浦和は期待できる。一方、G大阪、磐田は? 3連覇阻止の本命クラブは?【英国人の視点】
12日に富士フィルムスーパーカップ(FUJIFILM SUPER CUP 2022)で、J1王者の川崎フロンターレと天皇杯王者の浦和レッズが対戦する。翌週にはJ1開幕が控えており、長く険しい戦いの日々が幕を開ける。川崎フロンターレの3連覇を阻止するチームは現れるか、そして、18チームに戻ったJ1で残留を争うのはどのチームなのか。2022シーズンの展望を占う。
●外国籍監督を招聘した鹿島アントラーズとサンフレッチェ広島
高校サッカーも女子アジアカップも、男子のワールドカップ予選もあり、ハイレベルなサッカーが中断していたという感覚はあまりないかもしれない。だが2021シーズンのJ1最終節からすでに2ヶ月半が経過し、新たなシーズンもすぐそこにまで迫ってきた。
オフ期間中には今回も、やはり色々な移籍の動きがみられた。今や恒例となった有望タレントの欧州進出に加えて、Jリーグクラブ間で目まぐるしく選手が移動したのもいつも通りだった。
現状では外国籍選手の日本入国に困難が伴うため、海外からの補強は今回もごくわずかにとどまった。その中で加入が決まった新外国籍選手も、新たなチームメートたちに合流できるのがいつになるのか依然として不確定な状況だ。
鹿島アントラーズとサンフレッチェ広島の新監督についても同じことが言える。レネ・ヴァイラーとミヒャエル・スキッベはそれぞれプレシーズンの初戦をリモートで指揮することを余儀なくされた。昨年の徳島ヴォルティスでダニエル・ポヤトスが経験したのと同じ状況であり、その徳島は結局シーズン最終節で降格の憂き目に遭う結末となってしまった。
上記2クラブがやや不透明な状況に置かれる一方で、ポジティブな兆候が感じ取れるクラブもある。昨季の成績が良かったクラブもあれば良くなかったクラブもあるが、3つのクラブの状況を見てみよう。
●期待の持てる3クラブとは…
浦和レッズは昨季リーグ戦を6位で終えたあと、12月19日には劇的な形で大分トリニータを2-1で下し、天皇杯王者として2021シーズンを終えた。大きな期待を感じさせたリカルド・ロドリゲス体制1年目を終えるのにふさわしい勝利だった。
昨季終盤にはベテラン選手たちが埼玉スタジアムに別れを告げたことが大きな話題となったレッズだが、新時代を迎えるため移籍市場でうまく立ち回ってきたと感じられる。
松崎快や知念哲矢、そして2017年に徳島で指導した馬渡和彰といったように、ロドリゲス監督は今回もJ2で活躍したタレントを獲得。また犬飼智也、松尾佑介、岩尾憲などJ1レベルの能力と経験を備える新戦力も加えた。ヴォルティスが昇格を勝ち取った2020年にキャプテンを務めていた岩尾も、以前に監督が四国で一緒だった選手の一人だ。
生まれ変わった浦和の姿は、土曜日に行われるフジフィルムスーパーカップでまず垣間見ることができるだろう。相手はリーグ2連覇中の王者、川崎フロンターレ。その川崎についてはこの後触れるが、試合自体はシーズンの幕開けとなる大一番ではあるとしても、その結果からあまり多くの結論を引き出せるわけではない。
レッズが本格的にタイトルを狙いにいけるのかどうか、確かなことが言えるのはまだ数ヶ月先のことだろう。
●ガンバ大阪の復活はあるか?
