今年の「J1残留争い」は超激戦に? 最下位の神戸は上昇気配、“危ないチーム”はどこ〈dot.〉
2022年のJ1リーグ戦は、全34節中16節(広島、G大阪のみ15試合消化)まで終了した。前評判の高かった横浜FM、鹿島、川崎の3チームが“予想通り”に優勝争いを繰り広げている一方、“予想外”のチームが下位に低迷している。
最も大きく期待を裏切っているのが、現在、勝点11(2勝5分9敗)の最下位に沈んでいる神戸である。各ポジションに経験豊富なビッグネームを揃え、先日発表されたチーム人件費でも断トツのトップとなる50億5200万円(2位は川崎で36億3000万円)を計上した“金満クラブ”。オフに槙野智章、扇原貴宏、汰木康也らを補強し、昨季3位からのJ1初制覇へ意気込みを見せていたが、蓋を開けてみれば開幕7戦未勝利(4分3敗)で三浦淳寛監督を解任。その後も状況は好転せず、未勝利は開幕11戦(4分7敗)まで続いた。
とにかく噛み合わなかった。開幕戦で退場者を出しての黒星で出鼻を挫かれると、ACL参戦による過密日程の中で故障者も続出して悪い流れを変えられず。元々個人能力に頼る部分が多かったチームは、開幕11試合中7試合でボール支配率60%以上を記録しながら、アタッキングサードでの工夫と迫力を欠き、11試合でわずか5得点(1試合平均0.45得点)。その中で無理にボールを繋ごうとしたところを奪われてカウンターの餌食となり、11試合で計18失点(1試合平均1.64失点)を喫した。特に退団したDFフェルマーレンの穴が大きく、3月に今季絶望の大怪我を負ったMFサンペールの不在も痛感。時折、“名手”イニエスタがピッチに魔法をかけたが、大迫勇也のコンディションが上がらず、黒星を重ねる度にチームは自信を喪失していった。
それでも第8節から経験豊富なロティーナ監督が指揮を執ると、即効性こそ欠きながらもチーム状態は徐々に上向き傾向。開幕から12試合目の鳥栖戦で4対0のスコアで待望の今季初勝利を飾ると、第16節の札幌戦で再び4対1の大量得点で勝点3を獲得。武藤嘉紀が前線で存在感を見せ、サイドから汰木がドリブル突破でチャンスを演出。チーム全体での守備意識も高まり、最近5試合は計4失点。特に中断前の札幌戦で快勝したことは非常に大きく、試合後に「今日みたいに全員が気持ちのこもったプレーをすれば、必ずいい結果が付いてくる」と語った武藤の表情も晴れやかだった。まだ勝点11の最下位ではあるが「光」が見えており、自動残留となる15位まで勝点差4と、すぐ手の届く位置につけている。個々の能力は高く、ロティーナ監督の戦術がこのまま浸透し切れば、J1残留はそれほど難しいものではなくなる。
6月18日のリーグ戦再開以降、神戸が期待通りに白星を積み重ねていった場合、現在17位・湘南(勝点13)と16位・清水(勝点13)の2チームは非常に苦しい状況に追い込まれる。湘南は第15節で王者・川崎を4対0で撃破したことで自信をつかみ、清水は5月30日に平岡宏章監督との契約を解除して危機感を共有して浮上のキッカケにしたいところ。そして退団したルキアンの穴を埋められていない15位の磐田(勝点15)も1年での即J2逆戻りの危機にあり、さらに14位の浦和(勝点15)、13位のG大阪(勝点17)もなかなか調子が上がらず。夏場の戦いに失敗すれば、かつて“ナショナルダービー”とも称された2チームによる残留争いが展開される可能性もある。
それでなくとも、例年以上に今季は上位と下位の力の差を感じない。18チーム編成の残留の目安となる「勝点30」のラインが上昇し、史上稀に見るハイレベルな残留争いとなった2018年(17位の柏が勝点39で自動降格)に匹敵する予感も漂う。そうなれば、34試合中16試合を終えて勝点19の福岡、勝点20で並ぶ京都、名古屋、札幌も安心できる立場にはない。まずは約3週間のリーグ戦中断期間を有効に使い、チームを再整備できるかどうか。その意味でも再開初戦の戦いは非常に重要。史上初の冬開催となるW杯カタール大会の影響で、今季のJ1最終節は例年よりも1カ月早い11月5日に組まれている。「まだ6月」だと、悠長に構えてはいられない。



