どうなる?混沌Jリーグ残留争い…残り6試合で4チーム降格…ガンバ、清水、徳島、湘南、大分、横浜FC、仙台らがサバイバル
残りわずか6試合となった今シーズンの明治安田生命J1リーグで、優勝争いと来シーズンのACL出場権獲得争い以上に残留争いが熾烈を極めつつある。
20チームで争われている今シーズンは、17位以下の4チームが無条件でJ2へ降格する。現時点で残留圏の16位・徳島ヴォルティスと、降格圏の17位・湘南ベルマーレとの勝ち点差はわずか1ポイント。さらに1ポイント差で18位に大分トリニータが、同じく2ポイント差で19位に横浜FCが食らいつく形で続いている。
今週末の第33節では23日に勝ち点が2ポイント差の徳島と大分、3ポイント差の湘南と横浜FCが「シックス・ポインター」で激突。調子が上向かない14位・ガンバ大阪、24日に首位・川崎フロンターレと対戦する15位・清水エスパルスを含めて、結果次第では勝ち点6ポイント差以内に14位以下の6チームがひしめき合う未曾有の大混戦が生じる。
週末に「シックス・ポインター」直接対決
Jリーグの競技スケジュールを自動的に作成する、「日程くん」の通称で知られる専用アプリでも、ここまでのドラマを演出できるとは考えていなかったはずだ。
勝利したチームが勝ち点3ポイントを手にするだけでなく、競り合う相手チームから勝ち点3ポイントを奪う直接対決。勝ち点6ポイント分の価値がある「シックス・ポインター」が、J1残留を目指すチームの間で立て続けに組まれているからだ。
先週末の第32節では13位・柏レイソルと15位・清水、16位・徳島と最下位・横浜FC、18位・大分と19位・ベガルタ仙台が激突。柏、横浜FC、大分が勝利し、横浜FCは最下位を脱出。入れ替わる形で仙台が20位に転落した。
今週末の第33節でも、激戦必至の「シックス・ポインター」が組まれている。
徳島は大分を、湘南は横浜FCをともにホームに迎える。徳島が勝てば差は5ポイント、湘南が勝てば差が6ポイントに開き、逆ならば大分が徳島を逆転し、横浜FCが湘南に並ぶ。天国と地獄にも例えられる残留と降格に、極めて大きな影響を与える直接対決が待つ。
しかも大分、横浜FCと順位が下のチームがここにきて調子を上げている。
仙台との「シックス・ポインター」で2-0と快勝した大分は、代表ウイークによる中断前に行われたセレッソ大阪戦に続いて今シーズン初の連勝をマーク。9月以降の5試合を振り返っても、3勝1分け1敗と勝ち点を大きく積み重ねている。
結果を残し始めた要因は5試合でわずか1失点の堅守にある。8月の5試合で15失点を喫した大分の片野坂知宏監督は、J3を戦った2016シーズンから時間をかけて築き上げてきた、最終ラインから丁寧にパスを繋ぐスタイルを封印した。
相手ボール時には3バックに左右のウイングバックも下げた、5バックも辞さない守備重視の戦い方を選択。失点しない展開を徹底した上で、ロングボールやカウンターで得点機を見出す。必然的にシュート数は少なくなり、スコアレスドローでサガン鳥栖から勝ち点1ポイントをもぎ取った第29節では1本に終わっている。
大分の総得点「23」はリーグワーストに甘んじる。それでも理想より現実を優先させ、一丸になったチームの現在地は、片野坂監督が仙台戦後に残した言葉に凝縮される。
「内容ももちろん大事かもしれないが、私たちがいまほしいのは勝ち点3なので」
対する徳島の総得点もワースト4位の「28」にとどまっている。どちらが先制点を奪うかがカギを握るなかで、2試合連続で2ゴールをあげているFW垣田裕暉は、ゴールを奪い合った末に3-5で敗れた前節の横浜FC戦後に努めて前を向いた。
「下を向いても、結果を気にしても仕方がない。次の試合はもう始まっているので、いい準備をすることだけに集中したい」
その横浜FCは連勝を「2」に伸ばし、同時に徳島の連勝を「2」で止めた。
ただ、最下位を脱出したとはいえ、リーグワーストの総失点「69」を献上してきた、特に最終ラインの脆さは改善されていない。現時点でも8試合連続で失点中だが、夏場の移籍市場で加入した新外国人選手たちがチームを劇的に変えつつある。
