“5.4億円級の守田英正”に強豪移籍の噂… 同等以上の成長率、市場評価アップした日本人は?〈ポルトガル勢の活躍度をA~C評価〉
今月15日、ポルトガルリーグが閉幕した。
このリーグは欧州5大リーグ(イングランド、スペイン、ドイツ、フランス、イタリア)に次ぐレベルにあり、ビッグクラブへのステップアップを夢見て世界各国から精鋭が集う。
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今季は日本人7選手がプレーし、うち4人がレギュラーとしてシーズンを終えた。今季、欧州でプレーした日本人選手は60人いるが、ベルギーリーグの14人、ドイツ・ブンデスリーガ(1部、2部)の12人に次いで3番目に多い。
誠に僭越ながら、各選手の21-22シーズンにおける活躍ぶりについて――ポルティモネンセ副会長ロブソン・ポンテの寸評を交えつつ、A~C評価の“通信簿”を手渡したい(※市場価格は「transfermarkt」より)。
守田についてはポンテも「敵ながら素晴らしい選手」
<MF守田英正(27、サンタクララ、日本代表、元川崎フロンターレ)>:A リーグ28試合1得点1アシスト、カップ9試合1得点1アシスト 計38試合(3102分)2得点1アシスト 市場価格:開幕時300万ユーロ(約4億円)→現在400万ユーロ(約5.4億円) 日本代表でのプレーを含め、今季、著しく評価を高めた。
昨年1月にサンタクララへ完全移籍し、すぐにレギュラー。今季も絶対的なレギュラーで、攻守両面でチームに貢献した。ポルティモネンセのロブソン・ポンテ副会長(元浦和レッズ)も、「敵ながら素晴らしい選手」と絶賛していた。
昨年10月のホームでのオーストラリア戦以降、日本代表でも中盤に欠かせない存在となっているのはご存知の通り。昨年来、イングランド、トルコなどのクラブからオファーを受けていたが、今年に入ってからポルトガルの強豪スポルティングが熱烈なラブコールを送っている。
スポルティング移籍は「時間の問題」?
スポルティングは首都リスボンに本拠を置く強豪で、ポルトガル代表FWクリスティアーノ・ロナウド(現マンチェスター・ユナイテッド)の出身クラブ。昨季のポルトガル王者で、今季も2位で来年の欧州チャンピオンズリーグ出場権を獲得。守田本人とはすでに合意しているとされ、地元メディアは「移籍決定は時間の問題」と報じている。
サンタクララは離島に本拠を置くため、アウェーゲームの際には常に長時間移動を強いられ、肉体的な負担が大きい。スポルティングへの移籍が実現し、来季、そこでもポジションを獲得するようなら、世界トップクラブへの道筋が見えてくる。
守田と同等以上の成長度を見せた選手って誰?
<FW藤本寛也(22、ジウ・ヴィセンテ、東京ヴェルディから期限付き移籍):A リーグ32試合3得点2アシスト、カップ3試合1アシスト 計35試合(2615分)3得点3アシスト 市場価格:70万ユーロ(約9400万円)→200万ユーロ(約2.7億円) “成長率”で言えば、守田以上かもしれない。
左足から絶妙のパスを繰り出すゲームメーカーで、スペースへ走り込んで自らゴールも狙う。2020年8月、東京Vから1年間の予定で期限付き移籍。リーグ戦27試合に出場して1得点3アシストを記録した。
この唯一の得点がスポルティング戦で左斜め後方からのクロスに飛び込んで左足ボレーで叩き込んだビューティフル・ゴールで、クラブが彼の存在能力を高く評価して東京Vに移籍期間の延長を願い出た。
今季は背番号10を担い、トップ下、2列目右サイドなどで躍動。リーグ戦で、出場停止の2試合を除く32試合すべてに先発し、攻撃の軸としてチームの5位躍進に貢献した。なおポルティモネンセのポンテ副会長も、「カンヤはすごく伸びた」と驚いていた。
東京Vからの期限付き移籍は6月末で満了するが、来季もジウ・ヴィセンテでプレーするのか、東京Vへ戻るのか、あるいは欧州の他クラブへ移るのか――。 来季、さらなる成長を遂げるようなら、日本代表に初招集される可能性が高い。
田川はJリーグ時代よりも得点率が4倍近くなった
<FW田川亨介(23、FC東京から期限付き移籍)>:A- リーグ12試合(480分)5得点 市場価格:50万ユーロ(約6700万円)→65万ユーロ(約8700万円) 屈強で、スペースへタイミングよく飛び込み、思い切ったシュートを放つストライカーだ。
今年1月、サンタクララに加わり、2月のボアヴィスタ戦で後半途中から初出場。その直後、右後方からのシュート性のパスにタイミング良く飛び込んで左足を合わせて初得点。チームに勝利をもたらした。
しばらく途中出場が続いたが、4月10日、エストリル戦で初先発して2点目。以後、先発で起用されるようになり、エストリル戦を含む3試合で4得点と爆発した。
シーズン途中の移籍でありながらすぐにポルトガルのプレースタイルと生活に適応し、控えから始めてポジションを勝ち取ったことは、潜在能力の高さと精神的な逞しさの証だろう。
