【リーグカップ決勝・名勝負3選】タイトルマッチで壮絶な打ち合いが繰り広げられたのは奇跡的だ
これ以上ないエンタテインメント性に富む試合だった
今年で29回目を数える伝統のリーグカップ(現ルヴァンカップ、旧ナビスコカップ含む)。10月30日に行なわれる決勝戦では、名古屋グランパスとセレッソ大阪が相まみえる。
タイトルをかけた激闘必至の一戦で、どんなドラマが生まれるか。過去のファイナルでも、忘れがたい名勝負がある。本企画では、スポーツライターの浅田真樹氏に、過去28大会から思い出るに残る決勝戦を3つ選んでもらった。
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ルヴァンカップ決勝史上最高の名勝負。いくつか候補となる試合はあるのだろうが、最終的には迷うことなく、2019年第27回大会の川崎フロンターレ対コンサドーレ札幌を推す。
結果を先に言えば、3-3からのPK戦決着で川崎が勝利した。しかし、この試合が名勝負たるゆえんは、単に多くの得点が入った接戦だったから、というだけではない。
当時の川崎は、17年、18年と2連覇中だったJ1チャンピオン。対する札幌は、これが初の決勝進出。試合を前に、まずは両者の立場が王者と挑戦者とにはっきりと色分けされていたことが試合展開に意外な印象を与え、それを単なる接戦という以上にスリリングなものにした。
要するに、王者優位の下馬評に反して、挑戦者が驚異的な粘りを見せ、タイトル奪取まであと一歩に迫ったのである。過去のルヴァンカップ決勝で、両チーム合わせて6点以上入った試合は他にもあるが、リードするチームが三度も入れ替わり、さらには、そこから三度ともタイスコアに戻った例は他にない。
得てしてタイトルマッチは手堅く進み、ロースコアゲームになりがちだ。そんな常識に照らしてみれば、これほどの壮絶な打ち合いが決勝戦で繰り広げられたことは、奇跡的と言っても大げさではない。
最後までどちらが勝つか分からない接戦だったというだけでなく、両チームが多くのゴールを奪い合ったこと。そして、試合途中に退場者が出るというアクシデントも起きたこと。そうした要素すべてを含めて、これ以上ないエンタテインメント性に富む試合だった。
Jリーグチャンピオンシップや天皇杯など、他のタイトルマッチまで枠を広げても、これを超える名勝負はなかなかお目にかかれないだろう。
天国と地獄があっという間に入れ替わる非情さが印象的
また、勝負の怖さという意味で強く印象に残っている名勝負は、ルヴァンカップ決勝史上最大の逆転劇が起きた、2014年第22回大会のガンバ大阪対サンフレッチェ広島だ。試合は、広島が佐藤寿人の2ゴールで2-0とリード。前半にして大勢は決したかに思われた。
ところが、G大阪は2点目を失った直後に1点を返すと、後半に2点を奪って逆転勝ち。3-2で勝利し、7年ぶり2回目の優勝を手にしている。天国と地獄があっという間に入れ替わる非情さが印象的な名勝負である。
そしてもうひとつは、1992年に行なわれた第1回大会決勝。ヴェルディ川崎(現・東京ヴェルディ)対清水エスパルスである。
日本に初めて誕生したプロサッカーリーグへの期待とともに、5万6千人もの大観衆が詰めかけた旧・国立競技場が勝負の舞台。対戦したのは、当時絶大な人気を誇ったスター軍団のヴェルディと、サッカー王国・静岡に新たに誕生したエスパルス。しかも、スコアレスで進んだ息詰まる熱戦に終止符を打ったのは、サッカー界にとどまらず、日本スポーツ界のスーパースターである三浦知良の決勝ゴールだったのである。
もはやこれ以上は詰め込むことができないほど、盛り上がる要素がぎっしりと詰まっていた。まさに“開幕前夜”を彩るにふさわしい名勝負だった。



