「日本での引退は目標の1つ」 G大阪FWパトリック、かつて叶わなかった帰化への熱い想い
【独占インタビュー#2】「日本で長く暮らしたい」と2016年に決意
ガンバ大阪のブラジル人FWパトリックは、2013年の初来日から10年目と節目のシーズンを迎えた。日本語習得に向けて勉強を続ける心優しきストライカーに、日本への帰化に対する想いを聞いた。(取材・文=FOOTBALL ZONE編集部・小田智史/全3回の2回目)
【写真】「きれいな字!」G大阪FWパトリックが公開、努力の跡がにじむ“日本語勉強ノート”
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現在、Jリーグに所属する外国籍選手の中では、セレッソ大阪の韓国代表GKキム・ジンヒョンの14年目、柏レイソルのブラジル人FWドウグラスの11年目に次ぎ、3番目に長い10年目に突入したパトリック。9年間で歴代28位タイのJ1通算81ゴールという実績もさることながら、その日本愛は特筆すべきものがある。
ひらがなの文章を書いたノートや日本語を読む動画を自身のSNSに定期的にアップし、試合後のフラッシュインタビューでも、可能な限りは日本語で想いを伝える。日本食の「かつ丼」と「お好み焼き」が大好物で、「僕はブラジル人ですが、心は日本人」と公言する。そんなパトリックが帰化を目指すきっかけとなったのは、2016年だったという。
「日本人の方たちが自分に対して扉を開き、やさしい、親切な気持ちで迎えてくれました。日本に来て3年が経った頃、『もっとここ(日本)で長く暮らしたい』『日本代表への道も少なからずあるのであれば目指したい』と思いました」
帰化の条件を記した国籍法には、「(1)住所条件:引き続き5年以上日本に住んでいること」、「(2)能力条件:20歳以上(※2022年4月1日より18歳以上に変更)で本国法によって行為能力を有すること」「(3)素行条件:素行が善良であること」「(4)生計条件:生活に困ることがなく、日本で暮らしていけること」「(5)重国籍防止条件:無国籍であるか、原則として帰化によってそれまでの国籍を喪失すること」「(6)憲法遵守条件:日本の政府を暴力で破壊することを企てたり、主張しない者。そのような団体を結成・加入していないこと」が一般条件として明記。さらに、「日常生活に支障のない程度の日本語能力(会話及び読み書き)を有していること」が必要になる。
1日30~40分の日本語勉強を欠かさないというパトリック。その原動力となっているのは、「少しでも日本人の方に近づきたい」「直接サポーターの方とお話したい」という気持ちだ。
「日本語は覚える作業がすごく難しいです。特に、漢字ですね(苦笑)。でも、僕は書くのが好きなので、書いて覚えるようにしています。試合後のインタビューでは、間違えてしまったり、うまく話せないこともあるんですが、自分の言葉でみなさんに伝えたいという気持ちがあって、できる限り日本語で答えるようにしています」
2016年に大怪我が理由で一時帰国したことで18年は帰化が叶わず
2018年5月4日、パトリックは自身の公式インスタグラムに、「僕はすごく望んでたけど、残念ながら変えることははうまくいきませんでした。日本の為にプレーできる何かチャンスはあるかなあ?」と投稿。16年10月に右前十字靭帯損傷および右外側半月板損傷の大怪我を負い、ブラジルに一時帰国したことで、引き続き5年以上に日本にいるという条件を満たせず、日本への帰化が叶わなかった。
当時から、「自分の夢」と話していた日本への帰化は今でも諦めていないという。
「プレーヤーとしてすごくいい状態の時に、怪我をしてしまったのはすごく残念だったし、5年間が途絶えてしまったこともショッキングでした。もちろん、今も帰化を目指す気持ちはあります。直接会っての面接もあると聞いたので、質問されて何を聞かれているのか分からないのは嫌なので、もっと勉強して日本語のレベルを上げて、全部理解できるようにしたいです」
パトリックは日本でプレーを続け、プロサッカー選手としてのキャリアは日本で終えたいと思いを明かす。
「日本で引退することは目標の1つ。もちろん、クラブが引退まで僕を居させてくれれば、になりますけどね(笑)」 “自分の心は日本人”――。その言葉がすっと腑に落ちるのも、パトリックのあふれんばかりの日本愛があってこそだろう。
[プロフィール]
パトリック/1987年10月26日生まれ、ブラジル出身。パイサンドゥ―ヴィラ・リカ―サンタ・クルズ―サルグエイロ―イカザ―デモクラタ―ヴェラ・クルズ―サンジョゼ―アメリカーノ―ミスト―ヴァスコ・ダ・ガマ―ヴィラ・ノヴァ―アトレチコ・ゴイアニエンセ―川崎―甲府―フォルトレーザ―ガンバ大阪―広島―ガンバ大阪。J1通算236試合81得点。強靭なフィジカルと決定力を武器に、最前線で存在感を発揮する生粋のストライカー。来日10年目、日本への愛は外国籍Jリーガーの中でも随一を誇る。



