「J1残留争い」は稀に見る混戦状態 運命の残り2試合、生き残るチームはどこだ〈dot.〉
佳境を迎えている2022年のJ1リーグ戦。延期分の試合をすべて終え、これまでバラつきがあった消化試合数が全チーム同じになった。残りは2試合。優勝争いが横浜FMと川崎に絞られた一方で、J1残留争いは7チームが“渦中”にある。
まさに首の皮一枚で繋がっているのが、最下位18位の磐田(勝点29、得失点差-23)だ。8月以降7試合白星なし(3分4敗)で崖っぷちに追い込まれたが、そこから“火事場の底力”で何とか踏みとどまり、直近2試合は1勝1分。首位・横浜FM(○1-0)を下し、清水(△1-1)には試合終了間際に追い付き、わずかではあるが残留の可能性を残している。残り試合はG大阪(A)、京都(H)。得失点差のマイナス分が大きく、1勝1分でも最下位脱出はほぼ不可能であり、J1残留のためには自分たちが2連勝したうえで他チームの勝敗を待つという形。果たして奇跡を起こせるか。横浜FM戦で決勝弾を決めてヒーローになりながら清水戦では決定機を外して悔し涙を流した19歳・古川陽介のゴールに期待したい。
自動降格圏の17位にいるのが、G大阪(勝点33、得失点差-13)だ。9月に神戸との関西ダービーに敗れた後、柏(△1-1)と引き分け、横浜FM(○2-0)に勝利して一旦は16位に浮上したが、その後に他チームが軒並み勝利したことで再び厳しい状況に追い込まれた。残りは磐田(H)、鹿島(A)。1勝1敗でも残留できるかどうかは微妙な状況だ。最終節で戦う鹿島にはリーグ開幕戦(●1-3)の後、ルヴァン杯(●1-4、●1-3)、天皇杯(●0-2)と今季4戦全敗で、昨季も含めると6連敗中という苦手な相手なだけに、まずは直接対決となる次節・磐田戦での勝点3は必須だ。最後の最後で意地を見せられるか。3週間試合がなく再調整する時間はタップリあった。また、たとえチームとして機能せずとも、故障から復帰したエース・宇佐美貴史の個人能力と孤軍奮闘を続ける守護神・東口順昭の存在があれば勝てるはず。不恰好でもいい。“西の雄”として、クラブ史上2度目のJ2降格は絶対に避けなければならない。
入れ替え戦行きの16位は現在、清水(勝点33、得失点差-8)になっている。夏の補強効果もあって一時は12位まで浮上して残留争いから抜け出したかに思えたが、9月以降の直近5試合を2分3敗で再降下。川崎戦(●2-3)は仕方ないにしても、相手に退場者が出て数的有利となった後に2点を奪われた広島戦(●0-2)、ボール支配率67%を生かせなかった福岡戦(●2-3)、そして試合終了間際に同点弾を許した湘南戦(△1-1)と清水戦(△1-1)と、実に“もったいない”戦いを続けた。残りは鹿島(H)、札幌(A)。2017年にJ1復帰して以降、鹿島には公式戦1勝1分12敗と圧倒的に分が悪く、札幌にも公式戦4勝2分8敗と負け越しているが、果たして今回はどうなるか。所属する選手たちの個々の能力を考えればJ2に落ちるチームではない。現在J1トップの13ゴールを挙げているチアゴ・サンタナの得点力を生かし切りたい。
残留ラインぎりぎりの15位が、福岡(勝点34、得失点差-10)だ。8月中旬からリーグ戦6試合白星なし(1分5敗)と苦しい時期を過ごしたが、その後の直近3試合は2勝1敗。9月17日の清水戦(○3-2)の勝利が大きく、ルヴァン杯2試合を戦った後の神戸戦(●0-1)は敗れたが、前節で札幌(○2-1)に逆転勝利して大きな勝点3を手にした。残りは柏(H)、浦和(A)。現在、優勝やACL出場圏、そして残留争いに全く無関係の7位と8位のチームであり、モチベーション的には上回れるはず。今季チーム総得点26はリーグ最少タイという得点力不足は大きな課題だが、総失点36は4位タイという堅守ぶり。先制点を奪った試合は8試合で6勝2分けの無敗を誇っているだけに、試合の入りを大事にしたい。ここまでチーム最多の9得点を決めている山岸祐也に期待し、先行逃げ切り図りたい。