最後尾のゴールマウスには東京五輪に出場したU-24ドイツ代表のゴールキーパー、身長188cm体重89kgのスベンド・ブローダーセンが定着。最前線では鹿島アントラーズも獲得に乗り出していると母国ブラジルで報じられた、24歳のFWサウロ・ミネイロが直近の3試合で4ゴールをあげて、救世主的な存在感を放ち始めた。
「打点が高いというか、何か不思議なタイプで。跳ぶこともあれば、途中でやめるところもある気分屋でもあるんですけど」
徳島戦でプロ初ゴールとなる決勝点を決めたルーキー、DF高木友也を思わず苦笑させたミネイロだが、身長184cm体重85kgの威風堂々とした身体に搭載された決定力は相手を畏怖させる。新天地に慣れるにつれて高さだけでなく、相手の最終ラインの裏に抜け出すスピードも融合させながら、さまざまなチャンスを横浜FCにもたらすだろう。
徳島戦ではミネイロの2ゴールなどで前半を3-1で折り返しながら、後半に垣田の連続ゴールで一時は同点とされた。その後に2ゴールを奪い返し、もぎ取った勝利に手応えをつかみつつも、MF松尾佑介は失点禍を止めたいと前を見すえる。
「チーム全体として、もう少し巧みに試合をコントロールできるようにならないと。何点取っても、相手に『同点に追いつける』と思われている状況なので」
対する湘南は、残留圏の15位で踏ん張っていた8月31日に浮嶋敏前監督が電撃辞任。山口智コーチが新監督に就任した9月1日以降は、天皇杯を含めた公式戦で2分け4敗と未勝利が続き、なおかつ複数ゴールを決めた試合がひとつもない。
川崎との第30節、鳥栖との前節でともに先制点を奪いながら前者は逆転負けを喫し、後者では追いつかれてドローに終わった。残留争いから抜け出すためのポイントを、鳥栖戦で今シーズン4得点目を決めたFW町野修斗は自戒の念を込めてこう語る。
「2点、3点と取らないといけない。鳥栖戦はともかく、その前の試合ではチャンスもけっこう増えてきていたので、最後はフォワード陣のシュートだけだと思っている」
22日に“金J”が組まれている今節は、清水との「シックス・ポインター」を制した前節で勝ち点を「37」に伸ばし、やや抜け出した感のある13位・柏が敵地で、来シーズンのACL出場権を獲得できる3位を目指す5位・浦和と対峙する。
17位・湘南との勝ち点差は、残り6試合で9ポイントに開いた。しかし、浦和に加えて4位・名古屋グランパスや、残留を決めて意気揚がる8位・アビスパ福岡を今後の対戦カードに残す日程を見れば、柏もまだまだ安堵できる状況にはない。
一夜明けた23日には前述した徳島対大分、湘南対横浜FCに加えて、勝ち点「34」で14位に低迷するガンバがホームで鳥栖と対戦する。直近の8試合で失点が「17」を数え、1勝2分け5敗と一気に黒星がかさんだ泥沼から抜け出せなければ、12月4日の最終節まで続く今後の戦いで、かなりの高確率で残留争いに巻き込まれていく。
さらに24日には開幕から一度も連勝をマークできず、不安定な戦いを続ける15位・清水が、首位を独走する川崎と敵地で対戦する。現在の勝ち点は「32」で、16位・徳島とはわずか3ポイント差。6連勝を継続中で、連覇へ向けて加速する王者の軍門に降るようならば、下位集団から受けるプレッシャーが一気に増してくる。
新型コロナウイルス禍における特例として、昨シーズンはカテゴリー間の降格が撤廃された。今シーズンのJ1は従来の18チームに、昇格組の徳島と福岡を加えた20チームで争われ、17位以下の4チームが問答無用でJ2へ降格する。
直近の16試合でわずか1勝にあえぎ、大分との大一番でもシュート数わずか1本で零敗し、勝ち点「23」の最下位に転落した仙台がやや取り残された感がある。対照的に16位までの残留圏でフィニッシュするための戦いはまだまだ予断を許さない。
結果次第で勝ち点「34」から「28」までの6ポイント以内にガンバ、清水、大分、徳島、湘南、横浜FCの6チームがひしめき合い、柏も巻き込まれかねない未曾有の大混戦が生じる可能性も秘めながら、最終コーナーを回ったJ1戦線は運命の週末を迎える。