サンタクララでの90分あたりの得点率は0.94で、Jリーグ時代(2017年から18年までサガン鳥栖、2019年から21年までFC東京)の得点率0.24の4倍近い。短期間にこれほど成長した選手は少ないのではないか。来季もサンタクララでプレーする見込みで、さらなる活躍が楽しみだ。
ポルティモネンセで復活しつつある中島翔哉の評価は……
<FW中島翔哉(27、ポルティモネンセ、元日本代表、元東京ヴェルディ、FC東京など。ポルトから期限付き移籍)>:B+ リーグ22試合1得点3アシスト、カップ3試合1得点2アシスト 計25試合(1982分)2得点5アシスト 市場価格:350万ユーロ(約4.7億円)→350万ユーロ(約4.7億円)
2017年8月にFC東京からポルティモネンセへ移籍し、最初のシーズンにリーグ戦29試合で10得点12アシストと大ブレイク。日本代表にも招集され、アル・ドゥハイル(カタール)を経て2019年7月に強豪ポルトへ迎え入れられた。しかし、コロンビア代表FWルイス・ディアス(現リバプール)とのポジション争いに敗れ、アル・アイン(UAE)へ半年間貸し出された後、昨年8月末、今年6月末までの期限付きで古巣ポルティモネンセへ復帰した。
アル・アイン在籍中の昨年2月に負った腓骨骨折と靭帯損傷のリハビリを終え、10月下旬にリーグ戦で初出場。以後、先発出場を続け、チームの攻撃の中心として活躍している。
以前と比べると得点が少ないが、クラブ副会長のポンテは、「故障をして長期間の治療とリハビリを余儀なくされると、ベストコンディションを取り戻すには多少の時間がかかる」と説明する。
それでも、今月14日のリーグ最終節でバー直撃のミドルシュートを放ち、決勝点のお膳立てもして、地元紙からこの試合のMVPに選ばれた。ポルティモネンセへの期限付き移籍は、6月末まで。ポルトとの契約は2024年6月末まであるが、今季、ポルトは中島抜きでリーグを制覇しており、来季の戦力構想に入る可能性は高くない。
期限付き移籍を延長して来季もポルティモネンセでプレーするのか、あるいは他クラブへ貸し出されるのか――。どこでプレーするにせよ、中島の完全復活を期待したい。
マンCが保有権を持っている食野はどうだったか
<MF食野亮太郎(23、エストリル、元U-23日本代表、元ガンバ大阪、マンチェスター・シティから期限付き移籍)>:C リーグ9試合1得点、カップ2試合0得点 計11試合(218分)1得点 市場価格:450万ユーロ(約6.1億円)→400万ユーロ(約5.4億円)
スピードとテクニックを生かしたドリブル突破と巧みなシュートが持ち味の左ウイング。2019年8月にガンバ大阪からマンチェスター・シティへ移籍したが、すぐにハーツ(スコットランド)へ貸し出された。2020年9月からポルトガル1部リオ・アヴェへ期限付き移籍した後、今季はエストリルへ貸し出された。
昨年8月のアロウカ戦に途中出場すると、左サイドを引きちぎって中へ切れ込み、右足でシュートを決めた。しかし、その後はポジションを奪い切れず、今季のプレー時間合計は218分だった。
エストリルへの期限付き移籍は6月末に満了するが、現時点で来季の所属先は不明。まだ若いだけに、捲土重来を期待したい。
来シーズンこそレギュラー奪取をしたい2人の日本人
<GK中村航輔(27、ポルティモネンセ、元日本代表、元柏レイソル、アビスパ福岡):C リーグ2試合、2失点、カップ1試合0失点 計3試合(270分)2失点 市場価格:50万ユーロ(約6700万円)→40万ユーロ(約5400万円) 的確なポジショニングと鋭い反射神経が持ち味。柏レイソルのアカデミー出身で、2013年にトップチームへ昇格したものの、当初は故障もあって出場機会が少なかった。しかし2015年、アビスパ福岡へ期限付き移籍して経験を積むと、2016年に柏へ復帰して今度はレギュラー。2017年には日本代表に初招集された。
2018年ワールドカップにも招集されたが、出場機会はなし。その後、度重なる故障もあって柏での出場機会が減り、昨年1月、ポルティモネンセへ完全移籍。以来、ブラジル人、イラン人らとポジション争いを続けている。
昨季は出場機会がなく、今季は昨年11月のカップ戦、今年1月のリーグ戦でピッチに立った後、今月14日のリーグ最終節に3カ月半ぶりに出場。2度の決定的なピンチを見事に防ぎ、勝利に貢献した。
今季、絶対的なレギュラーだったブラジル人GKが好条件のオファーを受けて移籍する可能性があり、そうなれば来季のレギュラー奪取が期待できる。
ガンバから移籍の川崎は負傷に苦しんだシーズン
<FW川崎修平(21、元ガンバ大阪)>:C 出場なし 市場価格:30万ユーロ(約4000万円)→30万ユーロ(約4000万円) 巧みなドリブルで突破し、右足で強烈なシュートを叩き込む。昨年8月末にガンバ大阪からポルティモネンセへ完全移籍し、9月末から12月までU-23のリーグ戦7試合に出場した(無得点)。
しかし、年末に右肩、今年初めに右膝を痛めて手術を行ない、リハビリを経て4月末にようやく練習に復帰した。ただし、公式戦に出場できないままシーズンが終わってしまった。
故障したのは不運だったが、まだ若い。来季以降に期待したい。