【番記者の視点】“不死身”の34歳FWパトリック 代えない判断で生まれた決勝ゴール

明治安田生命J1リーグ第24節 福岡0―1G大阪(31日、ベススタ)

G大阪は0―0の後半ロスタイム4分に奪ったFWパトリックの決勝ゴールで、約3か月半ぶりの連勝を飾った。試合開始直後に数分だけ降った雨の影響もあってか、ピッチは気温28・6度、湿度80パーセントと蒸し風呂状態に。両チームとも体力を削り取られていくなか、G大阪に訪れたラストチャンスを、3試合連続フル出場の34歳が決めた。

0―0で推移した試合の中で、ポイントは交代策だった。先発はFWパトリックと鈴木武蔵の2トップで臨み、ベンチにはFWレアンドロ・ペレイラが待機。決定力ではチーム屈指のレアンドロを、いつ、誰と代えて投入するのか。松田浩監督は、後半28分に鈴木に代えてレアンドロを投入。フィールドプレーヤー最年長のパトリックを、ピッチに残した。

交代は鈴木かパトリックか。悩み抜いたうえで、決断した理由を松田監督はこう語った。

「パトリックは不死身の体を持っているところがあって。疲れているけど最終的に体が動いたり、空中戦に勝ったり、またリードしたあとに(守備で)後ろに戻ってロングボール対応もやってくれる。それくらい計り知れない体力の持ち主だなということを思っています。年齢(34歳)を考えると、交代させなきゃとか、1試合スキップさせなきゃということを思うのですが…。彼には大変な思いをさせましたが、よくやってくれたと思います」

G大阪への在籍は、計8年目となるパトリック。34歳となった今でも空中戦はJリーグ屈指の強さを誇るが、かつて相手DFをなぎ倒してゴールに迫っていたフィジカル面に、衰えを感じさせることもある。しかしゴールシーンは、自陣ペナルティーエリア付近での守備参加から、疲れた体にムチを打ってゴール前へ。ゴール後の表情には、歓喜とともに疲労困ぱいの色もにじんでいた。それでも「ピッチに立っている限りは、体がダメになっても足は止めない、という思いでやっている」という言葉が、彼の覚悟を物語る。

指揮官は“不死身”と表現したが、パトリックを突き動かすのはG大阪への思いに他ならない。2016年に右膝の大けがをした際、翌年も契約を延長し、クラブは負傷の完治をサポートした。その後、広島に移籍して完全復活を遂げたパトリックも、当時浦和など他クラブからのオファーもあった中で、19年夏にG大阪復帰を選んだ。今季は片野坂監督の下でリーグ戦1ゴールにとどまり、8月14日・清水戦ではベンチ外に。それでもSNSを通じ、チームに激励のメッセージを送った。「自分がメンバーから外れていても、チームメート、そしてサポーターも戦っている。僕が唯一できることが、ポジティブなメッセージを出して、一緒に戦うことだった」。クラブとパトリックの強い結びつきは、ピッチ内外での献身に表れている。

この連勝でチームは暫定13位に浮上。しかし下位チームより試合消化数が多いこともあり、J1残留に向けては厳しい戦いが続く。ただ、コロナ後はじめてとなる声出し応援も受けた中で、“ガンバ愛”を前面に押し出すパトリックが決めてつかんだ連勝。データでは測り切れないチームを取り巻く空気が、ポジティブに変わってきたことは確かだ。(G大阪担当・金川誉)

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