し切って、(切り札の)俺らが試合を決めるとチーム全体で話していた。その通りになった。最高の日になった」

熱いハートと刺激的な言葉で自らを奮い立たせ、ピッチで輝く。「堂安節」が、いつにも増して頼もしく響いた。【ドーハ長宗拓弥】

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