オーストリアで大ブレークの22歳 LASKリンツFW中村敬斗「カタール後にはA代表に」
オーストリア1部・LASKリンツで大ブレーク中のFW中村敬斗(22)が、スポーツ報知のインタビューに応じた。19年夏に海外移籍し、欧州で4クラブ目となるLASKリンツで今季ここまで公式戦9ゴール5アシスト。リーグでの6ゴールは得点ランキング2位と、欧州各国からの注目も集め始めている“A代表未経験”の日本人アタッカーが、飛躍のきっかけや日本代表への思いなどを明かした。(取材・構成 金川誉)
―今季はここまでLASKで公式戦9ゴール5アシストと大活躍。好調の要因は?
「一つは、チームや監督との相性が非常にいい、と言うことだと思います。去年の途中からスタメンに定着して、コンスタントに結果を出せるようになってきて。ちょうどその時期に、監督が変わったんですよ(元オーストリア代表選手でもあるキューババウアー監督が就任)。残り3試合のタイミングで。その初戦で2点取ることができたんです。もちろんその1試合だけではないんですけど、そこから監督の信頼をつかむことができて、(先発で)使ってもらえるようになったことが大きいと思っています。(公用語の)ドイツ語は話せないのですが、監督とは英語でコミュニケーションも取れているし、(ピッチ内外で)充実しています」
―欧州ではオランダ、ベルギーでプレーし、オーストリアが3か国目。出場機会が少ない経験もしてきたが、その中でつかんできたものは?
「僕自身、何かを大きく変えようとは特に思っていなかったんですけど、経験値としてヨーロッパではこういうプレーが求められているんだなとか、ちょっとずつわかるようになってきて。一気に変わったのではなく、毎試合積み重ねることで変化してきたと思います。以前は簡単にボールを失うことが結構あったと思いますけど、その回数は減ったかなと。もちろん体も強くなってきた、ということもありますけど、コンスタントに試合に出る中でつかんだ自信や、この場所でボールを持ったら危ない、という判断なども身についてきているのかな、と感じています」
―LASKでは左サイドハーフでプレーしているが、ゴールもカットインからの右足、縦突破からの左足、そしてこぼれ球への反応などパターンが多い
「オーストリアのリーグというか、ヨーロッパのサッカーに適応してきたとは思います。その中でもシュート力、というのは自分の持ち味。右足なら得意の左45度からは、ある程度プレッシャーがかかった中でも打てるようになってきています。左足も、今の監督にもいいシュートを持っているから、(DFを)かわす前に思い切って打ってみてもいい、と言ってもらえています。両足で打てることで、キックフェイントも効くので」
―G大阪からの加入したオランダ1部のトゥウェンテ、ベルギー1部のシントトロイデンを経て、オーストリア2部のジュニアーズと渡り歩いた。その遍歴をどう感じていたのか
「自分的にはあまり(気持ちが)揺らぐことはなかったんです。もちろん(オーストリア2部への移籍は)ステップダウンだと思いましたけど、シントトロイデンでは試合に出られていなかったので。(20―21年シーズン途中に加入した)ジュニアーズでの半年で、感覚を取り戻せたのは大きかったです。ジュニアーズはLASKのセカンドチームという位置づけで、結果を残せばトップ(LASK)に呼んでもらえる、という狙いがあったので、移籍は迷いませんでした。ジュニアーズではチーム内では絶対的な存在となって、自分にボールを集めろ、という感覚でプレーできたことで、自信を取り戻すことができました」
―そして21―22年シーズンの開幕直後にジュニアーズで5試合3ゴールをマークし、LASKに引き抜かれた。1年目は6ゴールで、今季は早くも9ゴール。オーストリア1部リーグの特徴やレベルをどう感じている?
「よく言われるのは、ドイツが隣の国なので、少し特徴が似ているという点です。インテンシティ(強度)が高く、球際はバチバチやります。もちろん、少し技術的なレベルは下がるとは思います。ただ周りが球際に強くいく中で、僕もプレー強度は少しずつ上がっていると思いますし、技術的な部分では違いを出せると感じています。このリーグで活躍して、ドイツに移籍していく選手も多いです」
―将来的には、現在日本人選手も数多くプレーするドイツ・ブンデスリーガへのステップアップは目標か?
「今までプロになって、コンスタントに試合で点を取るということがなかったので。今はチームの中心選手はこんな感覚なんだ、と毎試合味わっています。チームが勝てないときは責任を感じますし、自分が点を取っても負けると、ここ守備でもう少し頑張れたんじゃないか、とか。だから今は、LASKでのプレーに集中しています。2けたゴール、2けたアシスト、という目標もあります。もちろん、将来的にはドイツでやってみたい、という思いはありますし、イタリアやフランス、といった国にも興味はあります」
―今はピッチに立ち続けることの喜びを感じているか
「先日、ヨーロッパに来てから初めて家族が試合を見に来てくれたんです。コロナ禍もあって、来られていなかったので。10日ほどの滞在だったのですが、来てくれた試合でゴールすることができて。プロになって、両親の目の前でゴールを決めたのは初めてでした。すごく喜んでくれて、父は泣いてました。活躍する姿をみせられたのは、僕もすごくうれしくて。苦しい時もずっと応援してくれているので、もっと活躍する姿をみせたいなと思いました」
―所属クラブでの活躍が続けば、次の目標は日本代表入りになるのか?
「もちろん、目標としては置いています。ただ現実を見ると、僕がカタールでプレーする可能性は限りなく低いと思うので、W杯後の代表入り、というところを目指しています。今、LASKはリーグ2位なので、上位に入って欧州CLやELでプレーすることも目標です。中断明けは(首位でリーグ9連覇中の)ザルツブルク戦がありますし(10月2日)」
―ザルツブルクと言えば、かつて日本代表MF南野拓実選手が活躍。ノルウェー代表FWハーランド=マンチェスターC=なども輩出したオーストリアの絶対王者だ
「ザルツブルクは、オーストリアの中では、ドイツにおけるバイエルンのようなチームです。LASKの選手も、南野選手がザルツブルクで活躍した姿を覚えていて、すごくいい選手だ、と言ってくれます。大事な試合なので、個人の結果もそうですけど、チームで勝てれば一番いい。そのためにプレーしたいと思います。そして日本で応援してくれる方々、G大阪のサポーターの方からもSNSでメッセージをいただくこともあります。ユース育ちでもなく1年半しか在籍していない僕を応援してくれることに、いつも感謝しています。オーストリアでの活躍が日本に届くように頑張ります」