14位は京都(勝点34、得失点差-8)。リーグ前半の17試合を終えた時点では5勝5分7敗の勝点20を稼いで9位にいたが、自慢のハイプレス戦術が夏場は機能せずに7月から8月にかけての6試合白星なし(3分3敗)。頼みのピーター・ウタカも失速し、気がつけば残留争いに巻き込まれている。残りはC大阪(H)、磐田(A)。得失点差で優位に立つだけに「あと1勝」すれば残留できる可能性は高い。さらに対戦相手の状況を見ても、C大阪はルヴァン杯決勝で敗れたダメージがあることに加え、DFヨニッチが出場停止。磐田はすでに降格が決定している可能性がある。しかし、その反対にC大阪が悔しさをバネに発奮し、磐田は残留の可能性を残したまま死に物狂いで最終節を迎えることも考えられるだけに気は抜けない。2週間半の調整期間でフィジカルコンディションは整う。自分たち本来のアグレッシブなサッカーをピッチ上で表現したい。
13位にいるのは湘南(勝点35、得失点差-12)だ。第13節を終えて勝点7(1勝4分8敗)の最下位だったところからの巻き返しに成功したが、まだ残留は確定できていない。7月以降の戦いでの特徴は、福岡(△0-0)、磐田(●0-1)、札幌(●1-5)、清水(△1-1)、神戸(●0-1)と残留争いの直接対決に弱さを見せる一方で、広島(△1-1)、鹿島(△1-1)、川崎(○2-1)、C大阪(△1-1)、F東京(○2-0)と上位チームからはしぶとく勝点を拾い、白星も挙げている点にある。スタイルはショートカウンター。ボール支配率で下回った試合ほど戦績がいい。残りは鳥栖(H)、柏(A)。ポゼッション志向が強い鳥栖とは第2節(△1-1)以来、カウンター志向の柏とは今季開幕戦(●0-2)以来の対戦。鳥栖はホーム、柏はアウェーでの戦いになるが、相性的には鳥栖の方が与し易い。今季ゴール数を2ケタに乗せた町野修斗、途中出場からでも仕事ができる阿部浩之に期待したい。
12位は札幌(勝点39、得失点差-12)。開幕7試合白星なし(6分1敗)の後、5試合連続無失点で3勝2分と好調だった時期もあったが、5月中旬以降は大量失点する試合が目立ち、特に7月は2分3敗と苦しんだ。それでも9月に入ってからC大阪(○2-1)、磐田(○4-0)、横浜FM(△0-0)、さらに10月1日の川崎(○4-3)と好ゲームを展開。直近2試合は、福岡(●1-2)、浦和(△1-1)と勝利できずに数字上はまだ降格の可能性が残っているが、ひとつ下の13位とは勝点差4、入れ替え戦の16位とは勝点差6が開いている。残りは広島(A)、清水(H)。仮に2連敗しても残留できる可能性は非常に高いが、今季を“成功”と位置付けるためにも勝利を挙げ、気持ち良くシーズンを締めたいところだ。
いよいよ残り2試合。清水と磐田以外のチームは前節から試合間隔が空いており、その時間をどう使ったかで“流れ”大きく変わってくる。依然として13位と17位までの5チームが勝点差2の中にひしめき合っている史上稀に見る大混戦状態で、得失点差も大事になってくる。1つのゴール、1つのプレー、ラスト1秒まで目を離すことができない。最後まで諦めることなく戦い抜いたチームに“神様”は微笑むことだろう。