3チームは残留争いに J1関西勢、苦しんだ一年
関西に拠点を置くJリーグの4チーム全てが12年ぶりにJ1で戦った2022年シーズンが終了した。リーグ戦ではC大阪の5位が最上位でどのチームも優勝戦線に絡めず、来季のアジア・チャンピオンズリーグ(ACL)出場権も獲得できなかった。神戸、G大阪、京都は激しい残留争いに巻き込まれ、中でも京都は13日のJ1参入プレーオフ決定戦でJ2熊本を退け、どうにか降格を免れた。神戸とG大阪がシーズン途中に監督交代を行うなど、全体的に苦しい1年となった関西勢の2022年を振り返った。(北川信行)
■セレッソ、選手成長も無冠に終わる
たたき上げの小菊監督が2季目の指揮を執ったC大阪は、一時はYBCルヴァン・カップと天皇杯全日本選手権の両タイトルとともに、J1リーグ戦でもACL出場権を狙える好位置につけながら、結局、どれも手にできなかった。
リーグ戦の最後は6試合勝ちなしで、4試合はノーゴール。来季続投が決まっている小菊監督は「1年生の監督に選手たちがついてきてくれた。80点から85点ぐらい」と今季を総括しつつ「課題は分かっている。克服して来季に向かいたい」と決意を表明した。
課題とは、エースストライカーの不在だ。指揮官が「誰が出ても変わらず、チームのパフォーマンスを発揮できるようになったのは大きな収穫」と話すように、強度の高い練習とチーム内での競争を通じて守備的MFの鈴木や右サイドのスペシャリストの毎熊らが台頭したが、最もゴールを挙げたのは加藤の6点。タガート、上門(うえじょう)、山田、ブルーノメンデスら人数はいたが、柱となる「点取り屋」は現れなかった。「攻撃のバリエーションを増やしたい」と話す指揮官の下、来季はタイトル奪取を実現するシーズンとなる。
■3度の監督交代でヴィッセル混乱
三浦-リュイス(暫定)-ロティーナ-吉田。シーズン中に4人もの監督が入れ替わったのは、神戸らしい。元スペイン代表のイニエスタをはじめ豊富なタレントを擁し、優勝候補の呼び声もあったが、故障者が相次いで開幕ダッシュに失敗すると、昨季にチームを3位に押し上げた三浦監督との契約を3月下旬に解除。リュイス監督の暫定的な指揮を経て4月上旬にロティーナ監督が就任した。
守備組織の構築に定評のあるスペイン人指揮官の下、規律のとれたサッカーを目指したが、成績は一向に上向かず、6月末に再び監督交代。今度は過去に2度「救援登板」の経験があるOBの吉田監督を起用し、立て直しを図った。
吉田監督は約束事を定めた上で、ピッチ内での選手の判断を尊重。飯野、トゥーレルらの緊急補強も的確で、故障が長引いていた大迫が終盤に復帰したのも大きかった。就任時2勝5分け11敗の危機的状況から、5連勝を含む9勝2分け5敗で残留を果たした吉田監督は「一人一人のメンタルが変わった。変えるために、やりたいことの順番をはっきりさせた」と話す。来季に向け、まずは余剰戦力の整備が必要だろう。
■手堅いサッカーでガンバ辛くも残留
G大阪の新指揮官に就任した片野坂監督は「強いガンバを取り戻す」をスローガンに、丁寧にボールをつなぐスタイルの導入を図った。昨季まで率いた大分ではある程度の結果を残したが、実績のある選手が多いG大阪では自由度の少ない戦術が空回りした感は否めない。守護神の東口やエース宇佐美が開幕前後に相次いで故障したのも響いた。
5月21日の大阪ダービーから4連敗。広島戦の勝利を挟み、その後の7試合で2分け5敗と成績が急降下すると、采配も対戦相手の良さを消す形に変わった。守備強化のため運動量のある山見らを前線に配したが、結果は出なかった。
フロントが監督交代に踏み切ったのは残り10試合の段階。残留を託された松田監督は守備組織を整備するとともに、出場機会を失っていた長身FWのレアンドロペレイラらを起用。守りを固めての一発狙いを徹底した。「やるべきことを続ける」「目の前のプレーに全力を出す」といった簡潔な言葉でチームをまとめ、4勝3分け3敗ながら7試合無失点の手堅いサッカーでタスクを完遂。辛くも残留した来季、過去の幻影を再び追うのか、フロントの判断が問われる。
■サンガ、ウタカ頼みから脱却できず
13日のJ1参入プレーオフ決定戦で、J2熊本の挑戦を退けた京都の曺貴裁(チョウ・キジェ)監督は「プレーオフは初体験だったが、あんまりやるものじゃないと思った」と安堵の表情を浮かべた。
昨季のJ2で2位に入り、12年ぶりに戻ってきたJ1の舞台。序盤戦はハードワークを武器に、激しくプレスをかけてボールを奪取する形が奏功し、中位を維持していた。ところが、6~8月の9試合で1勝3分け5敗と失速すると、夏場以降は順位を落として残留争いにのみ込まれた。
原因は選手層の薄さと、序盤はゴールを量産していた38歳のエースFWウタカが不調に陥ったこと。ウタカが最後にゴールを奪ったのは7月2日の札幌戦。その時点で、自身は9ゴールで得点ランキング上位につけ、チームも9位だった。ウタカの次に得点を挙げているのは武富の3ゴール。ウタカに代わる存在が現れなかったとも言える。
ただ、30得点はワースト2位タイだが、38失点は上位3位タイの少なさ。体を張って守るベースはある。戦略家の指揮官は「相手ボールのときにいかに攻撃するかが、われわれのテーマ」と話す。来季は得点力向上で上位をうかがう。



