【番記者の視点】G大阪、10人の神戸から4試合ぶり得点 ゴール欠乏症の出口は見えたか
◆明治安田生命J1リーグ第12節 G大阪2―0神戸(8日・パナソニックスタジアム吹田)
DF権敬源のヘディングシュートがネットを揺らしても、片野坂知宏監督は一抹の不安に駆られたいう。「またVARが入って取り消されるんじゃないか。本当に大丈夫か、と。素直に喜べなかったです」。前半からシュートがポストやバーに3度も嫌われ、CKからネットを揺らしてもファウル判定で取り消されたシーンもあった。リーグ戦のゴールは4月10日の清水戦以来、4試合ぶり。指揮官が疑心暗鬼になったのも無理はなかった。
前半34分に神戸DF菊池が退場。しかしその前から、得点の匂いは漂っていた。リーグ戦2試合目の先発となった18歳MF中村仁郎だ。前半23分、中盤で相手のミスをついてボールを拾うと、そのまま得意の左足でミドルシュート。バーに嫌われJ1初ゴールは逃したが、ボールを持てばゴールへの最短距離を目指したルーキーが、チームの攻撃をけん引した。
また数的有利となり、引き分けも許されない展開も背中を押した。右サイドバックから何度も攻撃参加したDF柳澤は「全員がゴールへの意識を高く持って、トライしたことが形になった。相手も少ないですし、後ろで守っていても意味がなかった。攻撃を助ける意識で走りました」と振り返った。後半途中から5バックで守備を固めた神戸に対し、DFラインの背後を狙い続けたことで計11本ものCKを奪取。後半36分、この日10本目のCKから柳澤が放ったシュートが相手DFに当たり、権のJ初ゴールにつながった。
相手が10人だったから。そういってしまえば身もふたもないが、3試合連続の無得点の重圧から解放されたことは大きい。後半ロスタイム、試合を決める2点目を奪ったMFウェリントン・シウバもこれがJ初ゴール。「Jリーグでのファーストゴールを待ち望んでいましたし、プレッシャーも少し取れました」と本当にうれしそうな表情を浮かべていた。ルーキーの台頭、セットプレー、さらに助っ人ふたりのJ初ゴール…。運も味方したが、この試合で約1か月間悩みの種だった“ゴール欠乏症”の解消に向け、きっかけをつかんだことは確かだ。