【番記者の視点】大阪ダービー、史上初のスコアレスドローはなぜ起こったか…G大阪から見た視点
◆YBCルヴァン杯 ▽1次リーグA組第5節 C大阪0―0G大阪(23日・ヨドコウ)
決定機と呼べるシーンは、後半ロスタイムにFWレアンドロ・ペレイラが放ったヘディングシュートのみだった。C大阪の固いブロックを崩し切れず、史上初のスコアレスドローとなった大阪ダービー。G大阪に得点が生まれなかった理由は、FWパトリックという“飛び道具”に頼らない攻撃スタイルにチャレンジしたから、と言える。
今季ここまで、前線の軸としてプレーしてきたパトリック。J屈指のエアバトラーとして、得点だけでなく、後方からのロングボールに競り勝って攻撃の起点となるなど貢献度は高い。だからこそ、片野坂監督が大阪ダービーで彼をベンチ外とした判断に、負傷などのトラブルを疑った。しかし指揮官は、その理由を総合的な判断と前置きした上で「パトリックが悪い、状態が良くないわけではない。自分たちがセレッソに対してどう攻撃するか、というところで、パトリックの生かし方がトレーニングを見ていて、まだ難しいかな、という判断です」と明かした。
この日は守備時は4―4―2、攻撃時は3―6―1に変化するシステムで、中盤での主導権を握ろうとした。MF小野瀬が「ビルドアップは改善された部分もあったと思う」と語ったように、回数は多くはなかったが、狙いとした形で起点をつくるシーンもあった。1トップの山見が裏への動きで相手最終ラインを押し下げ、DFとMFと間でFW坂本、MF福田がボールを引き出すという意図も垣間見えた。
また先発をFWレアンドロ・ペレイラではなく、18歳FW坂本に託した点も興味深かった。リーグ戦で途中出場から2ゴールを挙げているブラジル人FWではなく、無得点の18歳ルーキーを先発起用した理由を指揮官に聞くと、こんな答えが返ってきた。
「坂本は若いです、1年目です。先発からチャレンジさせて、得点や守備の貢献で貢献してくれる期待を込めました。ゴール前のところでは(坂本)一彩よりレアンドロの方が、もちろんいいものはあります。ただ90分のゲームで、自分たちが何にトライしているかと言えば、外国人選手含め、まだまだ自分たちは積み上げていかないといけない。足りないものはある。それがよくなれば、レアンドロの先発もある」
レアンドロの決定力はチーム屈指だが、守備の強度やチームのビルドアップを助けるプレーなどに課題を残す。得意なプレー以外でも、チームとして要求するレベルに達しなければ先発はさせない、という片野坂監督のポリシーがにじんでいる気がした。また無得点に終わった坂本に対し「先発で使っている中で、結果を出さないと。彼自身もまだまだ成長していかなければいけない」と注文を付けることも忘れなかった。
近年の大阪ダービー、G大阪は形よりも結果にこだわった戦い方をしてきたイメージが強い。この日は片野坂監督のこだわりが強く反映された試合に見えた。しかし試合後の会見、強い悔しさがにじんだ指揮官の表情を見ると、決して勝利を軽視したわけではないことは伝わってきた。この引き分けで、ルヴァン杯は1次リーグ敗退が決定。しかしリーグ戦の大阪ダービーは2試合とも未消化。この屈辱を晴らす舞台は残されている。