【セルジオ越後】王者川崎が早くも初黒星、疑惑の一発退場… Jリーグは波乱含みの幕開けだね
フロンターレの敗戦はまったく予想できなかったことじゃない
2022年のJリーグが開幕したね。今年は11月下旬に開幕するワールドカップもあって、11月上旬には全日程が終了する異例のスケジュールで、選手たちにとっては相当過酷な日程になるのは間違いない。そのうえ、コロナ禍が収まる気配もなく、早くも中止となったゲームが複数ある。前途多難なシーズンを予感させているね。
【動画】2019年の得点王が魅せた! 川崎相手に美しい弧を描いたゴラッソ!!
そんななかで、昨シーズンも2位以下に圧倒的な差をつけてリーグを連覇したフロンターレが早くも2節で、昨季2位のマリノスに土を付けられた。この結果も何か波乱含みの展開を漂わせているけど、まったく予想できなかったことじゃない。
一昨年のシーズンから中村憲剛をはじめ、守田や田中、三笘と次々に主力が抜けて、昨シーズン終了後には旗手も海外移籍で退団してしまった。もちろん、脇坂や橘田が成長したり、大島が復帰したりとプラス要素もあるけど、やっぱり去年までとすべて同じ質でやれているわけじゃない。例えば左サイドもマルシーニョが頑張っているけど、決して三笘と同じレベルで結果を残せてはいない。海外からビッグネームや実力派の助っ人を連れてくるのも難しいご時世で、戦力アップもままならない現状だ。
そのうえ、開幕戦や2戦目を見る限りではジェジエウの不在も大きいよ。去年、シーズン中盤からマリノスに追い上げられながらも逃げ切れたのは、やっぱり後ろがしっかり守って僅差のゲームをモノにできていたから。後ろが耐え切れず崩れてしまうと、やはりマリノス戦のようなゲームになってしまうだろうね。
ただし他を見ても、飛び抜けた力を持つチームは見当たらない。マリノスにしても初戦はセレッソと引き分けているし、スーパーカップでフロンターレを下したレッズも、久しぶりに昇格した京都サンガに敗れてしまった。まさに団子状態のリーグ戦を象徴するようなシーズンの立ち上がりになっている。
そうしたなかで、開幕前に僕が注目チームとして挙げていたのがこれまでのブラジル路線から欧州路線に変更したアントラーズ。初戦は、ガンバ戦に3-1で快勝したけど、パトリックが前半で退場になった件もあるし、まだちょっと本当の力が見えてこない。そういう意味でも、3節で対戦するフロンターレとの対戦は序盤戦の大きな見どころになりそうだね。
Jリーグはもっと審判のステイタスや責任について考えるべき
開幕戦で話題となったのが前述したガンバ対アントラーズの一戦で起きたパトリックの一発退場だった。パトリックがアントラーズの鈴木ともつれ合って、ラフプレーをしたという判定だったようだけど、実際には彼の腕が当たったのかどうかも微妙なところで、映像では鈴木がパトリックの足を押さえつけているようにも見えた。主審によるオン・フィールド・レビューもなかったから物議を醸す結果となってしまったね。
不思議だったのは、なぜこのケースでオン・フィールド・レビューが発動されなかったのかということ。これだけ不確かな要素や現場で確認できていなかったことがあったにもかかわらず、主審もVAR側もなぜ映像で確認しようと(させようと)しなかったのか。これじゃあ何のためにVARがあるのか分からないよね。
一発退場というのは、試合展開をガラッと変えてしまう大きな出来事だ。場合によっては試合を壊してしまう可能性もある。そんなリスクもあることは重々分かっているとは思うが、カードを出す立場の主審はそれを肝に銘じてほしい。ゲームを面白くするのも、つまらないものにしてしまうのも審判の判断に委ねられている部分は大きいよ。
でも、だからこそ僕は審判の待遇や職業としてのステイタスを上げると同時に、審判の責任をもっと重く見るべきだと思うんだ。選手は勝つか負けるかに自分のサッカーキャリアや人生を懸けてやっている。結果を残せたかどうかで、周りの評価や年俸にも響いてくる。
もちろん、審判側だって「いや俺たちも人生懸けてやっている」という人もいるかもしれないけど、今回のようにいわくつきの判定が起きても、審判委員会やJリーグは何も見解を出せないじゃない。配信番組でちょっと取り上げた程度で、主審のほうは次の試合も何もなかったかのように笛を吹いているのに、パトリックは次の試合に出られなくなって、鈴木のほうも「ファウルしてるじゃないか」と名指しされ疑惑の目で見られたりもしている。他のメディアも滅多に審判の名前を取り上げたりはしないよね。
最近はプロフェッショナル・レフェリーも増え始めているとはいえ、まだまだJリーグの審判は閉鎖的な組織で守られている存在だよ。海外だったら、疑惑の判定をした主審は大々的に名前を取り上げられて、ジャッジの正否もいろんな角度から分析される。別に誰かをつるし上げようというわけではなく、プロの世界で分析や考察は当然のこと。だからこそ、Jリーグも審判のステイタスや責任について、もう少し考えるべきじゃないかな。