よりフェアなサバイバルが今季は展開――“属人的”ではなく“標準的”な片野坂ガンバに期待

数的不利になるまでは、やろうとしていることは見て取れた

スターティングオーダーを目にした時、多くの人が驚かれたのではないだろうか。私は正直ビックリした。今季からガンバ大阪の指揮を執る片野坂知宏監督が送り出した開幕スタメン11人。その中にGK東口順昭の名前がなかった。ベンチ入りメンバーにもなし。

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「ヒガシ(東口)の状態が良ければ、開幕戦でプレーしてほしかったが……。怪我と言えば怪我です。1日でも早くコンディションを良くしてチームの力になってほしい」

1-3で敗れた鹿島戦後、指揮官は絶対的守護神の欠場理由をそう説明した。チームにとっては痛手なのは間違いない。だが同時に、明確な方針をチーム内外に示したともいえよう。

時計の針を1週間前に戻す。12日の完全非公開で行なわれたJ2クラブとの練習試合。東口が出場していなかったのではないか、という情報が流れた。ただクラブがSNSなどで提供する練習風景写真には写っていた。

開幕前ラストの練習試合を欠場したのであれば、どういう理由だったのかは定かではない。それでもグラウンドに姿を見せている以上(クラブによる情報戦だったかもしれないが)、開幕戦には多少無理してでも出てくるだろう――。ましてや片野坂監督にとってはG大阪での初陣であり、G大阪復権の第一歩。昨季までの実績を鑑みて、手堅いスタメンを組んだとしても理解できる。そう読んでいたが……。

「シーズンを通してメンバーは固定しない。トレーニングでやっている選手が試合に出るべき。ベテランでも若手でも、外国人でも。そこでの競争力が生まれることで、チーム力は上がる。開幕から最終戦まで変わらず、選手を刺激していく。ブレずにやっていきます」

2月7日のオンライン取材。確かに指揮官は、練習でのパフォーマンスありきを明言していた。その言葉を裏付けるように、鹿島戦で三浦弦太はベンチスタートだった。3バックにはサイドバックが主戦場の柳澤亘と髙尾瑠が昌子源の脇で陣取った。

そして試合後、あらためて「コンディションが100%の状態で、ファイトできる選手がピッチに立つべきだと思う。その中でベストな選手を立たせたい」と口にした。言葉にブレはなかった。

昨季のG大阪は負傷者多発でスタメンが固定できず、苦戦する一因になった。今季もコロナ禍で、さらに過密日程による負傷者も予想される。だがある程度のスタメン固定が必要だった去年までの“属人的”なサッカーではなく、片野坂監督のベースには攻守の“標準的(マニュアル)”なサッカーがある。

ミスによる失点はあったとはいえ、数的不利になるまではチームとしてやろうとしていることは見て取れた。誰が出ても、攻守の狙い目は明確に提示され、遂行しようとするだろう。

過去のチームに競争がなかったわけではない。ただ次の試合で誰が抜擢されるか分からない、よりフェアなサバイバルが今季は展開されるのではないか。そして多少の時間を要するかもしれないが、一つずつ積み上げた先のチーム力がどうなっているのか。

敗れてしまって残念という気持ちも強いが、今後が楽しみという気持ちも大きい開幕戦だった。

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