遠藤保仁はなぜ動じないのか W杯最終予選の重圧すら楽しむ「平常心」の保ち方

数々の大一番を経験、41歳の名手は結果に「一喜一憂しない」

プロ24年目、日本代表歴代最多となる国際Aマッチ152試合出場を誇るMF遠藤保仁は、これまで数々の緊迫した状況でピッチに立ち、時に悔しさを味わいながらも数々の栄冠を手にしてきた。41歳の名手は、これまでどんな思いで重要な一戦に臨んできたのか。日本代表の一員として臨んだワールドカップ(W杯)アジア最終予選での経験について語った。

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今シーズン、ジュビロ磐田は、連敗が1度しかない。

J2リーグ開幕戦のFC琉球戦(0-1)と第2節のFC町田ゼルビア戦(1-3)だけだ。スタート直後の連敗は、これからという時だけにダメージは少なくないが、なんとか盛り返して首位を走りJ1昇格を決めた。遠藤保仁は、かつてガンバ大阪でJ2降格も経験し、勝てない状態でピッチに立ってプレーする苦しさを味わってきた。普段は何事にも動じない遠藤だが、チームが勝てない、内容が良くない時、どんな気持ちでプレーしていたのだろうか。

「僕は、基本的に1試合1試合で考えているので、良い結果も悪い結果もその時に受け入れてやっています。今、J2で戦っていますけど、ここでは勝って当たり前と言われているので、チームとして良いプレーができなかったり、勝たないといけない試合を落としたりすると、多少、気分が落ちることもあります。そういう時はあまり一喜一憂せず、良い時のイメージだけを持ってプレーすればいいと思っています」

クラブで連敗や内容が悪いと、選手のメンタルはどうしてもネガティブな方に転びがちだ。そこから這い上がっていくには、かなりのエネルギーを要するが、日本代表ではどうなのだろうか。

「練習試合は、内容重視もあるけど、公式戦の試合への気持ちはクラブと同じ。ただ、受けるプレッシャーがクラブと代表では違う。最終予選は勝って当たり前なので、サポーターの目も厳しいし、普通に勝てよというムードがスタンドから出ているので、プレッシャーは代表の方が圧倒的に大きい。ただ最終予選は厳しいけど、W杯本番は頑張ってくれと、少し優しい感じになりますね」

サポーターから煽られても「自分の力に変えてプレーしていた」

遠藤の言葉通り、W杯アジア最終予選を見る日本国内のムードは1997年フランスW杯最終予選の頃からかなり変わった。応援しつつもその内容や結果については、より厳しい視線を向けられるようになった。特にホームでは1-0で勝っていても、さらにゴールを狙えとばかりに煽られるケースもある。

「自分らの時もありましたけど、それは選手が気にしなければいいんですよ。自分は、ホームで試合をする時、そういうのも楽しんでいました。小さい時から代表で日の丸をつけてプレーするのが大きな目標だったし、お客さんがたくさんいればいるほど、自分のプレーを多くの人に見せられるチャンスになりますからね。何かやってやるという気持ちがあったし、こんな貴重な時間を楽しまないと、という気持ちもあったので、煽りとかも自分の力に変えてプレーしていました」

現在、カタールW杯アジア最終予選を戦う日本代表は、ホームで行われた初戦のオマーン戦(0-1)を落とし、アウェーでの第3戦サウジアラビア戦(0-1)にも敗れるなど、ピリッとしない戦いが続き、代表に対する視線がどんどん厳しくなってきている。キャプテンのDF吉田麻也は予選敗退したら代表を引退する等々、これまでの最終予選にはなかった選手の声が広がっている。

こうした状況下で遠藤は、何よりもW杯に行くことが重要だと語る。 「子供たちを含めて、みんなW杯は絶対に見ると思うし、W杯が近づけば日本を応援してくれると思うんです。でも、そこに日本代表がいないというのは寂しい。子供たちにサッカーの醍醐味を見せる機会を失ってしまうと、それこそサッカー人気が落ちてしまう」

苦境の中で、いかに平常心を保って戦えるのか――。遠藤のような心の余裕が持てれば、重圧のかかる最終予選でも動じることなく戦えるはずだ。

遠藤保仁

1980年1月28日生まれ、鹿児島県出身。3人兄弟の三男として幼少期からサッカーに熱中し、鹿児島実業高校卒業後の1998年に横浜フリューゲルス加入。1年目からJリーグで活躍すると、京都パープルサンガ(当時)を経て2001年にガンバ大阪に完全移籍した。司令塔として攻撃的スタイルの中核を担うと、J1優勝2回、2008年AFCチャンピオンズリーグ制覇などクラブ黄金期の確立に大きく貢献。日本代表でも長年にわたって活躍し、W杯に3度出場した。国際Aマッチ152試合出場(15得点)は歴代最多記録となっている。昨年10月にジュビロ磐田へ期限付き移籍、プロ24年目の今季もレギュラーの1人としてJ1昇格を果たしたチームを支えた。

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