Jリーガーの給料事情に宮澤ミシェル「もっとDFのヒエラルキーが高くなることを期待している」
サッカー解説者・宮澤ミシェル氏の連載コラム『フットボールグルマン』第246回。
現役時代、Jリーグ創設期にジェフ市原(現在のジェフ千葉)でプレー、日本代表に招集されるなど日本サッカーの発展をつぶさに見てきた生き証人がこれまで経験したことや、現地で取材してきたインパクト大のエピソードを踏まえ、独自視点でサッカーシーンを語る――。
今回のテーマは、Jリーガーの給料について。現状Jリーグで年俸1億円以上もらっている日本人選手の数を見て、宮澤ミシェルは「寂しい数値に感じる」と語った。
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Jリーグのデータをいろいろ見ていたら、とあるサイトでおもしろい数字に出くわしてさ。2022年にJ1リーグに所属する選手の年俸が網羅されていたんだよ。 1位はご存じのとおりアンドレ・イニエスタで20億円。次いで大迫勇也が4億円。3位から7位までの5選手は2億円をもらっているんだけど、それが酒井高徳、山口蛍、セルジ・サンペール、ボージャン・クルキッチ、武藤嘉紀。上位10傑のうち7位までがヴィッセル神戸なんだよな。
それでいて開幕から勝ち星なしとなれば、監督交代も止むを得ないのかもしれないね。個人的にはもうちょっと長い目で三浦淳寛に監督をさせてあげたかったけどね。
その話は改めてするとして、今回のテーマはJリーガーの年俸についてだよ。年俸と一括りで言うけど、年俸ってのは大きく分けて基本給と出場給の2つがあるんだよ。だから、1億円の年俸となっていても、それが基本給だけの数字なのか、出場給も含めたものかによって手取り額は変わるわけよ。
仮に基本給が8割、出場給が2割の合計が年俸1億円だとした場合、試合にまったく出られなければ、その選手が受け取る額は8000万円。まあ、実際にはもっと細かく設定されているものなんだけどさ。
こういうサイトが表記する年俸が意味するのは基本給だけなのか、それとも基本給と出場給を合わせたものかはわからないんだけど、ひとつの目安にはなるよな。
でさ、そのサイトによれば、今季のJ1で1億円以上の年俸をもらっているのは、30選手いるらしいんだよ。2月1日時点で公表されているJ1の登録選手数は555人だから、1億円プレイヤーは全体のわずか5.5%しかいない。これってやっぱり寂しい数値だと感じちゃうよな。
しかも、そのうちの16人は外国籍選手だからね。日本人の若手選手がどんどん海外に出ていっちゃうのも、金銭面から見ても頷けちゃうわけよ。もちろん、それが海外移籍のメインの理由じゃないにしてもだよ。
気になったのは年俸1億円以上をもらっている14人の日本選手のうち、DFは4人しかいないってこと。酒井高徳、昌子源(ガンバ大阪)、槙野智章(神戸)、酒井宏樹(浦和)。ちなみに、高徳以外の4選手は1億円で、31番目が長友佑都(FC東京)で9500万円なんだってさ。
サッカーは得点を奪うのが難しいゲームだったから、歴史的に見ても攻撃的な選手の価値が高かった。だから攻撃力の高い選手が高年俸を受け取る。そこはDF出身者としても受け入れざるを得ないよ。
でも、これから先も年俸のヒエラルキーがそのままでいいのかといえば、変わってもらいたいと思っているし、時とともに変わっていくんじゃないかって予想しているんだ。
それはサッカーのルールが攻撃側が有利になるようにどんどん変更になってきたのに、また新たにオフサイドのルールが改訂されることになった。今度は体の一部がオフサイドラインに残っていればいいってものに変わるんだよ。
DF側から言わせてもらえば、それはもうオフサイドなんてないも同然だからね。
極端なことを言えば、スピードスケートの選手がゴールの瞬間に足を前に出すでしょ。体の一部がゴールラインを越えれば時計が止まるから。あれとは逆の動きだって、認められる可能性はあるからね。オフサイドの位置にいて、味方がパスを出す瞬間にだけ、DFラインのところに足を伸ばしてオフサイドをかいくぐる。それがOKなら、DFにしたら止めようがなくなっちゃうよな。
ただ、そういう時代になればゴールを決めることの価値が下がるわけじゃないですか。逆にゴールチャンスの芽をスピードと強さでビシバシ摘めるDFが現れれば、そっちの方が価値が高くなる。なかなか脚光を浴びることのなかったDFにスポットライトが当たる時代になるかもしれない。そうなった時にはDFの年俸が高騰するのを期待しているんだよ。果たして、次の時代のサッカーは、どうなっていくんだろうね。