続いてアビスパ福岡だ。ロドリゲス監督の徳島とともに2年前に昇格を決めたチームだったが、復帰を果たしたトップリーグの舞台で大幅に期待を上回る戦いぶりを見せた。過去には昇格するたびに1年で再び降格していたが、そのジンクスを難なく覆し、最終的に8位で2021シーズンを終えた。
その昨年の主力級選手のうち、チームを去ったのはエミル・サロモンソンのみ。昨季のJ2得点王ルキアンや、浦和の田中達也といった力のある選手たちを新たに加えた。1部リーグ定着に向け、長谷部茂利監督の今年のチームは攻撃面でこれまで以上に脅威を発揮することになりそうだ。
2021年に攻撃面の脅威が明らかに不足していたチームと言えば、ガンバ大阪だった。シーズン最初の12試合でわずか3得点というスタートを切り、最終的にもリーグで4番目に少ない総得点33ゴールにとどまった。
だが片野坂知宏という新たな敏腕監督を迎えており、十分な時間とサポートさえ与えられれば、彼は近い将来ガンバを再び上位争いへと導くことができるかもしれない。齊藤未月や石毛秀樹といった選手たちも、ゴールへ向かうプレーに必要とされていた閃きをもたらし、昨年よりはるかに改善された戦いを見せてくれるはずだ。
一方、下位で奮闘することになりそうな2つのチームは、あまり期待が持てる状況ではない。
●苦戦が予想される2つのチームとは…
昨年降格間際に追い込まれた柏レイソルは、中心的存在だったクリスティアーノも含めて攻撃陣の主力が何人かチームを去った。ネルシーニョ監督のチームが2022年の下位3チーム争いから大きく抜け出せるとは考えにくい。
J2で2年間を過ごして大舞台に戻ってきたジュビロ磐田も、2部リーグでは経験豊富なメンバーで違いを生み出せていたが、トップリーグの厳しい戦いに挑むにはやや活力が不足しているように感じられる。前述したルキアンの得点力を失った影響も言うまでもない。
そして、ディフェンディングチャンピオンである。今季も優勝候補としてシーズン開幕を迎えるが、1年前の開幕時に等々力競技場で戦っていた何人かのスター選手を失っていることもまた去年と変わらない。
2021年開幕戦の横浜F・マリノス戦に出場した田中碧や旗手怜央、三笘薫はいずれも欧州の新天地へと旅立っていった。またチョン・ソンリョン(37歳)、家長昭博(35歳)、小林悠(34歳)といったキープレーヤーたちも1つずつ年齢を重ねている。
かつてサー・アレックス・ファーガソンは、栄光を持続させるためには成功したチームを強化しなければならないと繰り返し言い続けていた。
瀬古樹とチャナティップ・ソングラシンは素晴らしい補強ではあるが、川崎が新シーズンに向けて新たに獲得した即戦力はこの2人のみ。もちろん鬼木達監督はこれまでにも、高卒や大卒、ユース上がりの若手選手に力があるのなら意欲的に起用する姿勢をたびたび見せてきたが、国内とアジアのタイトルを手に入れるためにそれだけで十分であるかどうかはまだ分からない。
●川崎フロンターレの3連覇を止められるのは…
ヴィッセル神戸はどうだろうか。アンドレス・イニエスタが兵庫にやってきて以来の3年半で手に入れたタイトルは2019年天皇杯優勝のみではあるが、昨季は最終的に3位と良い形でシーズンを終えた。今年はいよいよ本格的にリーグタイトルに挑戦できそうな位置にいるように思える。
外国人の入国制限により、もちろん一時的ではあるとしても、元バルセロナの選手たちを加え続けるヴィッセルの補強方針にはストップがかけられた。それでも、昨季途中に大迫勇也と武藤嘉紀を加えたのに続いて、さらに槙野智章と扇原貴宏という非常に経験豊富な2人のJリーガーを加入させている。
これにより神戸は、近年でも最も芯の通ったチームとして新シーズンに臨もうとしていると感じられる。浦和やマリノスが再建途中であり、鹿島や名古屋グランパス、FC東京なども新体制であることを考えれば、Jリーグ史上わずか2例目となる3連覇を狙うフロンターレを最も止められそうな場所にいるのは間違いなくヴィッセルだと言えそうだ。



