G大阪アカデミーコーチ・大黒将志氏 ストライカー育成に自信あり 指導の極意明かした

今季からG大阪アカデミーのストライカーコーチに就任した大黒将志氏(41)がこのほどスポニチの独占インタビューに応じた。日本サッカー界には少ないと言われる得点の取れるストライカーも「育成できる」と断言。自身の経験を交えながら、ストライカーとしての極意の一端を明かした。

ストライカーは育成できる

元オランダ代表FWファンペルシーがフェイエノールトのストライカーコーチに就任するなど海外では浸透しつつあるが、日本ではまだなじみの薄い専門職だ。元来、点取り屋は育てられないと言われてきたが、大黒コーチは「育てられます。実際に子どもたちはうまくなっている」と否定する。2月に就任し、忙しい時には朝と昼にユース、夕方からはジュニアユースを指導。週末はアカデミーの試合を“ハシゴ”することもある。「やっぱりね、試合で得点を取るのが一番大事。そのためにはどうすれば良いか。練習からも得点を決めること」と準備段階の重要性を口にする。

良いストライカーの条件

プロ22年間で14クラブを渡り歩き、通算222得点を誇る。「正直、得点を取ることしか考えていなかった」。日本代表でも同様だが、FWにも前線からの守備やハードワークなど近年は献身性が求められる。だが「いくら守備で頑張っても1点もらえるわけじゃない。僕から見れば得点を取れない選手は、どっちかいえば守備で貢献しようと逃げがち。そうじゃない。得点を取りながらチームのためになる献身性を出す」とFWには最優先で得点を奪うことを求める。だから「パスかシュートで迷ったらシュート」と教えている。

現役時代、大事にしていたのは観察力、確率論、関係性の3点だ。練習中から味方の特徴を把握。試合では相手の裏を突き、得点が取れそうな位置にいかに入るか。そして味方への要求だ。例えば05年2月9日のドイツW杯アジア最終予選・北朝鮮戦。引き分け目前の試合終了間際に福西崇史のパスから反転シュートを放ち、劇的な決勝点を決めた。

「絶対にフク(福西)さんからパスが来ると確信していた。アウトサイドのパスだったけど、練習からめちゃうまいのは見ていたから。だからゴール方向に体を半分向けてね。あれ、フクさんの方に体を全て向けていたら、シュートするまでに2タッチは必要だった」

味方の特徴を把握して次のプレーを予測し、自身はゴールを奪いやすい位置と体勢をつくっておく。練習からも“ここに欲しい”と伝えていた。感覚や嗅覚ではなく、ロジックに基づいた一発だった。

現代っ子の課題と未来への願い

アカデミーの子どもたちには、そうした大黒エキスを惜しみなく注入している。「今の子はなかなかラッキーですよね」と笑う一方で、気になることもある。「技術的に低くなっている感じがする」。フィジカル重視になっていると捉え「ボールコントロールが、いいかげんというか。例えば、東京五輪のスペイン戦。スコアは僅差だったけど、ボールを止める、蹴る面でやられた。止めるにしてもいろいろあるので、そこにこだわっていきたい」と基礎技術の向上こそが“点取り屋”への近道だと強調した。そして願うのは「“大黒2世”やなくて、僕なんかよりも得点を取りまくるオリジナル」の出現だ。

◇大黒 将志(おおぐろ・まさし)1980年(昭55)5月4日生まれ、大阪府豊中市出身の41歳。G大阪ユースから99年にトップ昇格。同年3月の千葉戦でプロデビューし、00年3月の川崎戦でJ1初得点を記録した。05年にA代表デビュー。A代表通算22試合5得点。20年6月に現役引退するまで国内外のべ14チームを渡り歩いた。J1通算204試合69得点、J2通算260試合108得点など公式戦598試合222得点。

<W杯アジア最終予選・日本2―1北朝鮮(05年2月9日)>ドイツW杯アジア最終予選の初戦で、1―1の後半34分にFW玉田圭司に代わって出場。引き分け目前だったが、アディショナルタイムに相手GKがはじいたボールをMF福西崇史が拾い、そのアウトサイドパスをエリア内で合わせて決勝点を奪った=写真=。TV中継の瞬間最高視聴率が57.7%(関東地区)だったこともあり、“大黒さま”の名前が一気に全国へ知れ渡った。

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