G大阪加入の石毛秀樹、新天地で全盛期を迎えられるか…日本人5人だけのアジア最優秀若手賞から約10年

G大阪に新加入したMF石毛秀樹(27)が、スポーツ報知の取材に応じ、移籍の理由などを明かした。昨夏に期限付き移籍した岡山で、14試合6ゴールと結果を残し、今オフにオファーを受けて決断。下部組織を含め、19年間を過ごした清水から初の完全移籍で、新天地での挑戦を選んだ。

「昨年は前半戦、(清水で)試合に使ってもらえなかった。そんな中で、岡山でのプレーを、G大阪に評価してもらえた。今回はチャレンジする機会なのかなと思いましたし、自分の中ではJ1でやっていける、という自信もありました。もちろん、エスパルス愛は強くあります。離れることは寂しい。でもこの移籍は自分にとってはポジティブなもの。後々、移籍してよかったな、と思いたい。今はG大阪の選手としてやっていくことがすごく楽しみですし、それが自分の責任だと思っています」

10代から各年代の日本代表で、その名をはせてきた石毛。2011年にはU―17W杯で活躍し、アジア年間最優秀若手賞に選ばれた。同賞に選ばれた日本人は、小野伸二(98年)、前田遼一(00年)、大久保嘉人(03年)、そして堂安律(16年)と石毛の5人のみ。12年には史上最年少でナビスコ杯(現ルヴァン杯)のニューヒーロー賞を獲得し、13年にはマンチェスターCの練習に参加するなど注目も集めたが、その後は清水でシーズンを通じてポジションは奪えなかった。

その理由を、石毛は「力がなかったことが大前提」とした上で、冷静に振り返った。「高校生の時に、100点以上のデビューを飾らせてもらえたことはすごく嬉しかった。良かったと思いますし、選手である以上、試合に出続けたかった。それはいいことであり、悪いことでもあったかなと、今は思います」

本来は攻撃的MFの石毛だが、清水ではそのサッカーセンスとキックの正確性などを買われ、サイドバックなどでも起用されてきた。どのポジションでも試合に出たいという思いから、真摯に向き合ってきた。しかし本来のポジションでは、定位置獲得に苦しんだ。

「色々なポジションができることが、1つの強みでもあった。でも若いうちにスタメンじゃなくても、途中出場からでもアタッカーとしてチャンスをもらえていたら、色々な壁を感じられたかもしれない。今度はサイドバック、今度はボランチ、と言われても、試合に使ってもらえればもちろんうれしいんです。でもアタッカーとして、成長するための大事な時間を過ごすことができなかった。それは若いころに思い描いていた、例えば海外移籍する、日本代表に入るという目標に向けては、よくなかったことかなと。そうは言っても、自分にポジションを取る自分の力がなかったから。器用貧乏じゃないですけど、何か1つのことを突き詰められていれば、とは思うこともあります」

17年には出場機会を求めてJ2岡山に一度目の期限付き移籍を経験し、翌年復帰した清水で29試合に出場した。しかし19年を右ひざの大けがで棒に振ると、翌年も筋肉系のトラブルに苦しんだ。19年以降は2シーズン半でJ1出場はわずか8試合に留まり、昨夏に岡山へ2度目の期限付き移籍を決断。そこでは右MFでポジションをつかみ、14試合でキャリアハイとなる6ゴールを奪う活躍をみせた。その理由について、本人は「言葉でいうのはなかなか難しいんですけど…」と笑いながら、自身の中に生まれた変化を明かした。

「いろんなものを経験してきた部分があって、いい意味で力が抜けたと思います。カチカチにならない、普段の自分の状態というか。そこには怪我をしたことが大きいんじゃないかと思っていて。手を抜くと言うのとは違って、自分の限界値を理解できた。その範囲の中で、自分に今、何が1番必要なのか、という選択がちゃんとできるようになってきた。その結果、変に力が入らなくなった、という感覚が自分の中であります。怪我をして、体と向き合い、自分とも向き合う時間があったことが、つながっているんじゃないかと思います」。昨季奪った6点の内、4点がペナルティーエリア外からのゴール。月間ベストゴールにも選ばれた11月14日の相模原戦で決めたボレーシュートなど、相手のプレッシャーを受けても本来のキック精度を発揮したことが、結果に繋がっていた。

岡山で輝きを放った石毛を、片野坂新監督を迎えて新たなスタイルを構築しようとしているG大阪は求めた。大分時代、選手が連動しながら攻撃を構築した指揮官のスタイルを見てきた石毛は「サッカー自体がすごく楽しそうだし、自分に合いそうだなって思っています。(2列目の)シャドーのポジションがあるなら、そこでチャレンジしたい。しっかり勝ち取れるように頑張りたい」と話した。若いころに思い描いたキャリアとは、違ったサッカー人生を歩んでいるのかもしれない。それでも這い上がり、J1の舞台で戦う権利を再びつかんだ石毛。ここから全盛期を迎えるのに、27歳は決して遅すぎるわけではない。

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