【番記者の視点】1本のパス悔やんだG大阪MF中村仁郎 18歳レフティーが示した可能性
◆明治安田生命J1リーグ第10節 FC東京2―0G大阪(29日、国立)
大雨の国立競技場に4万3125人の観客が集まった一戦で、G大阪はFC東京の“引き立て役”に終わった。0―2の完敗。公式戦は3試合連続の無得点とチーム状況は厳しく、順位も14位まで後退した。しかし後半開始から自身J1最長の45分間出場した18歳のMF中村仁郎のプレーに、飛躍の可能性を感じることができたのは数少ない収穫だった。
後半17分、左サイドで1対1を仕掛け、中央へクロス。同37分には右サイドからのFKをFWパトリックの頭に合わせてネットを揺らしたが、オフサイドでノーゴールに。後半42分には、斜め後ろからのパスを左足でピタッと止め、間髪入れずにFWレアンドロ・ペレイラへスルーパス。どれも得点にはつながらなかったが、攻撃センスの一端は披露した。この日までJ1での出場時間は、4月17日・湘南戦の13分が最長。「今までも、これぐらい(45分間)試合に出れば、今日ぐらいのパフォーマンスを出せる、という自信はあった」という言葉も頼もしかった。
しかし本人は「しっくりこなかった場面もあった」と浮かない表情も見せていた。それが後半42分にみせたスルーパスのシーン。「(パスは)通ったんですけど、自分の思っていたよりボールが緩くなった。思っていた通りに出せれば、ゴールにつながったんじゃないかと思います」。確かにパススピードがもう少しあれば、レアンドロはよりフリーでシュートを打てた状況だった。シュートが外れた直後、レアンドロ以上に悔しがっていた理由は、自身のミスを自覚していたからだった。
165センチ59キロという小柄な体格で「自分はきょうのピッチに立っていた22人の中で、一番弱かったと思う。そこは改善しないといけない」と本人も語るように、フィジカル面は課題が残る。同級生のFC東京MF松木が、この日もルーキーとは思えないフィジカルの強さを見せていたことに「(松木)玖生は平均以上にやれている」と悔しさもにじませていた。
FW宇佐美貴史が長期離脱しているG大阪の前線は、一瞬で局面を変えるアイデアや、ドリブルでの仕掛けなど、整った相手の守備を崩す一手の不足に陥っている。中村がその“役”をこなせるのであれば、まだ未熟なフィジカル面に目をつぶっても起用する価値はある。ただ、そこにはゴールやアシストという数字が必要だ。この日のスルーパスのように、わずかなミスも突き詰めてワンプレーに向き合い、結果につなげられるか。16歳でJ3デビュー、17歳でJ1デビューを果たした次世代のブレーク候補が、J1の舞台で殻を破ることを期待したい。