大化け期待の“和製ストライカー”も! Jリーグで来季の「大ブレイク」漂わす若手たち〈dot.〉
いよいよ最終局面を迎えている2022年のJリーグ。今季も全国津々浦々、多くの若手たちが頭角を現して新風を吹き込んだ。だが、まだ“微風”の状態の選手たちも多くいる。今季のプレータイムは少ないが、その中で大器の片鱗を見せた男たち。来季の“大ブレイク”を予感させている男たちを紹介したい。 【写真】“堂安律超え”のポテンシャル感じる逸材
まずは首位争いの中で確かな実力を見せたMF山根陸(横浜FMだ。2003年8月17日生まれの19歳。アカデミー出身の秀才ボランチ。3月2日の第10節・神戸戦でJデビューして2対0の勝利に貢献。その後、6月から8月にかけて出番を得て、基本技術の高さと的確な状況判断、豊かなプレービジョンで堂々たるプレーを披露。豊富な運動量と球際の強さも見せた。
ただ、岩田智輝、喜田拓也、渡辺皓太、藤田譲瑠チマと実力者たちが顔を揃える激しいチーム競争の中で、今季はリーグ戦11試合(スタメン4試合)出場でプレータイムは463分。それでも山根のセンスは際立っており、来季も過密日程が続く中で出番は確実に増えるはず。さらに故障者や退団者が出れば、一気にレギュラー奪取からリーグ屈指のボランチ、そして日本代表へとステップアップしてもおかしくはない。
若手有望株がひしめくGKでは、鈴木彩艶(浦和)の“真のブレイク”を求めたい。2002年8月21日の20歳。2021年にトップ昇格を果たし、GKとしてのクラブ最年少出場からルヴァン杯のニューヒーロー賞に輝くと、東京五輪でも代表メンバー入り。今年も代表レベルでは、U-23アジア杯で活躍し、7月のE-1選手権でA代表に初招集されて香港戦でデビューを飾るなど順調にステップアップした。だが、所属クラブでは西川周作の牙城を崩せず、今季リーグ戦2試合(プレータイム180分)に出場したのみ。まだ20歳ではあるが、今後のキャリアを考えると現状では満足できない。
能力に疑いの余地はなく、野生的なセービングに長距離スローイングと客を呼べる華を持つだけに、フルシーズンを戦い抜く中で自身のプレーを毎週、サポーターに披露すべきだ。来季、西川からポジションを奪うのか、それとも自身の環境を変えるのか。どちらにしても正GKの地位を獲得してピッチに立つことができれば、間違いなく今以上のブレイクを果たすはずだ。
アタッカー陣では、MF中村仁郎(G大阪)の飛躍に期待したい。2003年8月22日生まれの19歳。G大阪ユース産の新たな至宝レフティーとして、2020年に高校2年生でJデビュー。トップ昇格を果たした今季は、ルヴァン杯で経験を積んだ後、5月にリーグ戦4試合にスタメン出場を果たし、故障離脱中だった宇佐美貴史に代わる攻撃の軸として、持ち味である切れ味鋭いドリブルを随所で披露。物怖じしないメンタル面の強さもしっかりと見せつけた。
しかし、チームの結果が伴わずに6月以降は出場機会を失い、今季はリーグ戦9試合(スタメン5試合)出場でプレータイムは442分にとどまっている。ただその間、アンダー世代の代表として海外遠征を多く経験し、筋力アップに励みながら爪を研いでいる最中。攻撃センスは若手の中でも随一で、最大の武器であるドリブルだけでなくパンチ力のあるシュートも魅力。来季の大ブレイクから「堂安律以上」の活躍を期待できるタレントだ。
復活からの本格ブレイクに期待したいのが、両利きドリブラーのMF甲田英將(名古屋)だ。2003年10月12日生まれの19歳。名古屋U-12時代からのアカデミーの生え抜きで、今年2月のルヴァン杯でトップチームデビュー。リーグ戦でも春先に4試合に途中出場すると、独特のリズムのボールタッチからの積極的な仕掛けでスタンドを大いに沸かせた。
だが、5月に左膝外側半月板を損傷して長期離脱。9月に戦列復帰を果たしたが、今季はリーグ戦7試合(スタメン0試合)でプレータイムは112分のみ。今後、フィジカル的な強さを身に付けた上でプレーの幅を広げていけば、他にない武器があるだけに大ブレイク間違いなし。細かいステップと左右両足で可能な仕掛け。メッシとデンベレに通ずる稀有な才能を持つドリブラーとして、来季を勝負のシーズンにしたい。
日本代表の大きなウイークポイントであるセンターFWでは、今季特別指定選手としてプレーした木村勇大(京都)の爆発に期待したい。2001年2月28日生まれの21歳。神戸の下部組織で育ち、大阪桐蔭高から関西学院大へ進学。身長184センチの「高さ」に大学入学後に「強さ」を際立たせ、関西学生No. 1ストライカーとして得点を量産。パワフルなシュートとともに足元の「巧さ」とスペースへ抜け出す「速さ」も兼備しており、万能型の点取り屋として大きな可能性を秘めている。
大学4年生の今季は、リーグ戦7試合(スタメン2試合)でプレータイムは288分。まだ無得点だが、ルヴァン杯ではゴールを決めている。正式加入する来季は、ピーター・ウタカとの併用の中で結果を残し、定位置奪取に期待。高校時代はプロ野球選手の根尾昂(中日)と同級生。ブレイクのタイミングとしては頃合いだ。
ここに挙げた面々以外にも現在のJリーグの各クラブには優れた才能を持つ若手は多くおり、日本サッカー界の選手層は間違いなく厚くなっている。その中から傑出した存在になれるかどうか。20歳前後の選手たちは、キッカケがあれば一気に成長できる。その“進化の瞬間”を目の当たりにできることは、見る側にとっても実に幸せなこと。2023年、多くの選手たちの“大ブレイク”を期待したい。