谷晃生、大迫敬介 サッカー日本代表の次世代GK…1歳違い 五輪でもライバル
かつて、1学年違いの川口能活(現19歳以下日本代表GKコーチ)と楢崎正剛(日本サッカー協会=JFA=コーチ)が10年以上にわたり争った日本の守護神の座。そんな互いを高め合うライバル関係をほうふつとさせる2人が、4強入りした東京五輪代表の谷晃生(湘南)と大迫敬介(広島)だ。
21歳の谷はG大阪の育成組織で育ち、U―15(15歳以下)から世代別代表に名を連ねてきた。1メートル90の恵まれた体格に、安定したセービングや広い守備範囲を備え、期限付き移籍した湘南で花開いた。東京五輪では全6試合にフル出場し、PK戦にもつれたニュージーランドとの準々決勝では、2人目を止めて4強入りの立役者となり、大会後にはワールドカップ(W杯)アジア最終予選のメンバーに抜てきされた。協会が手塩にかけて育ててきた、「次世代」の守護神候補だ。
五輪での活躍に端正な顔だちもあって大きな注目を浴び、「いいプレーも悪いプレーも目立つようになった」。雑音も聞こえてくるようになり、「僕はPKを止めただけ。よく見られすぎている」とかさ上げされた評価に、戸惑いを覚えるようになった。
「思い描いていた通りステップアップできた」というフル代表でも、正GKの権田修一(清水)、3度のW杯経験を誇る川島永嗣(ストラスブール)の高い壁にぶつかった。「言葉だけでは表せないうまさがあった。すごみすら感じた」。2人の牙城を崩せず、出場機会は得られないまま。今季のJ1ではミスも目立ち、湘南の山口智監督は「チームが勝てずに背負うものが大きくなって、崩れるところもあった」と、先発から外すこともあった。
最も世界と差があるポジション、日本サッカー界の未来担う
入れ替わるように調子を上げてきたのが22歳の大迫敬だ。東京五輪世代の代表で正GKを務めてきたが、大会前に急成長した谷に定位置を奪われた。広島でもポジションを譲る機会が増え、今季も開幕から第2GKに甘んじた。だが、初先発した4月2日の湘南戦で初勝利をもたらすと、チームは5戦負けなしで浮上し、レギュラーに返り咲いた。
今月20日に発表された代表メンバーに、谷と入れ替わりで選出。森保一監督は「今、大迫敬が非常にいい。2人とも入れることも考えたがフラットに見た」と語り、大迫敬は「すごく苦しい思いもしたが、ずっと目指していた。ここからが本当の勝負」と力を込めた。
発表翌日に行われたJ1の湘南―神戸戦。谷は吹っ切れたように好セーブを見せ、チームのホーム初勝利に貢献した。「代表から外れたのは必然だと思う。パフォーマンスを出し続ける難しさがあった。(代表に戻るためには)チームとして結果を残すことが必要」。最も世界と差があるポジションと言われるGK。若き2人の競争が、日本サッカーの未来を押し上げていく。(星聡)
連載「日本代表サバイバル」
W杯開幕まで、半年を切った。カタールへ行くために、そして世界の強豪と戦う舞台に立つために。「サムライブルー」を目指す戦いも、熱を帯びていく。



