「継続」か「刷新」か。早くも実現するJ1昇格候補の直接対決。注目のマッチアップは?【英国人の視点】

明治安田生命J2リーグは第3節までを消化した。3連勝の横浜FCに続くのは、勝ち点7で並ぶファジアーノ岡山とFC町田ゼルビア。13日に激突する両者は、対照的なチーム状況にありながらも、好スタートを切ることに成功している。

 まだまだシーズンは序盤戦が始まったばかり、リーグ順位表に真剣に目を向ける時期ではない。とはいえ今週末に行われるFC町田ゼルビア対ファジアーノ岡山戦を通して、どちらが来季のJ1昇格を本格的に争うことになるのか、あるいは両方になるのか、現段階での見通しを得ることができるかもしれない。

両チームともにここまで3試合を戦い、勝ち点9ポイントのうち7ポイントを着実に確保している。ゼルビアはFC琉球との開幕戦こそ不満の残る0-0で終えたが、いわてグルージャ盛岡(1-0)とツエーゲン金沢(2-1)に連勝。ファジアーノも徳島ヴォルティス戦の引き分け(1-1)を挟みつつ、ヴァンフォーレ甲府(4-1)と栃木SC(1-0)から勝利を挙げた。

昨季のスタートと比較しても改善がみられる。2021年の町田は開幕から7試合で2勝にとどまっていた。岡山もJ2序盤の9試合で勝ち点3を獲得したのは2回のみ。それぞれ現体制でのチーム作りの段階は異なっているとしても、見通しが明るいことは共通している。

町田の昨季の順位は5位で、もしプレーオフが開催されていれば出場できるはずの成績だった。2度目の就任から3年目を迎えているランコ・ポポヴィッチ監督の目標は、少なくともその昨季の成功をもう一度実現させることだ。

●期待を持たせる町田ゼルビアの陣容

昨季の主力メンバーのうち、町田を去ったのは保有元クラブへ戻った吉尾海夏のみ。補強が完了したのはポポヴィッチ監督が望んでいたより遅い時期になったとはいえ、ポープ・ウィリアム、翁長聖、菅沼駿哉、山口一真、ヴィニシウス・アラウージョらの獲得により、今季のチームは重要なポジションで選手層の厚みを増している。

だが、おそらく新戦力以上に重要なのは、平戸太貴が引き続きゼルビアの10番を背負い続けているという事実だ。鹿島アントラーズから期限付き移籍した2017年、2018年に印象的な活躍を残した。2019シーズン開始時には一旦鹿島へ戻ったが、J1の強豪ではなかなかチャンスを得られず、その年の夏には完全移籍で町田に帰還。以来、J2で最も安定して確かなパフォーマンスを発揮し続ける選手の一人となっている。

24歳の平戸はチームの攻撃面の大半を指揮し、セットプレーから大きな脅威をもたらすのに加えて、自らも町田再加入以来21得点を記録している。そのうちの2つは今季の成績に大きく寄与している。グルージャ戦の決勝ゴールと、先週末のアウェイの金沢で逆転勝利に繋がった同点ゴールだ。

中島裕希、ドゥドゥ、そしてツエーゲン戦の終了間際に冷静なフィニッシュで勝ち点3をもたらした鄭大世というベテランFW陣の存在に加え、昨年のモンテディオ山形で14得点を記録したヴィニシウス・アラウージョも新たに加入した。平戸がゴールをお膳立てできる相手は揃っている。同じ鹿島出身の山口も2020年の水戸ホーリーホックで見せたような調子を取り戻すことができれば、創造的なプレーの部分で平戸の負担を軽減できることにも繋がるだろう。

同じくファジアーノも、今季は攻撃陣に確かな戦力を誇っている。

●生まれ変わったファジアーノ岡山

2020年に率いたベガルタ仙台では不本意な結果に終わったとはいえ、ファジアーノを率いる木山隆之監督は、2部リーグでは高評価に値するチームを構築できることを過去に何度も示してきた指導者だ。

50歳の木山監督はこれまで、ジェフユナイテッド千葉(2012年)、愛媛FC(2015年)、モンテディオ(2019年)をいずれもプレーオフ出場に導いてきた。

シティライトスタジアムで指揮を任された今季も、移籍市場でクラブから手厚い支援を受けることができている。有馬賢二監督に率いられ11位でシーズンを終えた昨季のファジアーノは、堅実ながらも面白みに欠けるチームだったが、そこにクオリティーの高い新戦力を数多く補強。町田が人員の継続性に重点を置いたのとは対称的に、ファジアーノは刷新を選んだ、というより選ばざるを得なかった部分もあるかもしれない。昨季レギュラー陣の半数を手放す一方で、多くの新顔を迎え入れることになった。

その中でも、ヨルディ・バイスと柳育崇が組む新生CBコンビは早速際立ったパフォーマンスを見せている。それぞれ186cm、188cmという高さだけが理由ではない。

●特筆すべきCBコンビの実力とは?

V・ファーレン長崎、徳島、京都サンガとどのクラブでも強い存在感を示してきたオランダ出身のバイスは、先日の栃木戦で勝利に繋がる素晴らしいFKゴールも決めてみせた。柳もまた、自陣ペナルティーエリア内だけでなく相手ゴール前でも力を発揮するタイプだ。栃木では過去2年間で計14得点を記録しており、8得点の昨季はチーム得点王としてシーズンを終えていた。

同時に岡山には、得点面を担当する本職ストライカーも揃っている。オーストラリア代表のミッチ・デュークを引き留められたことも非常に大きかったが、さらにガンバ大阪からブラジル人FWチアゴ・アウベスも獲得。デビュー戦で自陣からのスーパーゴールを含めた2得点を記録するなど、ここまで3ゴールを挙げて強烈なスタートを切ることに成功している。

守備と攻撃の中間の部分でも第一印象は順調だ。岡山の新たな中盤3枚は攻守の切り替えにおいて絶妙なバランスを提供している。本山遥と田中雄大のルーキー2人は、木山監督によってすぐに起用され始めてもエネルギッシュかつ冷静なプレーを堂々と披露し、元清水エスパルスの経験豊富な河井陽介と補完し合っている。

その彼らと、2部リーグ屈指の中盤コンビである高江麗央・佐野海舟との激突も、日曜日の試合の注目ポイントのひとつとなりそうだ。町田ギオンスタジアムでの戦いが好勝負になることは間違いない。

リンク元

Share Button