元G大阪の嵜本晋輔氏「D.LEAGUE」所属チームのオーナーに 三刀流以上の挑戦を本格化

ガンバ大阪の選手で、ブランド品の買い取りや販売事業を手がける国内大手「バリュエンスホールディングス」(本社・東京都港区)の嵜本晋輔社長(40)が、サッカー関東1部の南葛SCに続き、プロダンスリーグ「D.LEAGUE」に、チーム名「バリュエンス インフィニティーズ」のオーナーとして参戦することになった。多彩な経営手腕を発揮する元Jリーガーの本音に迫った。

◇   ◇   ◇

わずか3年間の在籍でG大阪から戦力外通告を受けた嵜本氏だが、MFとして小気味いい攻撃が持ち味だった。2011年には29歳で起業し、7年後に元Jリーガー初の上場企業社長になった。

昨春にはJリーグを目指す南葛の経営に参画し、今夏は日本発で世界初のシーズン制プロダンスリーグへの進出が決定。10月に3シーズン目の開幕を迎えるD.LEAGUEで、新規加入チーム「バリュエンス インフィニティーズ」のオーナーとして臨む。

22歳で現役引退を決めた時と同様、決断は圧倒的に早かった。

「昨年のD.LEAGUE開幕戦を初めて見に行って、想像以上にエンターテインメントのど真ん中をいく、今後は伸びしろしかないコンテンツであることに気付きました。チームの運営やダンサーの熱量を通して、本業へのノウハウやシナジー(相乗効果)を間違いなく受け取れると確信しました」

D.LEAGUEは21年1月、エイベックスやサイバーエージェントがチームオーナーとなり、9チームで歴史的開幕を迎えた。

2季目は11チームに拡大され、12チーム目が公募された今秋開幕の3季目にバリュエンスの参入が認められた。年間12ラウンド制で、最後に年間王者を決める。毎回2分ほどの演技時間(ショーケース)に、1チーム8人が魂をぶつける。

「2分間に人生を懸けていることが、ステージ上から伝わります。あらゆる産業で、人々の可処分(個人が自由に使える)時間の奪い合いになった構造の中、いかに短く、内容の濃いものが見せられるか。たった2分で完結するダンスには親和性の高さ、(配信される)スマホとの相性のよさがある。自社でコンテンツを持っている企業が、優位に働くと感じました」

既に中学校の授業などでダンスが必修化され、24年パリ五輪にはブレイクダンスの採用が決定。国内のダンス人口は10、20代を中心に600万人以上、いずれ1000万人に届くといわれる。顧客層が30代以上、主に40代、50代のバリュエンスにとり、25歳以下といわれるZ世代を取り込むのは、顧客獲得、新卒採用の面でも効果的になる。

チーム名にある「インフィニティーズ」は、バリュエンスのブランド買い取り店「なんぼや」のロゴにある無限∞を表すインフィニティーを使用した。同社が取り組む循環型社会への思いも込めた。その挑戦1年目、どんな成果を求めていくのか。

「正直、もう素晴らしい既存の11チームがあって、無難な形で入っていっても、全然埋もれちゃって目立てない。やるならチャレンジしていきたい。同時にアスリート1人1人の可能性を開放し、開花させていくこと。比例する形でダンサーの地位向上を実現する。その初年度という位置付けです」

嵜本氏が取締役を務める南葛は、人気漫画「キャプテン翼」の作者・高橋陽一氏がオーナーを務める。チームはJ1から数えれば、5部に相当する関東1部に今季から初挑戦。チーム強化にはかかわらず、嵜本氏はキャプテン翼のキャラクターを使ったIP(知的財産)ビジネスを、世界の企業と行う。その南葛にも将来、ダンスを絡めていきたいという。

「将来的に南葛にスタジアムができれば、試合のハーフタイムにダンスショーを行いたい。そのダンスからサッカー、サッカーからダンスみたいな、競技から競技でそういうところ(ファンの開拓)もちょっと想像しています。それくらい(ダンスは)強烈なコンテンツであるということは、僕の中で確信しています」

バリュエンスでも当然、嵜本氏らしい手腕が発揮されている。「なんぼや」の新キャラクターに、ジャニーズ屈指の人気グループ「関ジャニ∞」の起用が今年1月に決まり、4月からはテレビCMも流れた。ファンの反響は想像以上だったという。

「特にツイッターでの反響がすごくて。(テレビCMの)再生回数も35万回に届き、僕のSNSも多く読んでいただいた。行動はあるのみと、改めてこの年齢で分かりました」

「バリュエンス」「南葛」「バリュエンス インフィニティーズ」を、すべて本業と言い切る嵜本氏は「単純に売り上げ、利益を追求する会社なんてこの先、何も評価されない時代になると思う。どんどん企業の価値を高めて、もっと応援できるようにビジネスを頑張りたい」と力強い。

21歳で戦力外通告を受けたからこそ、今の嵜本氏がいる。「人生は受け入れたくない事が起こるけど、受け入れてみれば無限の可能性の扉が開くこともある」と悟った青年実業家は、40歳を迎えた今、三刀流以上の挑戦を本格化させていく。

◆嵜本晋輔(さきもと・しんすけ)1982年(昭57)4月14日、大阪・八尾市生まれ。関大第一高から01年G大阪入り、03年で退団。04年佐川急便大阪で現役引退。父の経営するリユース店で修業し、11年に独立し、ブランド品のリユースに特化したSOU創業、18年3月に東証マザーズ株式上場。20年3月にバリュエンスホールディングスに社名変更。179センチ、66キロ。家族は夫人と2男。

https://www.nikkansports.com/

Share Button