【番記者の視点】豪快ボレーでJ初ゴールのG大阪MFダワン 攻守に漂う“大当たり”の予感
◆明治安田生命J1リーグ第7節 京都1―1G大阪(6日、サンガS)
圧巻の一撃だった。1点を追う後半13分。CKのこぼれ球を、G大阪MFダワンが右足のダイレクトボレーでゴール右隅に突き刺した。浮き球にいち早く反応し、ボールの芯をしっかりととらえた低く鋭い弾道。新型コロナの影響で来日が遅れ、これがJ1出場2試合目のブラジル人MFが、初ゴールでその実力を十二分にアピールしてみせた。
試合は引き分けに終わり、本人は「得点できたのは素直に嬉しいですけど、勝ち点3を持って帰ることを望んでいた」と悔しがった。前節の名古屋戦に続き、MF斉藤とのダブルボランチで出場。京都のインサイドハーフ2枚に対し、マンツーマン気味に対応するという策もはまり、前半は斉藤とともに中盤で次々とボールを回収。球際の強さと労をいとわない献身的な守備で、チームにリズムをもたらした。
しかし前半45分、一瞬の隙をつかれて失点。追いかける展開となった後半、ダワンは同6分にミドルシュートでゴールを脅かし、同11分には絶妙なパスでFWパトリックの決定機を演出した。「テクニック的に器用な選手だとは思っていません。シンプルなプレーで、チームをフォローするところが持ち味」と語っていたが、その言葉が謙遜に聞こえるほどだった。
ブラジル代表歴など目立った経歴はないが、加入直後には自身のプレースタイルを元ブラジル代表MFパウリーニョに例えていたダワン。パウリーニョと言えば、ブラジル代表やトッテナム、バルセロナでの活躍に加え、中国・広州恒大でもプレー。高い身体能力を生かし、攻守で存在感を放った名ボランチだ。そのパウリーニョから学んだというポジショニング、さらに177センチと大柄ではないが、驚異的なジャンプ力から放つヘディングで、中盤のハイボール争いも制圧した。
Jリーグでプレーする中盤の選手は、技術が高いテクニシャンや、守備に気が利く小柄なハードワーカーは多いが、ダワンのように高さまで兼ね備えたタイプは少ない。さらにこの日見せたような攻撃力、言動からにじみ出る謙虚な姿勢も含め、“大当たり”の予感も漂う。J1ではまだたった2試合の出場。それでも25歳のブラジル人ボランチが、G大阪浮沈の鍵を握る存在になるのでは、と予感させたこの日のパフォーマンスだった。